主要な用語の説明

炭素14

炭素は、植物や動物、およびそれらを原材料としたものに例外なく含まれている。自然界には、その炭素に12,13,14という三種類の「同位体」が存在する。

このうち炭素14は、放射線(ベータ線)を出しながら少しずつ窒素に変わっていく放射性同位体である。原子が放射線を出して別の原子に変わり、元の量の半 分になるまでの時間を半減期というが、これはそれぞれの放射性同位体に固有で、温度や圧力など周辺の環境によらず一定である。この性質を利用して、炭素 14の個数を数えることで年代を測定することが、炭素14年代法である。

炭素14の半減期は5,730±40年である。これは、5,730年後には炭素14濃度が半分になり、11,460年後にはその半分の4分の1になることを意味する。

炭素14年代

植物は光合成により、大気中の二酸化炭素を取り込み、動物は植物や他の動物を食べて炭素を取り込む。生物は外から炭素を次々に取り込ん でいるので、体内の炭素14の濃度は、それらが生きている限り大気中の濃度に等しい。ただし、生物が死ぬと外から炭素が取り込まれなくなり、時間が経過す ると遺体の炭素14は壊れ続け、濃度は減少していく。つまり炭素14年代が示す年代は、生物が死んで外から炭素を取り込まなくなった年代に相当する。

測定で得られるデータは,試料の炭素14濃度(炭素12に対する炭素14の量)である。測定値は、これらの濃度を慣習的に年代として計算したものであり、「炭素14年代(単位14C BP)」と呼ばれる。

具体的には、過去の大気中の炭素14濃度が一定で変わらなかったとし,その値が測定した試料の値にまで減少する時間を,炭素14の半減期を5568年(よ り正確とされる5730年ではなく、慣習的にこの値が用いられている。)として計算し、西暦1950年を基準にさかのぼった年数である(図1(PDF:56KB))。

しかし、実際には大気中の炭素14濃度は変動していたので、「炭素14年代」はあくまでも計算上の年代である。

暦年較正曲線

モデル年代である「炭素14年代」を暦年代に変換するための基礎データベースである。炭素14濃度を、基準年(西暦1950年)に対す る濃度比としてプロットすると、ほぼ炭素14の半減期の5730年にしたがって減少しているが、詳細には大気中の濃度変動を反映した凸凹のある曲線となる(図1(PDF:56KB))。

暦年較正のための国際標準データベースとして用いられることの多いINTCAL98は、年輪年代で暦年代を値付けした欧米産木材の年輪試料を用い、約11,800年前までの測定データをまとめている。

「炭素14年代」を暦年代に変換することを「暦年較正」、変換された年代を「暦年較正年代」あるいは「較正年代」と呼ぶ。

較正年代の算出

炭素14年代には,測定に伴う誤差が付けられている。較正曲線のデータにも誤差が付いているので、両者の重なりをベイズ統計に基づいて 処理すると、較正年代が確率密度分布として与えられる。その形は過去の炭素14濃度の変動を反映して複雑なものになる。較正年代はこの範囲の中に約95% の確率で収まるように調整されている。

較正曲線が整備される以前のデータなど、炭素14年代で報告されている年代を暦上の年代と混同しないよう注意が必要である。

AMS法・従来の測定法との違い

AMS(加速器質量分析計:Accelerator Mass Spectrometer)が登場する以前から、炭素14は「ベータ線計数法」という方法で測られてきた。これは、炭素14が壊れる際に放出される放射線 (ベータ数)を検出するもので、現在でも広く行われている。

原理的に、炭素14年代の結果がAMS法とベータ線計数法とで異なることはない。両者の差は、測定法よりも測定できる試料にある。

試料から放出されるベータ線はとても少なく、炭素14の少ない古い試料ほど検出が難しくなる。そのためベータ線計数法ではグラム単位の炭素が必要になり、 必然的に多くの試料量が必要になる。一方、AMS法は壊れずに残っている炭素14を、直接一個一個検出してその同位体濃度を測定するので、必要な炭素は1 ミリグラム以下で済む。

AMSの登場によって、これまでの1000分の1の量で炭素14年代法が使えるようになった。土器にわずかに付着した炭化物、漆製品の塗膜、文書からはが れ落ちた小さな紙片など、ベータ線計数法では難しかった試料の年代が測定できるようになった。また、測定時間が短くなり、多くのデータが効率良く得られる ようになったことも、炭素14年代法の普及に貢献している。

  AMS法 ベータ線計数法
必要な試料数 数ミリ~数十ミリグラム 数グラム以上
測定時間 数十分 数日
測定できる年代 ~5万年前
炭素14を直接測るため
~4万年前
ベータ線が少なくなるので
測定装置 比較的大がかり 比較的簡便


現在、AMS施設は世界中に60以上を数え、その多くが炭素14の測定を行っている。学術創成研究では、名古屋大学、東京大学のAMS施設と共同研究を 行っている。また、一部の試料はアメリカのベータアナリテック社、日本の(株)加速器分析研究所といった民間の機関に測定を依頼している。