共同研究:博物館収蔵庫および周辺空間の温熱環境と空調制御に関する調査

歴博共同研究

共同利用型共同研究

博物館収蔵庫および周辺空間の温熱環境と空調制御に関する調査

研究代表者 伊庭 千恵美(京都大学大学院)
館内担当教員 島津 美子(本館研究部 情報資料研究系)

研究目的

博物収蔵室などの収蔵施設では貴重な文化財資料が保管・活用されているため、一般的なオフィスや住宅等と比較し、厳格な温湿度管理が求められる。建物側での外気の影響を低減する工夫として、窓の日射遮蔽や、熱的緩衝のための二重壁構造などをもつ施設が造られてきた。現在では、多くの収蔵施設において空調設備が用いられているが、建物構造とのミスマッチ(収蔵室の断熱・気密性、二重壁構造における温湿度制御点の不適切な配置、収蔵室以外の室での換気設備による圧力バランスの乱れ)、経年による設備の劣化や施設内の室の用途変更、運用コスト削減のための空調の間欠運転、モニタリングのための機器や環境管理に関する専門家の不足などにより、適切な温湿度管理が行われていない場合がある。申請者は、収蔵室・展示室および資料が移動する空間の温湿度管理の問題点を整理、必要に応じて改善方法の提案、設計ガイドラインへの提言を行うことを目的に、様々な規模や運営母体による博物館・美術館施設における温湿度環境や空調運転に関する調査を行っている。国立歴史民俗博物館の収蔵室では空調設備の専門家による常時空調運転がなされており、収蔵資料の種類によっても温湿度の設定を変えるなど、精緻な環境管理がなされていると考えられるが、竣工から40年経過しており、近年の収蔵資料の保存環境に関する考え方との齟齬も生じ始めているものと考えられる。収蔵庫のみでなく、収蔵資料を移動させる空間も含め、現状の温湿度環境を把握することで、現代的な保存環境に合致しているかなどを検証する。また、大規模収蔵庫における設定温湿度と、それに伴う収蔵庫内の空気の流れを把握することで、収蔵資料 に適切な保存環境が整備できているかを検討する。温湿度データの収集および解析は、2022年4月より大学院進学予定の当研究室学生:北田綾とともに実施する予定である。これらの成果は、必要に応じて保存環境整備の具体的対策に資するものと思料される。

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