第118回歴博フォーラム「資源化する文化と地域社会の行方-文化の継承のために-」

歴博フォーラム

開催要項

日時

2024年7月13日(土) 13時00分~16時50分

場所

歴博講堂

定員

240名

参加費

無料

主催

国立歴史民俗博物館

開催趣旨

本フォーラムでは、現代日本における世界遺産・無形文化遺産、あるいは世界農業遺産などの文化資源をめぐる登録・認定制度、さらにその基盤となる日本の文化財保護制度が地域社会に与える影響について検証します。様々な災害や慢性的な人口減少のなかで、地域社会の諸文化は存続の危機にあり、地域を超えた文化の再編成が行われています。本フォーラムは、広領域連携型基幹研究の歴博ユニット「フィールドサイエンスの再統合と地域文化の創発」の中間成果報告であるとともに、2023(令和5年)度に行った特集展示「四国遍路・文化遺産へのみちゆき」の成果を含めた統合的なフォーラムとなります。

世界遺産や無形文化遺産制度は、ともにユネスコが世界の自然・文化を記録・保存するための条約によって成立しました。現在(2024年5月)、日本では21件の世界遺産と22件の無形文化遺産が登録されています。更なる登録を目指して多くの自治体が、組織的な運動を継続しています。このような動きは、とりわけ21世紀以後に顕著となってきました。遺産に登録されるためには、日本国内での保護制度に準拠しつつ、ユネスコが掲げる「顕著な普遍的価値」を有する必要があります。

世界遺産、無形文化遺産に登録された地域が増えると、当該の文化や自然をめぐる環境が大きく変化し、当該地域にとっての意味付けも変容してしまうことがあります。また、自然・文化遺産を観光や地域振興に用いたいと考える地域社会の思惑によって、産官学を巻き込んだ、「文化の政治学」が繰り広げられることになります。一見、ニュートラルにみえる研究者の営みも文化遺産の再編成において、これらの政治学の一角を担っていることは間違いありません。とはいえ、遺産登録を経て新たに価値付けられることで、当該の自然・文化遺産が、観光資源としてだけでなく、地域の社会的な紐帯を再構築する役割を果たしている側面も否定できません。

けれども、遺産への登録制度は、様々な面で限界を迎えつつあります。申請する文化財の件数が増えることで、審査がより厳しいものとなり、登録が先送りされる遺産も多いです。世界文化遺産では暫定リストに入ったまま、10年以上にわたり登録が保留されている文化財もあります。無形文化遺産については、既登録の遺産の内容を拡張する形で、類似する文化財の登録を目指すことが常態化しつつあります。期待されていた経済効果は限定的で、登録以前よりも観光客数が減少している遺産も複数みられます。

より深刻な問題は、このような制度の裏面で進行している地域文化の衰退です。国内で文化財指定を受けていない多くの有形無形の文化は、制度的な恩恵も社会的な価値付けからも、取り残されています。継承してきた地域社会からも顧みられなくなり、消滅の危機にある文化も数多いです。東日本大震災をはじめとする自然災害や今時のコロナ禍は、このような地域文化の衰亡に拍車をかけています。

地域社会のなかには、進行する地域文化の危機に対して、地域社会の内実と照応した試みを行う事例もみられます。そのような事例として、日本遺産や文化財の登録制度などを用いた実践例をあげることも可能でしょう。地域の文化財の再編成を通しての物語化や文化財への積極的な関与による継承が目指され、保存と活用を両睨みした実践が試みられつつあります。このような事例はグローバルな文化遺産の再編成に対するカウンターとしての側面が強いものの、地域の生活とつながり、既存の文化実践を活かした試みとして評価すべき点も多いです。

このフォーラムでは20年以上にわたって展開してきた世界遺産、無形文化遺産などの文化をめぐるグローバリズムのなかで、日本各地の地域文化がどのような変化を遂げ、いかなる課題に直面しているのかを、現場の最前線の事例から考え直していきたいと思います。

第117回歴博フォーラム レジュメ集はこちら(PDF)

プログラム

(内容は変更される場合があります)

13:00~13:10

開会の挨拶 
鈴木 卓治(国立歴史民俗博物館・教授)

13:10~13:40

文化遺産制度と地域社会の現在
川村 清志(国立歴史民俗博物館・准教授)

13:40~14:10

文化遺産のストーリーと地域社会―世界遺産・富士山と地域遺産・遠野を事例に―
山川 志典(国立民族学博物館・外来研究員)

14:10~14:40

「みんなの遺産」は可能か――佐渡金銀山にみる「価値」の探求と運動史から
門田 岳久(立教大学観光学部交流文化学科・教授)

14:40~14:55

休憩

14:55~15:25

八戸三社大祭“再”祭礼化~無形文化遺産を契機とした担い手の意識変化~
柏井 容子(八戸市教育委員会・主査)

15:25~15:55

無形文化遺産の保護とコミュニティ概念再考
佐々木 重洋(名古屋大学文学部・教授)

16:00~16:45

総合討論 コーディネーター
兼城 糸絵(鹿児島大学法文学部・准教授)

16:45~16:50

閉会の挨拶 
川村 清志(国立歴史民俗博物館・准教授)

総合司会

真柄 侑(国立歴史民俗博物館・特任助教)

事前申込(先着順)について

※申込受付は終了しました

歴博フォーラム当日のお願い

  • 入館の際のマスクの着用につきましては、お客様個人の判断とさせていただきます。
  • 館内各所に消毒用アルコール液剤を配置しておりますので、こまめな手指消毒とともに手洗いにご協力をお願いします。

※ご都合により参加をキャンセルされる場合は、以下お問い合わせ先までご連絡をお願いします。

お問い合わせ先

国立歴史民俗博物館 広報課 広報・普及係
TEL:  043-486-0123(代) Email: reservation@rekihaku.ac.jp
※こちらの電話・電子メールからの申込はできません。
受付時間:平日9:00~17:00