基幹研究

環境や交流からみた日本歴史の動的研究

東アジアからみた関東古墳時代開始の歴史像

研究期間:2022年度~2024年度

  氏名
(所属/専門分野/分担課題)
研究代表者 佐々木 憲一(明治大学文学部/日米考古学/国家形成論・常陸)
研究組織

田中 裕(茨城大学人文社会科学部/日本考古学/古墳時代社会論・常陸)
滝沢 誠(筑波大学人文社会系/日本考古学/鉄製武具)
深澤 敦仁(群馬県立歴史博物館/日本考古学/上野における古墳時代の始まり)
内山 敏行(とちぎ未来づくり財団/日本考古学/下野・那須における古墳時代の始まり)
青木 敬(國學院大學文学部/日本考古学/古墳築造論)
城倉 正祥(早稲田大学文学学術院/日本考古学/下総・北武蔵・埴輪工人組織)
白井 久美子(千葉県立房総のむら/日本考古学/房総半島における古墳時代の始まり)
日高 慎(東京学芸大学教育学部/日本考古学/埴輪・日韓関係)
福田 聖(埼玉県埋蔵文化財調査事業団/日本考古学/北武蔵・弥生墓制との関わり)
北條 芳隆(東海大学文学部/日本考古学/景観論・古墳出土石製品)
古屋 紀之(横浜市埋蔵文化財センター/日本考古学/土器祭祀論)
西川 修一(興南高等学校/日本考古学/相模・古墳出現期の土器)
若狭 徹(明治大学文学部/日本考古学/東北・北海道との交流)
酒井 祥子(カリフォルニア州立大学ロングビーチ校/合衆国南西部考古学/年代測定)
松木 武彦(本館研究部/日本考古学/社会論・武器)
上野 祥史(本館研究部/中国・日本考古学/古墳時代の日中関係)
高田 貫太(本館研究部/朝鮮考古学/古墳時代の日韓関係)

研究目的

本研究は、関東における古墳時代開始の複雑なプロセスに、地域間交流を含めた様々な観点から実証的に迫り、統合的な歴史像を再構築することを目的とする。日本考古学においては、墳丘、埋葬施設、埴輪、集落、土器、鉄製農工具などが個別に研究される傾向が強く、全体的な古墳時代史像になかなか繋がっていない印象を受ける。この基幹研究では、古墳時代開始期をキーワードに、違った考古資料や理論的テーマを専門とする研究者を集め、成果を突き合わせて、一つの大きなモデル構築を目指す。

本研究の独自性として、畿内中心史観から脱却し、在地社会の立場からこの課題を検討することがあげられる。この立場は本館展示第1室リニューアルにおいて地域の「王」が人びととの相互関係をもとに在地社会を形成するようすを表現したところであり、本研究ではこれが主体的に形成される過程を、資料の豊富な関東で復元する。例えば大和王権から見れば毛野は1国であるが、古墳時代前期の上野は前方後円墳と三角縁神獣鏡の世界、下野は前方後方墳と虁鳳鏡・盤龍鏡といった三角縁神獣鏡以外の鏡の世界である。これは、交流する相手を在地の「王」が独自に、主体的に選択していた可能性を示唆する。ここに、在地の視点から古墳時代考古学を実践する意義がある。

その前提として、これまで各県ごとに叙述されてきた関東の古墳出現プロセスを総合的に復元する。具体的には、第一に、出現期古墳の編年の併行関係や、古墳出土の埴輪と集落出土の土器の編年を統合する。第二に、光ルミネッセンス年代測定を導入し、違った地域と異なった性格の遺跡出土の古墳時代開始期・前期の土器片・埴輪片の年代測定を行う。これらの土器・埴輪はこれまで漠然と同時期と思われていたが、誤差も含め紀元250年、紀元300年といった数値が導き出せることで、ある程度の同時代性・新古に迫れるようになると同時に、近畿地方古墳時代開始期の暦年代との同時代性も検証できる。また派生する目的として、新しい研究手法を日本考古学に導入し、学際研究の端緒を開くことも目論む。同時に、カギとなる未報告データも資料化し、学界での共有を図り議論の場を新たに提供すると共に、関東古墳時代開始期歴史史像モデルの補強を行う。

諸地域の成果を統合したうえで、中国由来の青銅鏡、朝鮮半島由来と思われる鉄製品・鍛冶技術が、近畿、東海、あるいは日本海沿岸を経由して、いつ関東のどこに入ってきたか、実証的に迫る。古墳出現前後の時期は東アジアの地域間交流が非常に活発であったが、関東の場合は畿内と東海という西方の二つの近接した地域の影響を濃密に受けつつ、北方の東北・北海道とも技術や文物・資源をやり取りし、さらには中国や朝鮮半島とのつながりも希求した。このように、東アジアにおける関東の地域間交流のパターンは畿内以上に複雑であったと推測でき、その複雑さが関東の地域社会の歴史的特質を作り上げていった様子に実証的にアプローチしたい。

以上、様々な考古資料、理論、地域を統合することで、関東からみた3~4世紀古墳時代史の再構築を目指す。