基盤研究

課題設定型共同研究

秦漢時期の文字使用をめぐる学際的研究

研究期間:2021年度~2023年度

  氏名(所属/専門分野/分担課題)
研究代表者 下田 誠
(東京学芸大学先端教育人材育成推進機構/中国古代史/総括・封泥の文字情報に基づいた秦代歴史地理環境の復元)
研究組織 松村 一徳
(シールロード研究所/東西印章史/封泥の編年研究)
鶴間 和幸
(学習院大学/中国古代史/秦代封泥の史的評価)
瀨川 敬也
(観峰館/中国書画/日本所蔵秦封泥の基礎的研究)
籾山 明
(公益財団法人東洋文庫研究部/中国古代史(簡牘)/封泥利用の史的評価)
高村 武幸
(明治大学/中国古代史(簡牘)/封泥からみた社会システム)
青木 俊介
(清泉女子大学/中国古代史/印章の利用形態の検討)
谷 豊信
(東京国立博物館/中国考古学/漢代封泥との比較検討・情報分析支援)
島津 美子
(本館研究部/文化財科学/封泥の材質分析)
箱﨑 真隆
(本館研究部/植物学/封泥・簡牘に使用する植物の検討)
上野 祥史
(本館研究部/東アジア考古学/封泥をめぐる行動復元)

研究目的

本研究は、中国秦漢時期の文字使用をめぐる人間活動を対象として、歴史資料の研究資源化・高度情報化を目的とする学際的研究である。東アジア歴史空間でひろく共有された、文書行政による社会運営システムの源流を探究する試みである。

中国では、戦国時期から秦漢時期にかけて官僚制の形成に伴い文書行政が発達した。それを支えたのは書写材料としての木簡・竹簡(あわせて簡牘と呼ぶ)と印である。秦漢時期の中国では、皇帝以下地方の下級役人まで、諸官が印を文書行政に使用していた。中国古代史の解明では、情報メディアとしての簡牘ばかりが取り上げられ、封泥は発見・現存数も多くないことから、注目されることは少なかった。しかし、当時の中国社会を支えた文書行政システムを総体としてとらえるためには、簡牘と印・封泥を含めて、文字を使用するさまざまな局面での人々の行為・所作をトータルに復元する必要がある。歴博総合展示第1室「先史・古代」では、竹簡と共に筆や削刀、印や封泥を展示して、秦漢時期の中国を紹介している。こうした視点で、秦漢時代社会をとらえることが本研究の目的である。

日本では、漢と交渉した弥生時代以降、木簡を使用した7世紀後半にも、封泥は存在していない。簡牘の日中比較研究はさかんであるが、存在しない封泥が注目されることはほとんどない。古代日本の交渉対象、あるいは影響の源流として中国を評価するには、日本に直接結びつくもの、日本にも存在するものだけでは不十分であり、本研究が取組む「総体としての文字使用環境」と比較してこそ、弥生時代の日中交渉や日本古代の簡牘システムを相対的に評価することが可能になる。本研究は封泥を中心にして、秦漢時期の文字使用をめぐる人間の活動や身体所作をトータルに復元することを、第1の目的とする。

印と封泥は、秦漢国家の管理・運営のシステムを象徴するモノである。本研究では、秦都咸陽の地、相家巷村付近で大量に発見された戦国末秦・統一秦期の封泥を分析することで、新たな物流や物資集積の意味が探究されるだろう。研究・分析に際しては国内秦漢封泥を二層に分け、精査(各年20件程)、印面形状調査200件程を進める計画にある。秦封泥の解明は、文書行政システムの端緒を明らかにするものであり、その意義は大きい。同封泥に対する歴史学的分析、考古学的分析、理化学的分析を統合することによって、文書行政システムが帝国中国の全領域で確立してゆくプロセスを解明する。これが本研究の第2の目的である。

本研究は「文字使用」のツールにかかる議論を集約し「文字を使う環境」を総合的に復元・検討し、「文字使用をめぐる学際的研究」のモデルを提示する。それは、日本をはじめ、簡牘を利用した東アジア各地の古代史を評価する上でも有益な視点が提示できると考える。

 

研究会等

概要

日程:2022年11月6日(日)~ 11月7日(月)
場所:国立歴史民俗博物館/オンライン併用開催

内容

第2回研究会(2022年度第2回研究会)
松村 一徳「秦封泥の出土地点を読み解く」
瀬川 敬也「観峰館蔵封泥に関する所見Ⅱ」
上野 祥史「内部透過情報を対照した封泥の検討」
青木 俊介「秦漢代の令・長印断代に関する一考察」
髙村 武幸「秦漢官府の公文書処理件数と時間帯―官印使用の時間の検討―」
籾山 明「封じることと送ること―秦封泥と検の関係についての試論―」
観峰館蔵封泥の検討

概要

日程:2022年6月24日(金)
場所:オンライン開催

内容

第1回研究会(2022年度第1回研究会)
下田 誠「秦封泥研究の近年の進展と課題―その中間報告―」
鶴間 和幸「始皇帝の時代の県の検証~県丞印封泥・簡牘・陶紋資料より~」

概要

日程:2022年3月14日(月)
場所:観峰館(滋賀県東近江市)

内容

第3回研究会
箱﨑真隆(本館・プロジェクト研究員) 「封泥に残る植物圧痕の分析について」
島津美子(本館研究部・准教授) 「封泥の化学組成と材質分析の試み」
谷 豊信(東京国立博物館・外来研究員)「秦封泥の形状分類について」

概要

日程:2021年11月12日(金)~11月14日(日)
場所:オンライン開催

内容

第2回研究会
瀨川敬也(観峰館・学芸員)「観峰館蔵封泥に関する所見」
松村一徳(シールロード研究所・所長)「秦封泥の見方」
上野祥史(当館・准教授)「封印の所作と文字行為の復元」
青木俊介(清泉女子大学・非常勤講師)「小官印の使用範囲とその封泥の出土に関して」
髙村武幸(明治大学文学部・教授)「秦漢時代の官印使用の状況」
籾山 明(東洋文庫・研究員)「簡牘をめぐる〈しごと〉―秦封泥研究の前提として―」

概要

日程:2021年6月25日(金)
場所:オンライン開催

内容

第1回研究会
鶴間和幸(学習院大学・名誉教授)
「秦封泥から見た始皇帝の陵廟への献上品」
下田 誠(東京学芸大学次世代教育研究センター・准教授/本館・客員准教授)
「秦郡官小考―封泥を中心として―」