共同研究:中世日本の地域社会における都市の存立と機能の研究

歴博共同研究

基盤研究

課題設定型共同研究

中世日本の地域社会における都市の存立と機能の研究

  氏名(所属/専門分野/分担課題)
研究代表者 田中 大喜(日本大学文理学部/日本中世史/統括・都市と領主権力)
研究組織 荒木 和憲(九州大学大学院/日本中世史/都市(流通)ネットワーク)
小野 正敏(国立歴史民俗博物館名誉教授/中世考古学/都市と領主権力)
佐々木 健策(小田原市文化財課/中世考古学/戦国期城下)
鈴木 康之(県立広島大学地域創生学部/中世考古学/都市(流通)ネットワーク)
中島 圭一(慶應義塾大学文学部/日本中世史/都市と領主権力)
三枝 暁子(東京大学大学院人文社会系研究科/日本中世史/都市と村落)
天野 真志(本館研究部/日本近世史/近世・近代資料の分析)
土山祐之(本館研究部/日本中世史/都市の消長と気候変動)
松田 睦彦(本館研究部/日本民俗史/都市と村落)
村木 二郎(本館研究部/中世考古学/都市と村落)

研究目的

本研究は、中世の文献資料上に「宿」・「津」・「湊」・「泊」といった言葉で現れる、地域社会において恒常的な物流が行われた集散地を都市と把握し、その存立と機能のあり方を具体的に明らかにすることを目的とする。地方に成立したこれらの中小都市は、相互に結びつくことで流通ネットワークを形成し、12~15世紀においては荘園領主が集住する京都や鎌倉への求心的な流通構造をともなう荘園制という社会体制を、16世紀においては地域国家の様相を呈した大名の領国体制を下支えした。したがって、地方の中小都市は中世社会のなかで一貫して大きな位置を占めていたといえ、その存立と機能の究明は中世社会の実態と構造の解明にも直結する重要な課題となる。

都市は単独では存立できない。規模や役割の異なる都市が水陸の交通路によって結びつけられ、単独の都市としては不足する機能を相互に補完する形で、都市のネットワークを形成することで存立しえたのである。そこで本研究では、地域社会に形成された都市ネットワークの実態を追究することで、地方都市の存立の様相を究明する。その際、留意すべきは、そこには近郊の村落も組み込まれたという事実である。

そもそも都市自体、村落と未分化だったと指摘されている。すなわち、地方都市の住人には近郊村落の百姓を兼ねる者がいた。また、地方都市は、近郊村落の百姓にとって交易の場であるとともに、労働力の提供=稼ぎの場、情報収集の場、そして逃亡(抵抗)の場でもあった。先行研究が明らかにしてきた、このような都市と村落との有機的な結びつき=共存・補完関係にも留意して、地方都市の存立の様相を究明する。そして、この作業を通して、地域社会における都市の機能についても、民衆の生活実態と関わらせながら明らかにする。

なお、地方都市の多くは、その地域の領主層の開発によって成立し、その交易機能は領主権力による「平和」保障のもとで維持された。地方都市の存立と持続には領主の介在も不可欠だったのであり、都市と領主権力との関係も本研究の重要な課題となる。戦国期になると、領主(大名)は先行する地方都市に寄生する形で城下を形成することが知られており、この課題は戦国期城下も射程に入れて進めたい。

本研究では、以上の課題を、文献・考古両資料と先行研究の蓄積に恵まれた東国と西国の具体的な地域の事例に即して追究する。すなわち、東国では上野国世良田宿を、西国では安芸国沼田市をフィールドに設定し、①中世の文献・考古両資料の精査による基礎データの収集・分析、②近世・近代資料(地誌・絵図等)の精査と現地調査による地理的景観の復元および領主拠点との関係の分析を行い、①・②の成果の総合化によって目的にアプローチする。

研究会等

概要 日程:2023年5月18日(木)~5月20日(土)
場所:広島県三原市
内容 安芸国沼田荘沼田本郷・船木郷・真良郷故地での水利灌漑調査・聞き取り調査、および米山寺・御調八幡宮の宝物調査・撮影を行った。

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