基幹研究

水と人間の日本列島史

水をめぐる生活世界-実用と信仰の視点から-

研究期間:2020年度~2022年度

  氏名
(所属/専門分野/分担課題)
研究代表者 関沢 まゆみ
(本館研究部/民俗学/研究総括及び水資源の確保の歴史をめぐる記憶とその継承)
研究組織 阿利よし乃
(沖縄国際大学・美術館/民俗学/沖縄の生活と水)
神谷智昭
(琉球大学/民俗学/島嶼部の生活と水源確保(与論島、済州島など)と雨乞い)
新谷尚紀
(本館名誉教授/民俗学/水源と神社祭祀)
武井基晃
(筑波大学/民俗学/沖縄の生活と水)
柴崎茂光
(東京大学大学院/林政学/溜池とダムの多面的利用)
三上喜孝
(本館研究部/古代史/溜池と水利用及び城柵遺構と水)

研究目的

人と水の関係には、生物学的生存のために人びとが蓄積してきた水利用の技術と歴史があり、一方、くり返し起こる洪水などには人間が勝てない水の世界(自然の驚異、災害)がある。水の精神性(心理的かつ象徴的な意味づけ)の面では、芸術・音楽、癒しなど水をめぐる芸術と信仰がある。このような水と人間の関係史の視野から、生物学的生存のための水(実用としての水)と、心の部分(信仰としての水)とについて研究を行い、人びとの生活と水の関わりについて具体的・実用的な面と、象徴的・信仰(精神)的な面とをあわせた歴史と民俗伝承の実態の解明を目的とする。具体的な課題は以下の3点である。

(1)常的な水の確保 上水道普及以前には、飲料水、炊事、洗濯、風呂やトイレなど家庭生活のなかでどのように水を確保してきたのか。

(2)水の信仰・儀礼伝承 実用の水の儀礼化には水への関心の高さと意味づけとがあらわれている。正月の若水汲みや七月七夕の井戸浚え、棚機女の伝承、盆行事などの年中行事や、神社の立地などにみる水の信仰的な意味にあらためて注目する。

(3)水の確保をめぐる歴史の記億 青森県十和田市の三本木原開拓、玉川上水、多摩川の二ケ領用水、琵琶湖疏水等の工事、また富士川の信玄堤や雁堤等々の水害予防など、各地の水に関わる大土木工事について、その記録と記憶が学校教育や地域の祭りのなかで伝えられてきているが、その歴史と伝承の実態に注目する。

そして、この(1)日常的な実用としての水については、近代的な上下水道が完備される以前の水資源の確保の歴史と民俗の把握が重要である。とくに島嶼部においては上水道の普及が昭和40年代以降で、民俗誌にはそのような水の苦労について断片的な記述があるが、今回は経験者への聞き取りを行なっておく機会と考えている。(2)水をめぐる信仰や儀礼では、上記の年中行事のほか、井戸の水神祭祀や村の水源や田の水口の祭祀などをあらためて水と人との関わりという視点で見直すことによって、水の神とは何か、古代以来の歴史文献と日本各地の民俗伝承との両面から分析を行う。とくに水に苦労した島嶼部においては、上水道が普及してすでに使用されなくなった井戸を今も大切にして、信仰の対象としている例が少なくない。この(1)と(2)は併行して考察していく。(3)水資源確保のための大規模土木工事とその記憶については、水資源確保のための歴史的事実がその後どのように記憶され伝承されていくのかという伝承分析の視点を活用する。

これらを現地における聞き取り及び文献記録資料類の調査を通して、研究を行い、研究期間中に研究集会を開催し、成果の公開をはかり、若手研究者育成への貢献も目的の一つと考えている。

研究会等

概要

日程:2023年3月25日(土)
場所:国立歴史民俗博物館(Zoom)

内容
第11回研究会

10:00~12:00 津金澪乃(國學院大學大学院・本館特別共同利用研究員) 「昔話における水中の世界」
13:00~14:00 新谷尚紀「生と死と水の信仰と儀礼」
14:00~14:15 休憩
14:15~15:15 阿利よし乃「波照間島の御嶽と水」
15:15~16:00 事務連絡

概要

日程:2022年12月11日(日)
場所:国立歴史民俗博物館(Zoom)

内容
第9回研究会

10:00~12:00 大城沙織「南城市津波古における上水道以前の水の記録 -海軍資料と協議録を中心に-」
13:00~15:00 津波一秋「水の不在と儀礼の存在-那覇市小禄地区の門中祭祀から-」

概要

日程:2022年10月22日(土)
場所:国立歴史民俗博物館(Zoom)

内容
第8回研究会

10:30~12:00 柴崎茂光「北山地域において継承され、変わり続ける流送の技術」
13:00~15:30 『研究報告』に執筆する原稿についての検討(1)
       三上喜孝「ため池の造営伝承とその記録」
       阿利よし乃「水の利用と井戸の信仰-沖縄県中部平安座島の事例-」
       武井基晃「沖縄の水をめぐる基礎報告」他

概要

日程:2022年8月23日(火)
場所:国立歴史民俗博物館(Zoom)

内容
第7回研究会
10:00~10:30 最終年度の課題の確認
10:30~12:00 関沢まゆみ「7月と水」
13:30~14:00 関沢まゆみ「水の記憶と伝承についての情報収集〈作業例〉」
14:00~15:00 阿利よし乃「井泉の信仰と祖先祭祀 -沖縄県中部平安座島調査の中間報告-」
15:00~15:30 新谷尚紀「水とスサノオ-記憶装置としての神話-」
15:30~16:15 水の記憶と伝承についての討論
概要

日程:2021年2月13日(土)
場所:国立歴史民俗博物館(Zoom)

内容

10:00~10:15 挨拶・自己紹介
10:15~10:50 関沢まゆみ「ニソの杜と水源」
10:50~11:50 新谷尚紀「水と神社-水源・清流・清水-」
11:50~12:20 質疑応答
13:10~15:10 別所秀高「地形学的にみた古代淀川低地の治水戦略」
15:10~15:25 休憩
15:15~15:45 全体についてのディスカッション
15:45~16:00 今後の予定・事務連絡

概要

日程:2020年11月1日(日)
場所:国立歴史民俗博物館(Zoom)

内容

10:30~11:00 三上喜孝「古代における池の造営と祭祀・伝承」
11:00~12:15  藤崎綾香(特別共同利用研究員・筑波大学大学院)
   「日常的な水の確保のための共同作業-福島県柳津町小巻地区の道普請・堰上げについて-」
12:15~13:15 昼食
13:15~13:45 柴崎茂光「水力発電所の建設をめぐる生活用水の確保」
13:45~14:30 神谷智昭「沖縄南部の雨乞い儀礼-仲村渠アミン御願を中心に-」
14:30~15:15 阿利よし乃「沖縄県中部平安座における生活用水の確保」
15:15~16:00 大城沙織(筑波大学大学院)
    「沖縄における終戦直後の水問題-南城市津波古自治会協議録から-」
16:00~16:45 津波一秋(筑波大学大学院)
    「拝所の移動と水の信仰-沖縄県那覇市小禄地区のN門中の瀬長拝み-」
16:45~17:15 武井基晃「復帰前の集落の水の記録」
17:30~18:00 今後の予定・事務連絡

概要

日程:2020年7月23日(木・祝)
場所:国立歴史民俗博物館(Zoom)

内容

13:00~14:15 関沢まゆみ 参加者の自己紹介、趣旨説明と質疑応答
14:15~14:45 神谷智昭「仲村渠(2月沖縄での研究会での調査予定地)について」
14 :45~15:15  阿利よし乃「沖縄の生活と水-沖縄本島中部 平安座の事例-」
15:30~16:00 武井基晃「烏山頭ダムと八田與一」
16:00~16:30 三上喜孝「ため池の造営と古代社会(抄)」
16:30~17:00 柴崎茂光「保護地域と水の関係について」
17:00~17:30 打ち合わせ