共同研究:漢代画像石墓の画題配置と地域性

歴博共同研究

共同利用型共同研究

漢代画像石墓の画題配置と地域性

研究代表者 岩﨑 志保(岡山大学文明動態学研究所/考古学)
館内担当教員 上野 祥史(本館研究部 考古研究系)

研究目的

申請者は漢代画像石墓の構造分類と編年を基軸とし、墓葬に表された被葬者の階層性に着目した検討を進めている。画像石墓には時期・地域ごとに特徴が認められることは既に知られている。今回対象とする貴館所蔵資料は、画像石墓の5つの分布域のうち2地域のものであり、山東省の82点、陝西省北部の104点の拓本資料である。

申請者は、これまでの研究により単体の画像石であっても墓室内の配置を想定することが可能であること、また、画題内容によっても配置推定ができることを指摘している。この配置と画題内容には、被葬者の生前の生活や職歴のほか、当時の思想等が反映されており、現物がなくても、原拓の熟覧により、細部の観察や凹凸の深度を確認することが可能である。つまり原拓は一次資料ではないが、画像石研究にとっては非常に有益な資料となり得る。さらに原拓の3D撮影により画仙紙に残る凹凸を捉えて分析できないか、本研究で試みたい。

貴館所蔵画像石拓本は、現在、館蔵資料データベースで概要が公開されているのみであり、詳細が不明である。本研究により詳細を分類し、編年的位置づけを行い、リストの公開ができればより多くの研究に資することができよう。特にA584群については複数墓の構造復元可能な拓本が揃っており、セット関係を抽出、検討できる点で貴重な資料である。墓構造分析の点からも重要視している。

また本研究により、山東と陝西北部での題材の相違、画題配置から見える死生観の相違などの地域差、あるいは、漢代説話と画題の関連等、いくつかの視点から背景となる漢代社会の動態に迫りたいと考えている。

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