基盤研究

課題設定型共同研究

高精度同位体比分析法を用いた古代青銅原料の産地と採鉱に関する研究

研究期間:2018年度~2020年度

  氏名(所属/専門分野/分担課題)
研究代表者 齋藤 努(本館研究部/文化財科学/研究総括・同位体比分析)
研究組織 田中 晋作(山口大学/日本考古学/青銅関係遺跡研究)
亀田 修一(岡山理科大学/東アジア考古学/墳時代日朝交流史)
高橋 照彦(大阪大学/日本考古学/古代鉛釉・鋳銭史)
古尾谷 知浩(名古屋大学/日本古代史/古代銅生産)
澤田 秀実(作陽音楽短期大学/日本考古学/古代国家形成史)
竹内 亮(京都府立大学/日本古代史/古代採銅事業)
成瀬 正和(東北芸術工科大学/文化財科学/自然科学分析)
今岡 照喜(山口大学大学院/地質学/鉱床・採鉱研究)
坂本 稔(本館研究部/文化財科学/年代測定・自然科学分析)
高田 貫太(本館研究部/考古学・日朝関係史/古墳時代日朝交流史)
荒木 和憲(本館研究部/日本中世史/中世日朝交流史)
林部 均(本館研究部/日本考古学/国家体制成立状況)

研究目的

わが国は、古墳時代後期から古代にかけて、海外の関与を受けつつも日本独自の国家体制が成立し、変容していく。その影響は青銅器原料の産地や採鉱技術にも及んでいる。

青銅器原料の産地推定は、これまで主に、表面電離型質量分析装置(TI-MS: MAT262)による鉛の同位体比分析で行われてきた。しかし、同装置は分析精度が比較的低く(207Pb/208Pbで0.2‰程度)、銅とスズの同位体比分析ができなかった。歴博は、2015年度に銅・スズ・鉛のいずれも同位体比分析できる、高精度(207Pb/208Pbで<0.02‰)の高分解能マルチコレクタICP質量分析装置(MC-ICP-MS: NEPTUNE)を導入した。また、2016年度から山口大学:山口学研究センターと包括協定を結んでおり、それに基づき、同県内を主なフィールドとして、科研費による共同研究を開始している。本研究ではこれらをふまえ、以下の3課題、特に「課題2」に重点をおいて取り組んでいく。

課題1)日本産原料の使用開始時期とその地域の解明
古墳時代後期以降、日本産原料があらわれ、鉛同位体比分析によって、6世紀後半〜7世紀初めまで遡る可能性が指摘された。近年の精密分析の成果に基づき、鉛とスズの同位体比から、原料が海外産か日本産かの識別を試みる。また、使用開始の時期と地域は分野によって見解が異なり、日本産原料を産出した鉱山がどこだったのかも未解明のままなので、各分野の成果を総合し、その実情を明らかにしていく。

課題2)古代において青銅器原料を供給した鉱山の特定とその推移の明確化
古代(8〜10世紀)の青銅器の鉛同位体比は、山口県産に収斂しており、出土考古遺物や文献史学の研究結果と併せて、特に長登鉱山や蔵目喜鉱山がそれらの産地として有力とみられていたが、数値には広がりがあり、他鉱山の関与も考えられていた。本研究では、山口県とその周辺地域にある古代の遺跡を、考古学と炭素14年代測定を併用して年代を定め、出土青銅関係資料の鉛同位体比を高精度分析する。同様に精密分析した山口県内各鉱山のデータと比較し、時期による青銅器原料の産地の変遷を解明する。

課題3)古代に採掘された銅の鉱石種別の判定と日本における採鉱状況の究明
銅鉱床内には硫化銅と酸化銅があるが、日本の銅採鉱がどちらの鉱石から始まったのかまだ確定していない。先行研究によって、硫化銅と酸化銅は銅同位体比に顕著な相違があることがわかっている。本研究では、各時期に作られた青銅器を選択し、鉛と銅の同位体比から、原料鉱石の種別判定を試みる。時期や青銅器の器種によって原料鉱石の種別に相違がある場合は、考古学と文献史学の成果も併せて考察することによって、当時の採鉱の状況を明らかにし、技術史的背景を究明する。

研究会等

概要

日程:2020年10月30日(金)~2020年12月14日(月)
場所:国立歴史民俗博物館

内容

特注した0.5ml 抽出クロマトグラフィー用Srレジンを使用して、鉛濃度が低い鉱石試料やからみなどから鉛を分離し、同位体比データを得た。資料やデータのやりとり、議論は郵送とメールで行い、実験は齋藤が歴博で実施した。

概要

日程:2020年5月27日(水)~2020年6月16日(火)
場所:国立歴史民俗博物館

内容

使用する試薬が少なく、ブランクを低く抑えることができる0.5ml 抽出クロマトグラフィー用Srレジンを特注で作成してもらい、一試料からストロンチウムと鉛を連続的に分離し、同位体比分析に至るまでの分析条件や回収率などを調べた。またそれを、青銅関連資料のほか、石鍋や滑石などにも適用して同位体比データを得た。資料やデータのやりとり、議論は郵送とメールで行い、実験は齋藤が歴博で実施した。