基盤研究(B)一般

「隠し売女」から「淫売女」へ―近世近代移行期における売春観の変容

研究期間:2019年度~2021年度

研究代表者 横山 百合子(本館・研究部)
研究分担者 廣川 和花(専修大学)
森田 朋子(中部大学)

研究目的

1872年発令の芸娼妓解放令は、“遊女にはその身体を所有する者がいて性を売らされている”とみる近世社会の通念が、売春は“自ら売る淫らな女”によるものとする近代の売春観に変わる起点となった。本研究では、これを近代売春観の起点となる“売春の再定義”として位置づけ、そのような転換が行われた歴史的事情を、地域社会や遊女自身の“再定義”の受け止め、および売春に対する国際社会の動向や性感染症に対応する近代医学の進展なども視野にいれて解明することを目的とする。このような考察を通して、従来一片の紙切れとされてきた解放令の歴史的位置づけを刷新すると同時に、“再定義”によって進行した、売らせる者や買う男性の不可視化、娼婦へのまなざしの変化、さらには娼婦自身が売春をスティグマとして内面化する過程を明らかにし、近世近代移行期の社会像を連続と断絶の両面から描くことを目指す。