機構間連携・異分野連携研究プロジェクト事業

負ミュオンによる歴史資料の非破壊内部元素組成分析 (I-URIC18P02)

研究期間:2018年度~2021年度

  氏名(所属/専門分野/分担課題)
研究代表者 齋藤 努(本館研究部/文化財科学/統括・分析資料の選定と文化財科学的考察)
研究組織 三宅 康博(物質構造科学研究所/ミュオン科学/J-PARCにおける測定とデータ解析)

機構間連携・異分野連携研究プロジェクト事業の実施について

4機構による異分野融合・新分野創出支援事業については、これまでの異分野融合・新分野創成委員会の活動を踏まえ、本委員会の審査結果に基づき採択した本事業における機構間連携・異分野連携研究プロジェクトを支援するとともに、新たな異分野融合研究の芽出しを支援するものである。

この度、4機構長会議 異分野融合・新分野創成委員会において、昨年度Feasibility Study として採択された4課題の中から2課題が共同研究課題として機構間連携・異分野連携プロジェクトに採択され、I-URIC フロンティアコロキウムの分科会テーマから3課題がスタートアップ課題として採択されている。

歴史資料の化学組成は、製作された時期や地域によって異なり、特に金属資料の場合、人類の歴史にあらわれた製錬や加工などの技術的変遷や、地域的相違を色濃く反映する文化的指標となっている。これまで多くの考古学研究者や文化財科学研究者がそれらのデータを得ようと試みてきたが、歴史資料分析は非破壊で行うことが大前提となっているため、蛍光X線分析法のような表面分析の手法を取らざるを得なかった。しかし、大部分の歴史資料は、地中での錆化や経年劣化、表面処理などの影響によって、表層部と深奥部では化学組成に大きな違いが生じているので、このような分析法では、製作時における本来の化学組成を知ることができなかった。状況が許される場合には、資料を切断・抽出したり、研磨して表層部を取り除いたりして、深奥部の分析が行われることもあったが、それはきわめて例外的なケースであり、また指定文化財など重要資料に適用することはほぼ不可能であった。

これに対し、本研究計画で使用する負ミュオンによる元素分析法では、非破壊で、また表層部を取り除くことなく、深奥部の化学組成を深さごとに測定することができる。特に、J-PARCでは、世界最高強度で、しかも打ち込み深さを任意(炭素中で500nmから60mm)に制御できる負ミュオンビームが得られ、負ミュオン特性X線による分析が可能となっている。これまで、日本で歴史資料にこの手法が適用された例はなく、前述したような重要資料への適用が実現すれば、日本の歴史や文化に関する理解は飛躍的に深まる。

分析対象資料としては、錆化した青銅器のほか、表面処理が行われていた金銀製品などを予定している。

本共同研究は、理系文系の分野を超えるだけではなく、大型加速器による研究利用の可能性を大きく切り開き、広義の歴史学に対して幅広く寄与することが期待できる。

NEWS

第2回 文理融合シンポジウム「量子ビームで歴史を探る -加速器が紡ぐ文理融合の地平-」

・日時:2019年 12月25日(水)~ 12月26日(木)
・場所:大阪大学 中之島センター

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第1回 文理融合シンポジウム「量子ビームで歴史を探る -加速器が紡ぐ文理融合の地平-」

・日時:2019年7月27日(土)~7月28日(日)
・場所:国立科学博物館(台東区上野公園)日本館2階 講堂

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物質構造科学研究所のトピックスに研究の様子が掲載されました

物質構造科学研究所のトピックス「負ミュオンで蛭藻(ひるも)金の謎を解く~文理融合プロジェクト」に研究の様子が掲載されました

物質構造科学研究所トピックスページ(外部サイト)

齋藤努教授 「平成29年度機構間連携・異分野連携研究プロジェクト」が採択され、共同研究が本格的に進められています。

本プロジェクトは、大学共同利用機関法人4機構合同で異分野融合・新分野創出を支援するための事業として期待されています。昨年度、「負ミュオンによる考古資料の非破壊内部元素組成分析」(主導機関:歴博)のFeasibility Study(予備研究)において、J-PARCを利用し、高エネルギー加速器研究機構との共同研究によって、非破壊のままで、館蔵の銅鐸や小判の内部の成分組成を調べることに成功しました。これらの資料は、いずれも、表層部と内部では成分組成に大きな違いがあるため、従来歴史資料に対してよく使われていた蛍光X線分析法では、正しい値を知ることができませんでした。これは、理系文系の異分野融合というだけでなく、歴史資料に対する大型加速器の研究利用の可能性を大きく切り開くものであり、広義の歴史学に寄与することが期待できる研究成果が得られたといってよいでしょう。今年度は、青銅鏡や二分判金など分析対象とする資料の幅を拡げていくとともに、より歴史資料に適した分析手法が得られるよう、改良に取り組んでいます。