江戸の都市特性から見た浮世絵風景画の形成

科研費研究

基盤研究(C)一般

江戸の都市特性から見た浮世絵風景画の形成

研究代表者 大久保 純一(本館・研究部)

研究目的

歌川広重を中心とした江戸末期の浮世絵風景画の成立を、江戸という都市の特性との関わりから考察する。浮世絵風景画の形成に関しては、従来、西欧の透視図法の流入とその咀嚼・吸収、合成顔料のプルシアン・ブルーの輸入といった主として絵画技術や材料の観点と、旅行や行楽への関心の高まりといった社会背景との関わりの中で説明されてきた。しかしながら、本研究では風景画を生み出す土壌である都市としての江戸の特性、すなわち江戸城を幾重にも囲む堀や広壮な大名屋敷とその内部の大名庭園という、武家の都としての都市の構造や景観が、広重の「江都勝景」や「名所江戸百景」などの名所絵や一部の源氏絵、あるいは油彩画のマチエールを模した民衆絵画である泥絵などの主題や風景描写を規定する上で大きな土壌として作用し、また透視図法を駆使した構図や、プルシアン・ブルーを多用する配色などにも影響を与えた可能性について考察する。