基盤研究

課題設定型共同研究

近畿地方における弥生時代~古墳時代初頭の金属器生産と社会

研究期間:2019年度~2021年度

  氏名
(所属/専門分野/分担課題)
研究代表者 若林 邦彦
(同志社大学歴史資料館/考古学(弥生時代)/総括・金属器生産と弥生集落の社会論的分析)
研究組織 森岡 秀人
(公益財団法人古代学協会/考古学(弥生時代)/弥生青銅器の検討)
吉田 広
(愛媛大学ミュージアム/考古学(弥生時代)/弥生祭器の検討)
真鍋 成史
(交野市教育委員会/考古学(鉄器生産)/鉄器生産遺物の検討)
清水 邦彦
(茨木市教育委員会/考古学(青銅器生産)/弥生青銅器(銅鐸)生産体制の検討)
齋藤 努
(本館研究部/文化財科学/青銅器・鉄器の理化学分析方法の検討)
上野 祥史
(本館研究部/考古学(古墳時代)/古墳時代の青銅器生産体制の検討)

研究目的

弥生時代にはBC4世紀中頃以後、青銅器文化がみられ、鉄器の存在と使用も論じられている。青銅器は主に祭祀具として、鉄器は利器として発達するが、古墳時代になって石製利器を用いない完全なる金属期社会になるまでのプロセスは、祭祀による集団統合や輸入金属素材の流通の広域管理・統制の有無や質をめぐって重要である。個々の金属器の生産目的・共有システムの展開そのものが、列島規模の中心-周縁関係の形成つまり古墳時代や初期国家形成過程上重要な要素となる。

この過程では、北部九州における武器形青銅器や近畿地方の銅鐸鋳造が弥生時代中期前葉にさかのぼることは明確であり、鉄器に関しても中期前半の朝鮮半島製鋳造品関連品や発達した鉄器が、北部九州だけでなく北陸地方(石川県八日市地方遺跡出土中期前半例)にまでみられることが確認されている。鉄器化が列島規模で達成される古墳時代初頭以前の金属器生産の実態については多くの発言があり、広域におよぶ完全鉄器化が古墳時代への変化の動因として有力視もされている。ただ、そのプロセスについては明確ではない。弥生時代における青銅器と鉄器生産の双方の痕跡が明確な北部九州においては詳細な議論も進んでいるが、それ以外の地域では十分ではない。中四国地域以東における青銅器研究現状と解決法は以下のように整理できる。

1)武器形青銅器と銅鐸を中心に型式学的検討や系統の検討は詳細に進んでおり(吉田広2014・難波洋三2007)、古墳時代銅鏡の副葬システムへの移行が論じられている(上野祥史2014)。その一方で、青銅器の生産体制については、一部の石製銅鐸鋳型と諸型式の分布から類推が行われているだけである。特に、弥生時代後期に引き起こされる銅鐸の型式変化上の画期が生産体制と結びついて理解する方法は確立していない。これについては、鋳型だけでなく、青銅器鋳造に用いた土製送風管などの分析により型式と系統と鋳造技術の地域的差異への言及(清水邦彦2017)が進んでいる。また、小型青銅器については個々の型式や系統の生産体制やその地点・地域に不明確なことが多いが、送風管の検討は銅鐸だけでなく弥生後期に増加する小型青銅器の生産技術の系譜とも関連している。この研究をすすめることにより、弥生時代の青銅器生産の技術的・型式学的・生産論的研究を統合することが可能となる。この研究には、銅鐸などで行われている銅成分の理化学的分析を小型青銅器に対して行い、その成果の比較が必要となる。

このことにより、古墳時代へと向かう集落遺跡の展開の重要な変質開始時期(若林邦彦2009・若林邦彦2017)でもある弥生後期の社会について、集落動態と青銅器生産の変化の相関に論及できることになる。つまり、上記から類推できる特定の系統の青銅器生産がどういった集落遺跡でみられるのかについて論究可能となろう。

2)弥生時代の中四国地域以東では、近畿地方などで弥生時代後期の鉄器生産の事例が増えつつある。代表例は兵庫県五斗垣内遺跡や京都市西京極遺跡などがその代表例である。1)で指摘した青銅器生産と弥生~古墳時代集落動態の変化について近畿地方を中心とした鉄器生産の変化を結びつけることによって、上記の古墳時代社会成立の要因を鉄器生産変化に結び付けることの可否やそのプロセスに言及できる。これについては、近畿地方での金属生産の例の集成や分析(真鍋成史2003「冶関連遺物」『考古資料大観 第7巻 鉄・金銅製品』・真鍋2017・今井真由美2014「長期編年下の鉄器流通の経済学」『季刊考古学』127号)が行われて弥生~古墳時代の時期による生産工程の違いや地域によるその組み合わせの差異に論及されている。これについては金属滓などの理化学的分析を進めることによって、どの集落のどの時期にどのような工程についてより確実な議論が可能となろう。その際、鉄器生産において大きな飛躍が認められる古墳時代中期の金属工房の様態との比較が重要となる。集成研究によって知られ始めた分業的な古墳中期以後の鉄器生産の萌芽が古墳時代前期や弥生時代後期にみられるのか否かが焦点となる。

上記の1)と2)の研究に取り組み、弥生時代~古墳時代の金属器生産と社会の変化の各段階を定義づけることが、本研究の目的である。

研究会等

概要

日程:2021年3月19日(金) ~ 2021年3月20日(土・祝)
場所:近江八幡市埋蔵文化財調査整理室、同志社大学歴史資料館

内容

歴博・基盤研究「近畿地方における弥生時代~古墳時代初頭の金属器生産と社会」

3/19 資料調査:南田B遺跡・九里氏館遺跡出土資料の調査

3/20 研究会
清水邦彦(茨木市教育委員会) 
  「鋳造用具からの弥生時代後期の青銅器生産の検討に向けて」
若林邦彦(同志社大学歴史資料館・研究代表)
  「弥生集落の動態と金属器生産」

概要

日程:2020年9月21日(月・祝) ~ 2020年9月21日(火・祝)
場所:同志社大学歴史資料館

内容

歴博・基盤研究「近畿地方における弥生時代~古墳時代初頭の金属器生産と社会」

菊地 望(京都大学博士後期課程・日本学術振興会特別研究員)
  「弥生時代小型青銅器の生産について」
吉田 広(愛媛大学ミュージアム)
  「弥生時代後期の青銅器研究の現状について研究発表」
若林邦彦(同志社大学歴史資料館・研究代表)
  「金属器関連分析と小型青銅器集成作業の現状について」