基盤研究

課題設定型共同研究

定期市からみた地域の生活文化の歴史と多様性に関する研究

研究期間:2020年度~2022年度

  氏名
(所属/専門分野/分担課題)
研究代表者

島立 理子
(千葉県立中央博物館/民俗学・地域研究/総括)

研究組織 大久保 悟
(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境研究部門/環境農学・地域研究/市と地域の生態的環境の関係性)
梅崎 昌裕
(東京大学大学院/保険学・人口学・人類生態学/市と保健学)
黃貞燕
(國立臺北藝術大學博物館研究所/博物館学・地域研究/市と地域社会、日本と台湾の市の比較)
小田島 高之
(千葉県立中央博物館/地理学/市の構造)
西内 李佳
(千葉県立中央博物館/植生史学/市の農産物と生産者との関係性)
水野 大樹
(千葉県立中央博物館/植物生態学/市の農産物と周辺農家との関係性)
柴崎 茂光
(東京大学大学院/地域資源管理学/行政による市管理の歴史)
内田 順子
(本館研究部/映像人類学・音楽学・民俗学/映像による市の記録・映像による研究の可視化)

研究目的

日本各地では、資本主義経済のグローバル化や大都市への人口一極集中によって、地域社会の疲弊がおこっている。今、地域社会では、豊かな生活世界を持続的に維持する方策が求められている。その解決策は、地域のなかに自立的な生活文化(経済的、社会的、文化的な循環)をもち、地域ごとの多様性を維持することだと考える。その役割を果たしてきた1つが、市・定期市(地域の人びとが中心になりモノを売買し維持・発展させてきた場)だと予測している。市・定期市は国や地域の歴史的な影響をうけつつ、独自で多様な生活文化を作りあげてきた。

市・定期市に関する過去の研究では、過去の人類社会の歴史における都市の発生や、都市と農村の関係性、交易のもたらす社会と経済への影響と文化変容、さらに国家の誕生など、あらゆる場面と深く関わっていると言われた。しかしこれまで市・定期市の地域ごとのメカニズムと、市に参加する個人の生活文化との関係性や東アジア各地の市・定期市との、実証的な比較研究は行われてこなかった。

本研究は、その問いに対して、人文系、自然史系を含む異なる専門分野の研究者が連携し、新たなフィールド調査の方法を編み出す。具体的には以下の通りである。

(1)市・定期市に通底する原理と、国と地域ごとの差異を地域の歴史を絡めながら明らかにする。具体的な調査地として、千葉県(勝浦等)、新潟県(長岡市、新潟市)、台湾(台北市内)の3地域を設定し、各地の市と地域社会を比較する。千葉県立中央博物館(以下、中央博)は、これまで人と自然の関係性を学際的に調査してきており千葉県内において市の背景となる生業についての学問的蓄積がある。日本の定期市は減少しつつあるが、新潟県では市民の日常生活に根付いている。台湾では少子高齢化、台北への人口一極集中、間近に迫った人口減少など日本と似通っているのだが、現在でも都市部において、市は減少すること無く、市民の日常生活において中心的な役割をはたしている。その理由を日本と比較し明らかにする。

(2)市を持続的に活用するのに必要な基盤は何かを提示する。市・定期市の運営、販売商品の内容と流通ルート、売り手と買い手の利用形態の基本的メカニズムを明らかにしつつ、市でモノを売り買いする個人に焦点をあて、個人と市との関係を明らかにする。

(3)総合的かつ学際的な方法論を編み出すことを目的としている。従来のフィールド調査方法は文字や写真記録であり、また映像記録の場合も結果としての成果を公開することが中心であった。現在、調査研究の過程そのものも、可視化、公開し、議論と検証の場を設けることが求められている。本研究では市を映像として記録するだけでなく、調査者の市における調査方法そのものも映像として記録し、調査の過程を可視化する。