研究の概要

研究の目的

本研究の目的は、日本の稲作農耕の始まりについて、高精度炭素14年代測定法を用いて実年代を確定し、弥生文化を新しい年代に位置づけることである。

日本の生活基盤の中心である稲作文化がこれまでよりも約500年間遡ることになれば日本歴史について新たな枠組みを提供することになる。これらの研究を通して日本歴史及び日本の農耕文化の受容のありかたについて新たな研究分野の創成を目指す。

この研究を具体的に進めるために以下の研究目的を定める。

  1. 日本列島各地の弥生土器の年代を確定する。その方法は弥生土器に付着する炭化物を採取し、加速器質量分析装置(AMS)を用いて炭素14年代を測定し、それを実年代に較正する方法を用いる。
  2. 北部九州から中国・近畿地方など、日本列島各地の稲作農耕の伝播の時期を確定する。そして当時の縄文社会から弥生文化への変化のプロセスを明らかにする。
  3. 考古学試料への炭素14年代測定法の応用に関連する諸問題を検討する。例えば土器付着炭化物の由来と年代較正への影響、また土器付着炭化物の同位体分析などである。
  4. 日本歴史の流れを実年代で示すことにより日本の歴史を東アジア史及び世界史の中に位置づける。
平成19年度の研究計画
  1. 各地域出土の縄文晩期と弥生前期の土器付着炭化物の収集を行う。
  2. 縄文晩期から弥生時代の資料を中心に、測定用試料の汚染除去やガス化などの前処理を行い、AMS法による年代測定を行う。今年度は、土器付着炭化物・米・雑穀・動物骨など約500点の資料を測定する予定。
  3. 日本版較正曲線の整備については、紀元前800年以上前に遡る年輪が観察された木材が新たに提供されたので、紀元前800年前以前の較正曲線の検討を行う。さらに、紀元前200年から紀元後200年の較正曲線の検討を進める。このための測定資料は約300点の予定。
  4. 日本独特の較正曲線の変化が推定される紀元前650年頃の問題については、山形大学工学部で実施している1年刻みの年代測定研究と共同研究を行う。山形大学理学部には約100点の測定を依頼する。
  5. 人骨や動物骨のコラーゲンを抽出して年代測定を行う。そして、動物の生息環境や食性、海洋リザーバー効果など、年代測定に影響を与える要因について検討する。
  6. 研究成果の公開として、本年6月に北上市、11月に名古屋市で現地研究会を開催する。また、2008年1月に歴博にて今年度の研究成果報告会を開催する予定。