人間文化研究機構連携研究

文化資源の高度活用

中世近世の禁裏の蔵書と古典学の研究-高松宮家伝来禁裏本を中心として

(研究代表者 本館 歴史研究系 吉岡眞之)
研究期間:平成17年度~平成20年度

研究代表者 吉岡眞之 (本館・研究部)
研究組織 小川剛生(国文学研究資料館)
久保木秀夫(国文学研究資料館)
井原今朝男(本館・研究部)

研究目的

中世・近世を通じて、「禁裏」(建造物としての「内裏」という意味ばかりではなくて、いわゆる公家社会の核に位置するものとして捉える)は、当代の学芸の中心であり、かつ地方への文化伝播の拠点でもあった。政治的な実権を喪失した室町時代以後において、むしろその意義は増大する。実際には地下と呼ばれる人々に、文化の主たる担い手が移っても、禁裏に温存されている王朝の遺産が常にその規範であったからである。こうした公家の文化を支える土壌であり、かつ他者へ向けての発信の具とされたのが、禁裏及び諸家の文庫に蔵されている書物であった。

研究は、室町時代後期から江戸時代前期にかけて形成された禁裏及びその周辺の蔵書群を主たる対象とする。とりわけ宮内庁書陵部・東山御文庫とともに、禁裏本を伝襲してきた国立歴史民俗博物館(以下、歴博)蔵の典籍コレクションに対し、当代の古典学の成果としての蔵書形成という視点から目録学的研究を行うことで、その有効な活用と、広く中世近世の歴史学研究・文学研究への寄与を目指す。