「スクワイア家の記憶 -ある英国人技術者の遺品から-」

特集展示

スクワイア家の記憶

開催概要

開催期間

2024年7月23日(火)~ 10月6日(日)

会場

国立歴史民俗博物館 第3展示室 特集展示室

料金

一般600円(350円)、大学生250円(200円)、高校生以下無料
※( )は20名以上の団体料金です。
※総合展示もあわせてご覧になれます。
※障がい者手帳等保持者は手帳等提示により、介助者と共に入館無料です。
※高校生及び大学生の方は、学生証等を提示してください。
※博物館の半券の提示で、当日に限りくらしの植物苑にご入場(16:00まで)できます。 また、植物苑の半券の提示で、当日に限り博物館の入館料が割引になります。

開館時間

~9月  9:30~17:00(入館は16:30まで)
10月~ 9:30~16:30(入館は16:00まで)

休館日

月曜日(月曜日が休日にあたる場合は開館し、翌日休館 ※8月13日は開館)、
8月6日(火)、9月3日(火)、10月1日(火)

主催

ダラム大学東洋博物館 Oriental Museum of Durham University
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館

みどころ

  • 森山國蔵写真館で撮られたスクワイア家の人々の写真を通し、森山家との交流をみる
  • スクワイア夫妻が娘のために日本で購入した、英語で書かれた昔話などの絵本(縮緬本)や楊洲周延の錦絵画帖『真美人』などの豪華な錦絵揃物を展示

趣旨

明治31年(1898)、イギリス人技術者ジョージ・スクワイア(1868-1930)が日本に招へいされました。日本の近代的製紙業が急速に発展し各地に工場が進出していた時代、ジョージは九州の小倉で操業していた千寿製紙の工場で工場管理一切を任され、小倉と東京の本社間を船で往復しながら、職工の訓練から給与支払いまで細かく目を配り、工場の運営に当たりました。

その後、リディア夫人と二人の幼い娘が合流しました。小倉で暮らしたおよそ3年間、リディア夫人は自宅で娘のマージョリーとドロシーを教育するかたわら、近隣の人たちに英語を教えるなど交流を深めます。

スクワイア夫妻は、小倉の森山國蔵写真館で定期的に姉妹の写真を撮りました。森山家の次男為蔵はリディア夫人から英語を学ぶなど両家は親しく交流し、それはスクワイア家がイギリスに帰国した後も長く続きました。

スクワイア家の日本時代の思い出の品は、1980年前後に姉妹がなくなった後、イギリスのダラム大学に寄贈されました。今回の展示では、20世紀初頭に日本で暮らしたイギリス人技術者一家の遺品を通して、彼らの日本での暮らしを垣間見ます。

なお、この特集展示は当館と調査研究に関する協力の覚書を結んでいるダラム大学との共同主催事業です。

ジョージ・スクワイア肖像写真

ジョージ・スクワイア肖像写真(『小倉製紙工場沿革概要』、大正13年(1924)より転載)

主な展示資料

  • スクワイア家の写真類
  • 千寿製紙からジョージ・スクワイアへの感謝状
  • 森山為蔵からスクワイア家への絵葉書類
  • 日本のおとぎ話(英訳本)の縮緬本
  • 子供用着物
  • 楊洲周延 錦絵画帖『真美人』
  • 宮川春汀 錦絵画帖『有喜世之華』

など 約 40 点(すべてダラム大学東洋博物館蔵)
ただし、会期中、展示替えを行います。

千寿製紙工場全景写真

1) 千寿製紙工場全景写真

明治時代 ダラム大学東洋博物館蔵

明治21年に東京に設立された製紙会社。中国や朝鮮への輸出や原材料調達の利便性から現在の小倉の地に工場を建設。イギリスから抄紙機を輸入して明治24年より操業を開始した。

リディア夫人、娘たちと森山為蔵の写真

2) リディア夫人、娘たちと森山為蔵の写真

ダラム大学東洋博物館蔵

リディア夫人、姉妹と一緒に写るのは、森山國蔵写真館の次男の為蔵。スクワイア家の人たちと特に親しい交わりがあった。森山國蔵写真館で撮影されたもの。

マージョリー、ドロシーと森山家の男の子の写真

3) マージョリー、ドロシーと森山家の男の子の写真

森山國蔵写真館で1902頃撮影 ダラム大学東洋博物館蔵

着物姿のドロシーとマージョリー。森山國蔵写真館で撮影。真ん中の男の子は親しい交流があった森山家の長男で、後に写真館を継いだ菊三郎の息子。

感謝状

4) 感謝状

明治37年(1904) ダラム大学東洋博物館蔵

職員の技術指導、製紙工場の運営を軌道に乗せ、6年の契約期間を満了したスクワイア氏に、千寿製紙株式会社が贈った感謝状。英語版と日本語版がそれぞれスクワイア家に残されていた。

子供用振袖

5) 子供用振袖

明治時代 ダラム大学東洋博物館蔵

子供用の着物で、スクワイア家の娘たちが着用していた。帰国後、仕立て直されている。

楊洲周延 錦絵画帖『真美人』

6) 楊洲周延 錦絵画帖『真美人』

明治30年(1897) ダラム大学東洋博物館蔵

浮世絵師楊洲周延(1838-1912)の代表作である美人画シリーズの画帖仕立て。ジョージが上京した折に娘たちのために購入したのだろう。摺りの良い上等品である。

宮川春汀 錦絵画帖『有喜世之華』

7) 宮川春汀 錦絵画帖『有喜世之華』

明治30~31年(1897~98) ダラム大学東洋博物館蔵

宮川春汀(1873-1914)は美人画や子ども絵などの錦絵、新聞や雑誌の挿絵に活躍した浮世絵師。『有喜世之華』は彼の代表作。明治後期の女性風俗を描いたもので、とくに少女たちの日常風景を描いたものが多く含まれる。

林弘之 縮緬本『かちかちやま』

8) 林弘之 縮緬本『かちかちやま』

明治33年(1900) ダラム大学東洋博物館蔵

1880年代の日本では、昔話の英語版がシリーズで発刊された。狙いは日本人が英語を学ぶためであったが、外国人訪問者の間で人気となった。スクワイア夫妻は、娘のために何冊も購入した。

展示代表

大久保 純一

OKUBO Jun'ichi

国立歴史民俗博物館 情報資料研究系 教授

専門分野:日本近世絵画史
著書、論文、原稿執筆、講演多数。主な著書に、『アートセレクション 千変万化に描く北斎の冨岳三十六景』(小学館、2005年)、『カラー版 北斎』(岩波新書、2012年)、などがある。