シリーズ12
制作年:2009
制作担当者:小池淳一
筆記の近代誌 -万年筆をめぐる人々-(本編) カラー・日本語・52分 |
この映像は日本人の筆記の近代を担ってきた万年筆をめぐる技術と職人とを記録したものである。
万年筆は明治時代に輸入されはじめ、やがて大正時代になると国内でも生産が可能となった。国産の万年筆はろくろを用いて細長い軸を巧みに削り出す技術に支えられていた。ここではエボナイト、木材、セルロイドなどから胴軸やキャップを作りだし、ペン先やクリップをつけて万年筆が作られていく工程や、漢字・ひらがな・カタカナといった日本語の多様な文字をなめらかに書くためのペン先の調整、研磨の方法、さらに長期の愛用に耐えうる美しい装飾や修理、調整の技術、そして販売にあたっての細やかな心遣いの様子を映像で記録して、日本人の筆記環境を支えてきた「わざ」を描いてみた。 ここに映し出されているのは万年筆という道具に集約される「書く」という行為をめぐる近代の技術の姿である。そしてこれは一本の万年筆に込められる職人の技と心とを描こうとする映像民俗誌の試みでもある。 |
筆記の近代誌 -万年筆をめぐる人々-[列伝篇] カラー・日本語・99分 |
[列伝篇]には万年筆をめぐる技術を保持している人びとの姿を、具体的な作業の様相に着目して記録している。
ここでは、ろくろや旋盤を用いて万年筆を作り出してきた加藤清さん(カトウセイサクショカンパニー)、田中晴美さん(万年筆博士)、川窪克実さん(川窪万年筆店)、独自の軸装飾を編み出した久保田禮禧さん(萬年筆の山田)、金属加工技術を駆使してペン先を修理する久保幸平さん(久保工業所)、さまざまな修理に対応する久保勝彦さん(中尾万年筆店)、藤井栄蔵さん(ユーロボックス)、そして一人ひとりの書き癖に合わせたペン先調整をする森山信彦さん(フルハルター)の8人を取り上げている。 [列伝篇]では、万年筆が生み出され、使われ、伝えられていくさまざまな場面を支える技術と精神とをあくまでも、その作業の実態に即して、映像と音声として記録し、さらに一人ひとりの肉声を添えながら描いている。 |