第447回「陰陽道と伝承文化」
開催要項
日程
2023年11月11日(土)
講師
小池 淳一(本館民俗研究系教授)
講演趣旨
伝承文化は民俗文化あるいは生活文化と類似の術語ですが、歴史的に遡及し、分析できるものとして用いてみたいと思います。すなわち聞き取りが不可能な歴史的な世界における民俗をとらえるために、民俗の継承を意識して、伝承という語をここでは用います。
陰陽道は広義の日本宗教ですが、明治初めの陰陽寮廃止によって、その命脈が断たれて陰陽師は姿を消しました。この点が仏教民俗における僧侶、修験道研究における修験者などと異なります。葬送儀礼や墓制、登拝習俗といった現代の民俗を対象とし、それをよりどころとする民俗研究の方法は、陰陽道においては通用しないのです。民俗的陰陽道研究は必然的に文字資料を対象とし、そこに伝承を読み込むこととなります。
そうした方法意識や対象認識をふまえて、講演者が、1992年以来、民俗のなかの陰陽道をどのようにしてとらえてきたか、具体的な事例に即してお話してみたいと思います。特に、『三国相伝陰陽管轄簠簋内伝金烏玉兎集』(簠簋)という書物を軸として、民俗事象や伝承文化と陰陽道との関係をとらえ、さらにそこから照射することのできる問題群についても考察を進めてみたいと思います。
企画展示「陰陽師とは何者か―うらない、まじない、こよみをつくる―」は、陰陽道の通史がその柱のひとつです。それをふまえることで民俗研究がどのような可能性と展望を持つことができるのか、についても言及する予定です。