基幹研究

近代日本社会の形成・展開についての学際的・国際的研究

学知と教育から見直す近代日本の歴史像

研究期間:2018年度~2020年度

研究代表者 樋口 雄彦 (本館研究部)
研究組織 石居 人也 (一橋大学大学院)
小川 正人 (北海道博物館)
落合 功 (青山学院大学)
木村 直也 (立教大学)
北原 かな子 (青森中央学院大学)
塩原 佳典 (畿央大学)
高木 博志 (京都大学)
谷本 晃久 (北海道大学大学院)
保谷 徹 (東京大学史料編纂所)
福岡 万里子 (本館研究部)
樋浦 郷子(本館研究部)
研究会ブログ https://gakuchi2021.exblog.jp/

研究目的

本研究は、幕末から明治期までを対象に、近代「日本」や国民としての「日本人」が生成される過程を、学知・教育・宗教・文化といった諸側面から総体的に見直すことによって、従来の個別分野毎による位置づけを超え、多様かつ多層なひとびとの生きる姿を描き出すことを目指す。

近世から近代に移行する時期においては、留学・移住など人々の動きのスケールがそれまでに比べ大きく変化した。加えて、西洋文化、宗教、「近代的」という概念に包含される学問や医療・衛生などの新しい考え方が日本に入り、人々の日常に大きな変容を迫った。そればかりでなく、「西洋」におけるジャポニスムの勃興や近隣国から日本への使節派遣など、日本と外国を往還する人・モノも飛躍的に増加した。

これらにおいてとくに着目すべきは、歴史事象も人々の日常も同様に、多数派から少数派へ、強者から弱者へと一方向的に流れるものではなく、あくまで双方向性、相互性の中で生成されるものであるという視角である。ときには緊張感に満ちた中での相互の渡り合いのなかで変容のプロセスが進行していった(あるいは進行できなかった)側面を描出し、その具体的な事象から全体像を展望することが必要である。

このような課題の考察は、「幕末から明治」、「近世から近代」のようにこれまで自明と思われる傾向にあった歴史区分や「日本史」像を再検討することにもつながるものといえる。さらに、当該時期のアジアを見渡せば、近世教育機関から近代学校への移行は、儒教の否定、科挙の廃止、手習塾(朝鮮の書堂、台湾の書房)の衰退などさまざまに通底する問題をはらんだものであったことがいっそう浮き彫りになるものと予想される。このように学際的、国際的に広範囲な目配りをした上で研究を実施し、国立歴史民俗博物館が創設以来の理念としてきた生活史の視点を重視して、研究成果として展示の高度化に資するものとする。

本研究は、1800年代半ばから1910年代までを対象に、「情報の伝播と具体的な人々のありかた」(積極的な受容や、消極的な受け止め、あるいは恐怖や拒絶、さらには他者への媒介など)に、以下2つの方法で接近する。第一に、館蔵資料を中心とする既存の文書群を、協働的に読み直し、新たな体系のもとで上記の具体相を示すことである。第二に、フィールドワークをしながら新たな資料を発掘し、これまでは少数であることなどを背景に「日本史」研究としての蓄積が多くはなかった事象(例えば樺太や千島のアイヌにとっての「日本」像や、学校教育や近代医療を受けられないひとびとにとっての「近代」、東北地方にとってのキリスト教(ロシア正教)信仰など)の掘り起こしと共有化を進めることを通じて、「外」から「宗教」や「学校教育」、「衛生」などの概念をもって迫られた信仰や学びのありかた、病や習俗祭祀の変容を浮彫りにすることである。こうした目的を達成すべく、AとB、2つの研究班を設け、両者を有機的に連携させながら共同研究をおこなう。A班は主に幕末から明治期を担当し、上記第一のアプローチから共同研究を実施する。具体的には、これまで歴博が収集してきた木戸孝允関係資料・平田篤胤関係資料・大久保利通関係資料・砲術関係資料・自由民権関係資料や館外の諸資料を、新たな見方で複眼的に読み直す作業が中心となる。上記第二の方法を主に担当するB班は、明治の「国民形成」期から大正期に及ぶ「帝国主義」時代までを展望し、フィールドワーク/新資料発掘とその共有化の作業を中心とする。

公開共同研究会のお知らせ

概要

画像をクリックするとチラシが見られます

名称:「御真影奉護」の歴史と現在―奉掲所・奉安庫・奉安殿―
日時:2019年3月23日(土)
場所:国立歴史民俗博物館管理棟大会議室
定員:40名
参加費:無料
主催:国立歴史民俗博物館基幹共同研究「学知と教育から見直す近代日本の歴史像」

※どなたでも参加できます。参加希望の方は、3月20日までにgakuchi@aol.comまで所属とお名前をお書き添えのうえお申込みください。

日程

13:00- 開会 趣旨説明
13:10- 樋浦郷子(国立歴史民俗博物館)「千葉県一宮小学校に見る奉護設備の歴史」
14:00- 佐喜本愛(九州産業大学)「奉安殿と地域社会〜福岡県京築地域を事例として〜」
15:10-  コメントおよび総合討論
    ゲストコメント 小野雅章(日本大学)
    総合討論 歴博基盤共同研究「学知と教育から見直す近代日本の歴史像」参加メンバー
    (落合功 木村直也 塩原佳典)
16:20-  閉会

開催趣旨

「奉護」とは、天皇、皇后、皇太后の写真や「教育勅語」謄本に対する荘重な取り扱いに対して用いられた言葉で、近代学校教育の歴史(とくに学校儀礼や「国民」の創成)叙述には欠かすことができない要素のひとつである。「奉護」のための設備として、桐箱、奉安庫と呼称された金庫型の保管庫、奉安殿と呼ばれた建造物などが、学校や官庁では不可欠の存在であった。しかし、それらの設備に対する史的研究蓄積は少ない。

今回「奉護設備」を討論しようとする具体的な理由として、以下を挙げたい。第一に、敗戦後の「御真影」(写真)の回収や国会の無効決議に対し、「奉護設備」の撤去については国内各地方自治体と軍政部の判断の余地が大きく、結果として地域ごとに撤去と存置の落差が存在したと考えられることである。

第二に、神道指令や国会決議と「無縁」であった占領期の奄美諸島と沖縄、旧植民地等では、なお「自由」な「奉護設備」の戦後史が存在したことである。例えば台湾の「奉安庫」は、国民党支配下において表面が塗り替え、彫り直されて利用され続けた事例や、文化財として現在まで修復保存がなされている事例を確認することができる。こうした「自由」さや役割の変化を、こんにちどのように叙述することが可能だろうか。

第三に、「奉護設備」の中には戦争遺跡という文脈で「現地を歩く」試みがおこなわれ、人々の観察の対象となっているものもあることである。こうした試みや認識はそれ自体として重要であるものの、戦争期以外も「奉護設備」が存在したという史実を後景にしりぞかせるおそれもありはしないだろうか。

国立歴史民俗博物館では2016年12月に、千葉県長生郡一宮小学校(旧制尋常高等小学校)の「奉護設備」を館蔵資料として受け入れ、今後の企画展示等を通じた公開を予定している。そのため、この資料に対するどのような説明の試みが可能になるのか、その歴史と現在をとらえ、あらたな語りの可能性を展望するものとしたい。

研究会等

概要

日程:2019年3月23日(日)
場所:国立歴史民俗博物館第二研修室、第一調査室、民俗整理室、大会議室

内容

午前10時半から第二研修室でメンバーとゲスト顔合わせおよび公開研究会打合せ、11時から第一調査室で資料熟覧、11時半から民俗整理室で「一宮木祠」を熟覧した。

午後は1時から公開共同研究会「御真影奉護」の歴史と現在―奉掲所・奉安庫・奉安殿―」を実施した。
2018年度第3回共同研究会概要

日程:2018年10月28日(日)
場所:北海道博物館

内容

北海道博物館の小川正人さんより「北海道開拓記念館」から「北海道博物館」への改組、アイヌにかかわる展示づくりに関する解説を頂戴したあと、展示室調査と意見交換を実施した。

2018年度第2回共同研究会概要

日程:2018年7月21日(土)~ 2018年7月23日(月)
場所:青森中央学院大学・東奥義塾高等学校

内容

7月21日(土) 青森中央学院大学開学20周年記念国際歴史シンポジウム「グローバル化の中の東北と近代移行期の「音」文化」に共催する形で、基調講演などに参加した。

7月22日(日) 同上シンポジウム2日目として研究と討論を実施し、歴博側の共同研究メンバーからは谷本晃久・木村直也両氏が、報告3本に対するコメンテーターをつとめた。

7月23日(月) 歴博共同研究のメンバーのみで東奥義塾高校図書館が所蔵する弘前藩校旧蔵古典籍の調査・閲覧を実施した。

2018年度第1回共同研究会概要

日程:2018年5月13日(日)
場所:国立歴史民俗博物館

内容
共同研究の趣旨説明
共同研究員の自己紹介
研究の今後の進め方について
次回の研究会(青森でのシンポジウム)について
総合展示室第3室・第5室・第6室の現況確認