このページの目次
「庫外正倉院文書と盤龍鏡-井上辰雄氏蒐集資料展」(第1展示室)「日本の食の風景-「そとたべ」の伝統-」(第4展示室)

特集展示(第1展示室)
「庫外正倉院文書(こがいしょうそういんもんじょ)と盤龍鏡(ばんりゅうきょう)-井上辰雄氏蒐集資料展」

開催概要

開催期間 2020年10月13日(火)~11月15日(日)
※開催期間が当初の4月21日(火)~5月17日(日)から変更となりました。
会場 国立歴史民俗博物館 総合展示 第1展示室 特集展示室
料金

一般600(350)円/大学生250(200)円
高校生以下無料

(  )内は20名以上の団体です。
※総合展示もあわせてご覧になれます。
※障がい者手帳等保持者は手帳提示により、介護者と共に入館無料です。
※高校生及び大学生の方は、学生証等を提示してください。
※博物館の半券の提示で、当日に限りくらしの植物苑にご入場できます。 また、植物苑の半券の提示で、当日に限り博物館の入館料が割引になります。
※料金が変更になる場合があります。

開館時間 9時30分~16時30分(入館は16時00分まで)
休館日 毎週月曜日(休日の場合は開館し、翌日休館)
主催 国立歴史民俗博物館

  

みどころ

●ながらく個人蔵であった資料を公開。庫外正倉院文書(こがいしょうそういんもんじょ)は35年ぶり、盤龍鏡(ばんりゅうきょう)は初公開!

●庫外正倉院文書(もともと奈良の正倉院に伝来した正倉院文書の断簡)「葦浦継手手実(あしうらのつぎてしゅじつ)」(「手実」は自己申告書のこと)はこれまでに1度、1か月間公開されたことがあるだけ。今回、35年ぶり2度目の公開となります。隣に貼り継がれていたはずの「答他虫麻呂手実(とうたのむしまろしゅじつ)」(当館蔵)とも35年ぶりの再会です。

●盤龍鏡は、向かい合う龍と虎を主な装飾紋様とする中国の鏡です。「宋氏」と作者の銘を入れた鏡で、後漢時代の中頃にあたる、紀元100年前後ごろに作られました。ものを写す鏡面の側は、絹織物らしき繊維に覆われており、日本の古墳に副葬された可能性が考えられます。日中の双方の視点で注目できる資料です

趣旨


故・井上辰雄氏
日本古代史の研究者であった井上辰雄氏の御遺族より、2019年に寄贈を受けた資料を公開します。

井上辰雄氏は1928年(昭和3)10月生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院満期退学の後、川村女子短期大学を経て、1960年(昭和35)4月に熊本大学法文学部に助教授として赴任(のち教授)。熊本では14年間にわたり勤務され、在任中には熊本県文化財保護専門委員などを歴任されています。1975年(昭和50)6月に筑波大学に移られ、1992年(平成4)3月に停年退官、名誉教授の称号を受けました。同年より2004年(平成17)3月まで城西国際大学教授、招聘教授として勤務。2015年(平成27)11月逝去されました。『正税帳(しょうぜいちょう)の研究』『嵯峨天皇と文人官僚』『平安初期の文人官僚』『平安儒者の家』(以上、塙書房)、『火の国』『隼人と大和政権』(以上、学生社)、『古代王権と宗教的部民』(柏書房)『茶道をめぐる歴史散歩』『在原業平』(以上、遊子館)、『慶滋保胤』(井上辰雄先生を偲ぶ会)など多数の研究書、啓蒙書を残されています。

井上氏は茶道の造詣も深く、書跡など数多く収集されておられましたが、逝去後、御遺族より古代史資料として特に貴重な2点を当館に御寄贈いただきました。

1点は庫外正倉院文書(こがいしょうそういんもんじょ)です。正倉院文書は奈良の東大寺正倉院に伝来していたおよそ1300年前の古文書ですが、江戸時代末にその存在が知られ、整理が進められるようになりました。その過程でごく一部が民間に流出しました。その数は数え方にもよりますが、80点ほどが知られています(正倉院文書は全体で1万点以上)。井上氏はこの庫外正倉院文書を熊本にて入手されたとのことです。

内容は、葦浦継手(あしうらのつぎて)という経師(きょうし)(写経を仕事とする人)が、宝亀3年(772)9月に自分が書写した写経の分量を報告した手実(業務報告書)です。給料は1紙単位の出来高払いであったため、このような報告書を提出する必要がありました。写経所では他の経師の業務報告書も貼り継いで帳簿にまとめた上で、チェックして布施(給料)を支給しました。当館所蔵の別の庫外正倉院文書である「答他虫麻呂手実(とうたのむしまろしゅじつ)」も同月に提出された別の経師の業務報告書であり、もとは「葦浦継手手実(あしうらのつぎてしゅじつ)」と同じ帳簿に貼り継がれていました。この2つの文書は、1985年に当館で開催された庫外正倉院文書を集めた企画展示「正倉院文書展」で出会って以来、35年ぶりの再会ということになります。両文書がもともと連なっていた正倉院文書はまだ複製未制作であるため、他の帳簿の事例を参考として展示します。

葦浦継手はこの他にも正倉院文書に登場しています。本展示では、宝亀5年(774)3月の借金申請書を展示します。継手は月利15%で850文を借り、1か月で1020文を返済しています。

もう1点の盤龍鏡(ばんりゅうきょう)は、中国の後漢時代につくられた、紋様・文字が鮮明な非常に良質の鏡です。古代史・文字の泰斗は手にした一面の鏡に、どのような視線を投げかけていたのでしょうか。資料をめぐる現代的な視点を交え、それに思いをはせてみたいと思います。

井上辰雄氏は正倉院文書のなかに含まれる正税帳(しょうぜいちょう)(諸国における地方財源である正税の年度ごとの収支決算報告書。中央に提出され、廃棄された後、写経所で再利用されたため、正倉院文書として残りました)の研究でも広く知られています(『正税帳の研究』)。そこで井上氏の研究にちなみ、諸国正税帳のなかから天平8年(736)度薩摩国正税帳を展示します。薩摩国は13郡よりなっていましたが、そのうち隼人郡が11を占めていました。蓆(むしろ)が庸(よう)として貢納されていることも、薩摩国の特徴です。

展示資料

・葦浦継手手実 1幅 井上辰雄氏旧蔵の庫外正倉院文書。
・盤龍鏡 1面 井上辰雄氏旧蔵の後漢時代の鏡。
・答他虫麻呂手実 1通 2002年収蔵の庫外正倉院文書。
・正倉院古文書正集第43巻複製 1巻 薩摩国正税帳。
・正倉院古文書続修第21巻複製 1巻 葦浦継手月借銭解(葦浦継手の借金申請書)。
・正倉院古文書続々修第1帙第4巻複製 1巻 手実帳・手実が抜かれた事例。
・井上辰雄『正税帳の研究』塙書房 1冊 井上辰雄氏による正倉院文書を利用した研究。
・広峯15号墳出土景初四年銘盤龍鏡複製 1面 後漢時代の鏡を模倣した魏時代の鏡。

計 8点(すべて当館蔵)

 

【展示代表】

小倉 慈司 おぐら しげじ (国立歴史民俗博物館 歴史研究系 准教授)

専門は日本古代史および史料学。特に、古代神祇制度の研究、禁裏・公家文庫の研究をしている。宮内庁書陵部編修課主任研究官としての経験を経て、2010年より現職。

 

1) 葦浦継手手実(庫外正倉院文書) 国立歴史民俗博物館蔵

経師である葦浦継手が写経を6巻84紙分おこなったことを知らせる業務報告書。出来高払いであったため、このような業務報告書を提出する必要がありました。もともと他の経師の業務報告書と貼り継がれて東大寺正倉院に伝来していましたが、幕末頃に抜き取られて民間に伝わりました。

2) 盤龍鏡(後漢時代) 国立歴史民俗博物館蔵
向かい合う龍と虎を主な装飾紋様とする中国の鏡です。「宋氏」と作者の銘を入れた鏡で、紀元100年前後ごろに作られました。鏡面の側は絹織物らしき繊維に覆われており、日本の古墳に副葬された可能性が考えられます。

 

特集展示(第4展示室)
「日本の食の風景-「そとたべ」の伝統-」

開催概要

開催期間 2020年9月15日(火)~11月29日(日)
会場 国立歴史民俗博物館 第4展示室 特集展示室
料金 一般600(350)円/大学生250(200)円
高校生以下無料
(  )内は20名以上の団体

※総合展示もあわせてご覧になれます。
※障がい者手帳等保持者は手帳提示により、介助者と共に入館無料です。
※高校生及び大学生の方は、学生証を提示してください。
※博物館の半券の提示で、当日に限りくらしの植物苑にご入場できます。 また、植物苑の半券の提示で、当日に限り博物館の入館料が割引になります。
※料金が変更になる場合があります。

開館時間

~9月    9:30 ~ 17:00(最終入館は16:30まで)
10月~  9:30 ~ 16:30(最終入館は16:00まで)

休館日 毎週月曜日(休日の場合は開館し、翌日休館)
主催 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館

趣旨

日本の現在の食文化を形づくってきている歴史的な大きな契機としては、中世の禅宗寺院の料理からの影響が大きいことが知られています。貴族、武家、有力商人が集住した室町時代の京都では独自の文化が醸成され、そうした中で、武家の饗応料理として発達した本膳料理の形式がととのえられてきました。

その一方で、江戸時代の町方では一般の町人たちは蕎麦や寿司、天ぷら、うなぎなどの屋台の店を愛用していたことも知られています。また、旅先や寺社参詣では茶店で楽しむ団子や餅がつきものでした。農村では、田植えの時にヒルマモチとかオナリと呼ばれる女性が運んでくる昼食や朴葉飯などの田植え食が伝承され、ここには本膳料理とか老舗の料理などの格式ある食とは別の、もう一つの日本の食の伝統がありました。現在にも伝承されている外でちょっと食べる「そとたべ」の民俗からは、遊び・行事の日のそとたべと仕事・労働の日のそとたべとの両方があることがわかります。

本展示では、このような「そとたべ」の日本の食の歴史と民俗に注目して、外で食べることの意味について、あらためて考えてみます。

みどころ

・「四条河原納涼図屏風」の川床、農村や漁村の盆の行事の中で河原や浜辺での飲食。お膳や食器に盛られる「いえたべ」と重箱詰めの「そとたべ」のちがいがみえてくる。
・「三代歌川豊国画 冬の宿 嘉例の寿々はき」に描かれているおむすび。丸いおむすびと三角のおにぎりの重なる歴史がみえてくる。
・春の山遊びや花見の弁当箱、漁師の弁当箱。弁当箱には、実用の工夫と遊び心の2つがみえてくる。

主な展示資料

三代歌川豊国画 冬の宿
嘉例の寿々はき(部分)個人蔵

・四条河原納涼図屏風
・花見の戯れ
・歌川広重画 江戸高名会亭尽(山谷八百善、白山傾城か窪、他)
・新版御府内流行名物案内双六
・歌川国貞画 十二代目市村羽左衛門の下男新作と坂東しうかの是斎娘おつゆ
・三代歌川豊国画 八代目市川団十郎の南与兵衛(個人蔵)
・三代歌川豊国画 冬の宿 嘉例の寿々はき(個人蔵)
・花見弁当箱
・チゲ(漁業用弁当箱)
・旧侯爵木戸家資料(アルバム)
・おでん屋呑喜関係資料(写真額、色紙、掛売帳、暖簾、他)
・民俗写真資料(写真提供 芳賀ライブラリー)
  花見、屋台、ひな祭りの河原での飲食、花田植えの昼飯(ひるま、朴葉飯)、
  盆の河原での飲食、奄美の一重一ビン、他

 

など計約30点(一部個人蔵、芳賀ライブラリー提供以外すべて当館蔵)
但し、会期中、展示替えを行います。

【展示代表】

関沢 まゆみ(国立歴史民俗博物館 民俗研究系 教授)

専門は、社会・信仰・儀礼に関する民俗学的研究。
主な編著書に『日本の食文化2 米と餅』(吉川弘文館、2019年)、『民俗学が読み解く葬儀と墓の変化』(朝倉書店、2017年)、『盆行事と葬送墓制』(吉川弘文館、2015年)など。

1) 大道風俗絵巻/明治か/個人蔵
天ぷらの屋台。串に刺して食べている様子がわかる。

2) 農家のコビル/昭和30年代/写真提供:芳賀ライブラリー
田植えどきの楽しい食事風景。静岡県賀茂郡南伊豆町妻良。

3) 歌川広重画 江戸高名会亭尽 両国 青柳/天保後期/国立歴史民俗博物館蔵
料理茶屋の仕出し料理を屋根船に運ぶ。

4) 遊山箱/昭和/国立歴史民俗博物館蔵
春の山遊びの日、野山に女の子が持っていく遊山箱。徳島県勝浦郡勝浦町。

5) 三代歌川豊国画 冬の宿 嘉例の寿々はき/安政2年/個人蔵
すすはきの日、重箱には俵型のおむすび。

6) 朴葉飯/写真提供:芳賀ライブラリー
田植えの日に昼に食べる朴の葉で包んだご飯。広島県芸北地方。