共同研究:白亜紀末の天体衝突クレーター内の岩石に記録されたストロンチウム同位体変動を探る
共同利用型共同研究
白亜紀末の天体衝突クレーター内の岩石に記録されたストロンチウム同位体変動を探る
研究代表者 | 山口 耕生(東邦大学/地球化学) |
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館内担当教員 | 若木 重行(本館研究部 情報資料研究系) |
研究目的
生物の大量絶滅をもたらした約6550万年前の白亜紀末の天体衝突のクレーターの形成機構と、後の環境大激変と復活過程を探るべく、国際深海科学掘削計画によりユカタン半島北部に埋没するクレーターから岩石が掘削された。この全長約800mの掘削試料は、下〜中部が天体衝突により破砕された大陸地殻と衝突溶融岩、上部が大規模津波堆積物と堆積岩(主に炭酸塩岩)である。この貴重な岩石試料を用いて、以下の2件の研究を計画している。
1)炭酸塩岩が記録する海洋のストロンチウム(Sr)同位体組成の変動の高時間解像度での解明
白亜紀末期の海洋の溶存Srに、衝突天体および天体衝突に起因する衝突地点の大陸地殻の激烈な熱水変質によって放出されたSrが加わり、海洋のSr循環が擾乱を受けた。この変動の記録を従来にないレベルの高時間解像度で記録するクレーター内の最上部を埋めた炭酸塩試料を対象に、海洋Sr循環の復活過程を解読する。
2) 変質花崗岩が記録する大規模熱水変質によるSr同位体組成(87Sr/86Sr比)の変動の解明
天体衝突時の強烈な圧縮と直後の減圧時の物理的作用および強烈な熱水変質によって、大陸地殻から大規模な元素の溶脱が引き起こされ、非常に高い空隙率(約10%)が形成された。この変質花崗岩のSrの量と同位体組成に着目して、花崗岩から溶脱されたSrが、当時の海洋のSr循環に与えた影響を定量的に把握する。