連載「歴史の証人-写真による収蔵品紹介-」

総合資料学 情報基盤システムkhirin

現在、国立歴史民俗博物館では、「総合資料学の創成」という事業を基幹ミッションとして実施している。また、これに関連して人間文化研究機構全体で「歴史文化資料保全ネットワーク」などの複数の事業が行われており、これらの全体のデータ基盤として位置付けられているのが、情報基盤システムである“khirin(Knowledgebase of Historical Resources in Institutes)”である。2019年12月現在、歴博所蔵の館蔵錦絵・聆涛閣集古帖(れいとうかくしゅうこちょう)の画像データ、1970年代に文化庁が全国に向けて実施した調査カード(歴史民俗調査カード)の目録と画像データ、千葉大学附属図書館が所蔵する主に近世の古文書である町野家文書、鳴門教育大学附属図書館が所蔵する同じく近世を中心とする古文書の後藤家文書などが同時に検索でき、画像の閲覧が可能になっている。これ以外に関連する科学研究費の研究成果や、館蔵資料目録などの検索も可能である。

khirinのロゴマーク khirinのマスコットキャラクターとURL

このシステムの大きな特徴は、単に多くのデータベースを統合検索できるだけではなく、データを「芋づる式に」探すことができる点である。あるデータベースのデータの一つをキーワードとして、他のデータベースのデータへと繋がっている。例えば安政二(1855)年の資料を見てみると、町野家文書には安政大地震の損害を書き上げた資料が出てくる。そこから、同じ年代のリンクをクリックすると、歴博館蔵の鯰絵(地震の際に書かれた錦絵)のデータを見ることも可能である。関東での当時の地震の様子を見ることができる資料である。一方で、徳島の後藤家文書について、年代のデータをクリックして探しても地震のことが書かれた資料はどこからも出てこない。このことから、安政二年の地震の被害の広がりが関東では明確に確認できるものの、四国までは及んでいなかったことがわかる。関東と四国の間のデータが増えてくれば、より詳細な状況が見えてくる。データを連鎖的に探すことで、例えば過去の地震の様子が見えてくる可能性もあるであろう。

khirinのトップページ検索画面

また、“khirin”は画像データについてIIIF(International Image Interoperability Framework)という仕組みを採用している。これは「国際的な画像の相互運用に関わる枠組み」と訳されるもので、例えば、千葉大学のビューアに歴博から画像を配信したり、逆に歴博のビューアで規格に対応した世界中の画像を閲覧することも可能となっている。この仕組みを利用することで、歴博の画像を国際的に流通させている。

安政2年の資料をkhirin上で比較したもの
左から千葉大学所蔵町野家文書、歴博所蔵錦絵、鳴門教育大学所蔵後藤家文書。
町野家文書と館蔵錦絵では安政江戸地震の様子が描かれるのに対し、後藤家文書ではその様子が見えない。

今後、さらに館蔵資料をはじめとする、国内外の資料情報や研究情報のデータ公開を進めていく予定である。そして、より画像を見やすくするための基盤となるページの構築や、よりわかりやすい資料情報のリンク、歴史資料の理解に即したデータモデルの構築、国際標準によるテキストデータの構築なども予定している。

皆様もこの“khirin”を使って思わぬ地域資料の発見などをしていただき、歴史の理解の一助としていただければ幸いである。

後藤 真(本館研究部/人文情報学)