『水滸伝ブームの広がり』

特集展示

水滸伝ブームの広がりの画像

開催概要

開催期間

2022年8月3日(水)~ 2022年9月4日(日)

会場

国立歴史民俗博物館 第3展示室 特集展示室

料金

一般600円/大学生250円
高校生以下無料
※総合展示もあわせてご覧になれます。
※障がい者手帳等保持者は手帳等の提示により、介助者と共に入館無料です。
※高校生及び大学生の方は、学生証等を提示してください。
※博物館の半券の提示で、当日に限りくらしの植物苑にご入場できます。また、植物苑の半券の提示で、当日に限り博物館の入館料が割引になります。

開館時間

9:30~17:00(入館は16:30まで)

休館日

月曜日(月曜日が休日の場合は開館し、翌日休館)
※8月15日(月)は開館

主催

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館

趣旨

中国の小説『水滸伝』は江戸初期に伝来し、漢学者たちの間で関心を持たれていましたが、岡島冠山(おかじまかんざん)による翻訳『通俗忠義水滸伝』(宝暦7~寛政2年・1757~90)の刊行や、より読みやすい挿絵入りの読本や草双紙化したものが出版されるなどして、次第に読者層を拡大していきます。舞台設定を日本に変えた山東京伝(さんとうきょうでん)の『忠臣水滸伝』、曲亭馬琴(きょくていばきん)の『傾城水滸伝』や『南総里見八犬伝』なども生み出されました。こうした大衆的レベルでの水滸伝ブームは浮世絵の世界にも波及し、文政(1818~30)末期に出た歌川国芳の錦絵シリーズ「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)(つうぞくすいこでんごうけつひゃくはちにんのひとり)」は武者絵というジャンルの流行に大きな役割を果たします。

また『水滸伝』は、そのほかにも狂歌や見世物などさまざまな分野で題材とされただけでなく、そのイメージは、江戸末期の侠客や博徒を描く講談や浮世絵に重ねられていきます。このように『水滸伝』は江戸末期の大衆文化をかたちづくる豊かな土壌となったのです。

本展では、冠山訳『通俗忠義水滸伝』の他、『水滸伝』を扱った葛飾北斎ら浮世絵師たちの版本、あるいは『水滸伝』の豪傑たちを描く国芳らの錦絵、幕末の侠客物(きょうかくもの)への波及作などを展示して、江戸時代末期の大衆文化における水滸伝ブームの広がりを垣間見ていきます。

歌川国芳「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)」より 「入雲龍公孫勝」

歌川国芳「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)」より
「入雲龍公孫勝」

文政(1818~30)末~天保(1830~44)初期 本館蔵

本展のみどころ

  • 歌川国芳の出世作で、浮世絵の武者絵の有名シリーズ「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)(つうぞくすいこでんごうけつひゃくはちにんのひとり)」から、出来栄えの優れた作を展示します。力強く、躍動感あふれる描写をお楽しみください。

水滸伝ブームの広がり2

主な展示資料

  • 岡島冠山訳 『通俗忠義水滸伝』
  • 鳥山石燕 『水滸画潜覧』
  • 葛飾北斎 『忠義水滸伝画本』
  • 歌川国芳 「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)」
  • 歌川国芳 「豪傑水滸伝双六」
  • 一恵斎芳幾 「松本喜三郎の生人形」
  • 三代歌川豊国 「当世好男子伝(とうせいすいこでん)」

など約30点(すべて本館蔵)

展示資料一覧はこちら

「梁山泊賊寨」

葛飾北斎『忠義水滸伝画本』より
「梁山泊賊寨」

文政12年(1829) 本館蔵

「浪裡白跳張順」他

1. 葛飾北斎『忠義水滸伝画本』より「浪裡白跳張順」他

文政12年(1829) 国立歴史民俗博物館蔵

『忠義水滸伝画本』は、『水滸伝』の豪傑たちの姿を描いた絵本で、北斎らしい緻密で緊張感あふれる描写が特徴です。「梁山泊賊寨」(上図)は、冒頭近く、豪傑たちが立て籠もる梁山泊を遠望した光景です。この後から「浪裡白跳張順」(左図)等、個々の豪傑たちの雄姿が描き出されていきます。

「花和尚魯知深初名魯達」

2. 歌川国芳「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)」より「花和尚魯知深初名魯達」

文政10年(1827)頃 国立歴史民俗博物館蔵

冤罪の林冲を護送する役人を、魯智深は鉄禅杖(てつぜんじょう)で松の木を叩き折って威嚇する場面です。

「浪裡白跳張順」

3. 歌川国芳「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)」より「浪裡白跳張順」

文政(1818~30)末~天保(1830~44)初期 
国立歴史民俗博物館蔵

水練の達人である張順が敵の籠城する城の水門を破って侵入する場面。原作にはない場面で、国芳の創作といわれています。

一恵斎芳幾 松本喜三郎の生人形

4. 一恵斎芳幾 松本喜三郎の生人形

安政3年(1856) 国立歴史民俗博物館蔵

浅草奥山で松本喜三郎が興行した生人形の見世物の全貌が描かれています。

中央上右に『水滸伝』から、大刀関勝(だいとうかんしょう)、敵将の何濤(かとう)を水中に沈める阮小五、一丈青扈三娘(いちじょうせいこさんじょう)が見いだせます。

展示代表

No Image画像

大久保 純一

OKUBO Junichi

教授
研究部情報資料研究系
文学博士(東京大学)(2006年取得)

専門分野:日本近世絵画史
主要研究課題:浮世絵、江戸後期の風景表現
所属学会:美術史学会、国際浮世絵学会

学歴:東京大学文学部第二類(史学)美術史学専修課程(1982年卒業)
東京大学大学院人文科学研究科美術史学専攻修士課程 (1984年修了)


著書、論文、原稿執筆、講演多数。主な著書に、『アートセレクション 千変万化に描く北斎の冨岳三十六景』(小学館、2005年)、『カラー版 北斎』(岩波新書、2012年)、などがある。