「伝統の朝顔」(2023年度)
開催概要
朝顔は古くから多くの人々に親しまれてきました。特に江戸時代以降、文化・文政期、嘉永・安政期、明治・大正期など、繰り返し朝顔ブームが訪れ、変化朝顔とよばれる、朝顔に見えないような多様な形の花と葉を持つ朝顔が創り出されてきました。特に、朝顔は一年草であるにも関わらず、種子を結ばない変異も種子によって維持してきたことは世界的に見ても特異なもので、幕末の嘉永・安政期にはきわめて多くの品種が創り出されていたようです。
しかし、大正期以降、現在でも広く栽培されている大輪朝顔の栽培が盛んになる一方、変化朝顔の愛好家は次第に減少し、第二次世界大戦後の変化朝顔はわずか数名の愛好家によって維持される状況になりました。幸いなことに、江戸期に起源を持つ変化朝顔の変異の多くは、愛好家や研究者の努力によって現在まで維持されているのです。そこで、江戸時代以降の独創的な知識と技術を駆使してつくり上げられた伝統の朝顔を広く知っていただき、人と植物との関わりを見るべく、当苑では1999年以降、歴史資料としてこれらの朝顔を展示してきました。
今回は、「ゲノムに記されたアサガオの歴史」をテーマに、ゲノムの解読方法の概説、変異遺伝子の起源と日本園芸品種の由来、アジアとくに日本に入ってきてからトランスポゾン(動く遺伝子)が活性化した様子についてパネルで紹介します。
また、くらしの植物苑内のビニルハウス、東(あずま)屋、よしず展示場に、当苑で栽培した鉢植えの朝顔を展示します。
開催期間
2023年8月9日(水)~ 2023年9月10日(日)
会場
国立歴史民俗博物館 くらしの植物苑
料金
個人100円
開苑時間
9:30~16:30 (入苑は16:00まで)
休苑日
8月21日(月)・28日(月)・9月4日(月)
主催
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館
※高校生以下は入苑無料。
※障がい者手帳等保持者は手帳等提示により、介助者と共に入苑無料。
※博物館の総合展示・企画展示は別途料金がかかります。
※博物館の半券の提示で、当日に限りくらしの植物苑にご入場できます。また、植物苑の半券の提示で、当日に限り博物館の入館料が割引になります。
※8月14日(月)~20日(日)は8時30分から開苑いたします。
※開花の特性上、午前中の早い時間が見ごろです。
※8月14日(月)は開苑します
概要
- 変化朝顔 正木系40系統、出物25系統
- 明治時代以降の大輪朝顔25系統程度
- ヨーロッパ・北米産の近縁の朝顔 10系統程度
計 約100系統、約700鉢を展示
★公的機関としては日本最大規模です!
展示風景(東屋)
展示風景(ハウス)
青常葉青丸咲(東京古型標準型)
松島鍬形葉白地紫時雨絞丸咲(咲分)
青蜻蛉丸笹葉無弁花牡丹
黄弱渦柳葉白撫子采咲牡丹
青縮緬立田蜻蛉雨龍葉納戸鼠車咲
黄斑入蝉葉紅吹掛絞丸咲大輪(吾妻絞)
黄縮緬葉瑠璃筒白総鳥甲吹上台咲牡丹
青葵葉淡黄丸咲
黄握爪龍葉紫総風鈴獅子咲牡丹
豆知識 ー変化朝顔の名称-
江戸時代に育まれた園芸植物の中で、変化朝顔には特異な名称がつけられています。第一次ブーム(文化・文政期)の番付表にはその走りが見られますが、第二次ブーム(嘉永・安政期)に基本ができあがります。それは葉の色、模様・質・形、茎の形、花の色・模様・花弁・咲き方・花弁の重ねを順番に記述し、必要に応じて付加してゆく命名法で、現在の遺伝学から見ても非常に理にかなったものです。
たとえば「青水晶斑入弱渦柳葉淡藤爪覆輪采咲牡丹(あおすいしょうふいりじゃっかやなぎばあわふじつめふくりんさいざきぼたん)」を見てみましょう。まず始めに、葉についての記述です。青(葉の色)・水晶斑入(模様)・弱渦(質)・柳葉(形)に分解できますが、これは青葉の水晶斑入で、「渦」と「柳」の突然変異が入った葉であることを示しています。次に、花についての記述です。葉の記述と同様に、淡藤(花の色)・爪覆輪(模様)・采咲牡丹(咲き方)に分解できますが、淡藤の地に覆輪が入った花色で、撫子のような花弁で、采咲という細かく切れた咲き方であることを示しています。
左:青水晶斑入弱渦柳葉 右:青水晶斑入弱渦葉(葉)
淡藤爪覆輪采咲牡丹(花)
関連の催し物
展示解説会のご案内
日時
8月9日(水) 11:00~
場所
くらしの植物苑
備考
※要入苑料
当展示プロジェクト委員による展示解説を行います。事前予約等は必要ございません。
朝顔 有償頒布のご案内
日時
6月24日(土)、25日(日) 9:30~12:30
場所
くらしの植物苑
備考
※要入苑料