若手研究(B)

日本近世城下町における武家の消費行動および家相続と都市社会

研究期間:平成16年度~平成18年度

研究代表者 岩淵令治 (本館・研究部)

研究目的

現在の日本の大都市の多くは、世界の前近代都市の中でも特異な都市形態-近世城下町を淵源とする。その最大の特徴は身分による居住地区分であり、とくに武家地は城下町成立の根幹にかかわり、最大の面積を占めたという点できわめて重要である。しかし、1990年代からはじまった武家地の研究蓄積はまだ浅く、幕府の武家地の支配と実態、武家奉公人と都市下層社会の連関が検討されたものの、いまだに武家地は都市社会の中に位置づけられていない。すでに、研究代表者は科学研究費補助金(特別研究員奨励費)「日本近世都市における武家地の研究」〈1997年度〉・奨励研究A「日本近世城下町における武家地の研究」〈2001~2002〉年度で都市史の視点からみた武家地の検討を行い、武家屋敷が果たす都市の機能(治安維持など)、武家地が町・寺社・近郊農村とむすぶ諸関係(地域論)、藩邸の消費・生産が都市経済に及ぼす影響を検討し、武家地を近世の都市社会に位置づけ、近世城下町の構造と特質を照射した。本研究では、上記の基礎的研究を発展させ、藩主の分析も継続しつつ、a藩主家の女性および女中、b江戸詰藩士、c旗本・御家人をとりあげる。そして、日記・小遣帳にみる生活・消費行動(購買行動、文化的消費〈信仰・遊山〉、ゴミの廃棄や町人貸家等)、江戸における身分・藩を越えた「家」の相続(主にb)等を検討し、より微細なレベルで武家地を都市社会に位置づける。