共同研究:番方旗本家に関する総合的研究-大番士・儒者杉原家文書を中心に-
基盤研究
館蔵資料型共同研究
番方旗本家に関する総合的研究-大番士・儒者杉原家文書を中心に-
氏名(所属/専門分野/分担課題) | |
研究代表者 | 三野 行徳 (東洋英和女学院大学/近世・近代史/明治維新と杉原家) |
研究組織 | 小川 和也 (中京大学/日本思想史/儒学者杉原平助の研究) 工藤 航平 (東京都公文書館/日本教育史/杉原家の初等教育) 野本 禎司 (東北大学東北アジア研究センター/日本近世史/大番士としての杉原家) 小池 駿介 (千葉県立文書館/日本近世史/基礎史料の編さん) 髙橋 喜子 (国立公文書館/日本近世史/武家としての杉原家) 高久 智広 (関西大学文学部/日本近世史/大番士としての杉原家) 中谷 正克 (日本銀行金融研究所アーカイブ/日本近世史/武家としての杉原家) 浦木 賢治 (静嘉堂文庫美術館/日本美術史/狩野派絵画研究) 小粥 祐子 (東京都公文書館/日本建築史/拝領屋敷研究) 梁媛淋 (学識経験者/日本近世史/儒学者杉原家の研究) 髙木 まどか (国文学研究資料館/日本近世史/旗本家におけるジェンダー) 久留島 浩 (本館研究部/近世・近代史/幕末官僚制) 福岡 万里子 (本館研究部/対外関係史/杉原家と条約締結) |
研究目的
本研究は、旗本杉原家を対象に、近世の番方旗本家の存立状況を復元的に検討することを目的とする。
国立歴史民俗博物館所蔵幕府儒学者杉原平助関係史料は、江戸幕府旗本杉原家に伝来した史料群である。史料群名に「儒学者」とあるが、杉原家は江戸開幕以来、代々「大番士」を勤めている。昨年度に行った予備調査の結果、杉原家文書の重要な特徴は(1)番方旗本として類例のない大規模史料群であること、(2)旗本の中で最も人数の多い階層(200俵)の旗本家であること、(3)大番士の日常業務や生活に関わる日記類が多数残されていること、(4)昌平黌儒者となって幕末外交に携わる杉原平助を輩出し、平助の学問や職務に関わる史料が多く残されていること、(5)明治維新期・維新後の史料が残されており近代士族の研究が可能であること、(6)初等教育や絵画、屋敷に関する史料など、旗本家を復元的に研究する史料が残されていることが判明した。後述するとおり、残存状況の厳しい旗本家史料にあって、特筆すべき特徴ということができる。
本研究の目的は、研究資源として以上のような価値を持つ杉原家文書を素材に、近世後期の番方旗本家について、総合的・復元的に検討することである。代表者はこれまで、国内の旗本家史料を捜索して研究を進めるとともに、現在、臼杵藩宗門方役所伝来史料(人間文化研究機構日本関連在外資料調査研究・活用「バチカン図書館所蔵マリオ・マレガ収集文書調査研究・保存・活用」)及び仙台藩家門亘理伊達家文書(科研「明治初年武家の北海道移住に関するアーカイブズの復元的研究」)の2つの武家文書に関する共同研究の事務局を勤めており、そこで培った武家文書への総合的・復元的アプローチ方法を杉原家文書にも活用できると考える。
具体的には、以下の4つの研究課題を設定し、近世~明治期の旗本家の実像を明らかにしたい。
(1)旗本・士族杉原「家」の研究:旗本の中核を占める階層である杉原家を素材に、家の継承・教育資本の形成・屋敷地の活用など、「家」に即した近世初期から明治期までの研究
(2)大番士杉原家の職務に関する研究:大番士の職務に関する史料を中心に、江戸幕府の官僚制・軍団の構成員の日常を復元的に検討し、幕藩官僚制の基礎的研究を行う
(3)儒学者・外交官杉原平助の研究:杉原平助による儒学研究・教育・著述と、儒者・外交官としての職務を検討し、幕末期の対外関係における儒学者の占める位置を研究する
(1)(3)は、杉原家の個性に着目した研究である一方、(2)は、江戸時代の幕藩官僚制の基本的な仕組みの解明に迫る、普遍的な研究課題である。以上の3点を通じて、近世後期~明治期の旗本家を復元的に研究するとともに、
(4)杉原家文書のアーカイブズ学的研究と研究資源化:2000点を超える杉原家文書の構造について、意図的に残された知の集積体(アーカイブズ)という視点から分析するとともに、主要史料の翻刻など研究資源化を行う
を設定し、杉原家文書が本共同研究を終えた後も、さまざまに活用される途を模索したい。併せて、国内で既に確認されているいくつかの旗本家史料について、実地調査を行い、旗本家文書の比較検討を進める。
以上の研究課題を通じて、近世~明治期を生きた旗本家を復元的に検討することが、本研究の目的である。
シンポジウム(公開共同研究会)のお知らせ
概要 | 名称:旗本杉原家の世界―大番士・儒者・屋敷・絵画― 開催日時:2022年2月27日(日) 13時00分~16時30分 開催場所:オンライン(zoom)※要事前申込 2月25日(金)締切 参加費:無料 主催:国立歴史民俗博物館共同研究「番方旗本家に関する総合的研究-大番士・儒者杉原家文書を中心に-」(代表:三野行徳)開催概要(PDF) |
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開催趣旨 |
本シンポジウムは、旗本杉原家に伝来した2000点以上にもおよぶ資料「杉原家文書」についての3年間の共同研究の成果をいくつかの切り口から紹介し、江戸時代を生きた旗本家の複合的な視点から検討するとともに、旗本研究や旗本の資料環境のこれからを考えることを目指すものである。 杉原家文書(国立歴史民俗博物館所蔵幕府儒学者杉原平助関係史料)は、江戸幕府旗本杉原家に伝来した史料群である。史料群名に「儒学者」とあるが、杉原家は江戸開幕以来、代々大番士を勤めていた。杉原家文書・旗本杉原家の特徴は(1)番方旗本として類例のない大規模史料群であること、(2)旗本の中で最も人数の多い階層(200俵)の旗本家であること、(3)大番士の日常業務や生活に関わる日記類が多数残されていること、(4)昌平黌儒者となって幕末外交に関わる杉原平助を輩出し、平助の学問や職務に関わる史料が多く残されていること、(5)明治維新期・維新後の史料が残されており近代士族の研究が可能であること、(6)初等教育や絵画、屋敷に関する史料など、旗本家を復元的に研究する史料が残されていることである。アイテム数2000点以上、目録件数5000件以上に及ぶ杉原家文書は、明治維新にともなう混乱や東京の戦災によって残存状況の厳しい旗本家史料にあって、特筆すべき史料ということができる。 本共同研究の目的は、研究資源・文化資源としてこのような価値を持つ杉原家文書を素材に、近世の旗本家について、総合的・復元的に検討することである。共同研究では、以下の3つの研究課題を設定した。 ①旗本・士族杉原「家」の研究:旗本の中核を占める階層である杉原家を素材に、家の継承・屋敷地の活用など、「家」に即した近世初期から明治期までの研究 ②大番士杉原家の職務に関する研究:大番士の職務に関する史料を中心に、江戸幕府の官僚制・軍団の構成員の日常を復元的に検討し、幕藩官僚制の基礎的研究を行う ③儒学者・外交官杉原平助の研究:杉原平助による儒学研究・教育・著述と、儒者・外交官としての職務を検討し、幕末期の対外関係における儒学者の占める位置を明らかにし、併せて、旗本家に残された文化・学術資源を研究する ①③では、杉原家の個性に着目する一方、②では、江戸時代の幕藩官僚制の基本的な仕組みの解明に迫ることを目指した。以上の3点を通じて、複合的な視点から、近世~明治期を生きた旗本家を復元的に検討することが、本研究の目的である。 今回のシンポジウムでは、共同研究の成果に基づき、日記や家譜、屋敷絵図や美術資料、儒学関係の資料など、残された史料の魅力から、江戸時代を生きた旗本家の世界を照射したい。 |
日程 |
13:00 開会 司会:野本禎司(東北大学) |
研究会等
概要 | 日程:2021年5月23日(日) 場所:オンライン(zoom) |
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内容 | 2021年度第1回オンライン研究会 役職斑 小池駿介「杉原家文書と日次 総括」 平助班 浦木賢治「杉原家文書の絵画資料について-「画図百花鳥」、狩野派粉本ほか-」 三野行徳 「これまでの成果と課題」 全体打ち合わせ/グループミーティング |
概要 | 日程:2021年3月21日(日) 場所:オンライン(zoom) |
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内容 |
第3回オンライン研究会 家班 三野行徳「明治維新と杉原家(2)行政官支配期の季七郎」 |
概要 | 日程:2021年2月27日(土) 場所:オンライン(zoom) |
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内容 |
オンラインシンポジウム「旗本研究のこれまでとこれから―埼玉から旗本を考える―」 三野行徳「趣旨説明」 当日参加者 71名 |
概要 | 日程:2021年1月9日(土) 場所:オンライン(zoom) |
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内容 |
第2回オンライン研究会 中谷正克「番方旗本家の『家』・「家」・家と先祖・由緒」 |
概要 | 日程:2020年9月6日(日) 場所:オンライン |
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内容 |
本年度第1回となる本研究会では、本年度の各自の課題、共同研究の中長期的課題を共有し、本年度の研究活動を効果的に推進することを目的とした。 研究報告は、各班から家班:髙木まどか「杉原家の縁組」、役職斑:野本禎司「安政期における部屋住番入の実態-杉原季七郎を例に-」、平助斑:工藤航平「杉原家の初等教育」の研究報告があった。各報告とも、各班全体の課題を意識しつつ、個別の研究の射程を定めた報告であり、有意義な議論が為された。研究報告後、全体ミーティング、グループミーティングを行い、各班・各メンバーの本年度の課題を議論した。オンラインという制約のある研究会であったが、多くの成果を得ることができた。 |