共同研究:洛中洛外図屏風を用いたAR環境教育キット作成に向けた探索的調査
共同利用型共同研究
洛中洛外図屏風を用いたAR環境教育キット作成に向けた探索的調査
| 研究代表者 | 堀 さやか(大阪大学工学研究科国際交流推進センター/地球環境学) |
|---|---|
| 館内担当教員 | 大久保 純一(本館研究部/日本近世絵画史) |
研究目的
本研究では、洛中洛外図屏風に書かれている人物(特に、鴨川周辺にいる人物)を抽出し、当時の水辺周辺の生活様式を知ることで、その行動の意味と歴史的背景についての学術的情報及び、データ収集を行う。洛中洛外図屏風には、戦国時代の京の町の景観が活き活きと描かれている。私は水ガバナンスを専門としているが、日本の水環境教育が進まない現状に苦慮してきた。水を飲むことが当たり前すぎて、自分たちが飲んでいる水がどこから来ているのか、知らない子供が増えていることに驚く。例えば、京都は、滋賀の琵琶湖から、京都、そして大阪へと流れている水を飲料水としていることを知らない。鴨川で漁をしていた過去も知らない。自然に無関心なのである。諸外国では、地元の水がどこから来ていて、過去、どのように管理されてきたのかを教育し、環境政策を考える際に、一般人でも、ある程度の基礎知識があり、円滑な政策議論につながることが多い。そこで、日本独自の環境教材があっても良いのではないのかと考えた。具体的には、貴館蔵資料である洛中洛外図屏風の画像データ(可能であれば高精細画像データ)を用いて、本屏風から、当時の水周辺の生活を中心として、自然と共存する人々の姿を抽出する。加えて、その行動の生活習慣を理解し、現在の位置情報を推定し、そこに行けば、当時を体感できる、ARの技術を用いた環境教育の作成に必要なデータを収集し、資料を整理する。
研究成果の要約
貴館が所蔵する洛中洛外図屏風(歴博甲本)を題材として、洛中洛外図屏風を用いた水資源環境教育キットを作成する研究を実施しています。歴博甲本は、当時の生活資料として極めて貴重なものです。そこに描かれた名もなき人々は、現代でいうところの「エコな生活」している姿が描かれています。鴨川で泳ぐ人、漁業をする人、もちろん排ガスを出す車はありませんし、エアコンの室外機からの熱風もない世界です。エコなライフスタイルを教えてくれるヒントが数多く隠されている逸品です。地形の高い位置にある田では農夫が二人係で鴨川の水を汲み上げる様子が描かれています。本研究の最終目標としては、現風景と絵巻を重ね合わせることで、被験者の想像力を刺激する教材を作成したいと考えています。鴨川界隈に描かれた人々の生活を仮想映像に再現し、被験者に水が簡単に手に入らないものであること、水の大切さを考えてもらいたいと考えています。2021年度は研究を開始した1年目であり、史料の情報整理及び専門家に聞き取り調査を実施し、試験教材の開発を行いました。2022年3月には第1回実装実験を鴨川付近の図書館で開催いたしました。当初はVRゴーグルでの3D体験を想定した映像を編集して参りましたが、コロナ禍における感染予防の観点から、スマホを用いたARによる展示形式に変更いたしました。そして3月25日から27日に、京都河原町において実装実験を実施しました。今後は、実装実験を繰り返し教材の内容及び技術精度を向上させていきます。