吉祥(きっしょう)とは、良いきざし、めでたいしるしを意味する言葉です。
みなさんの身近なものから例をあげると、端午の節句の「鯉のぼり」の鯉(こい)は、吉祥に関わりがあります。登竜門(とうりゅうもん)という立身出世(りっしんしゅっせ)にかかわる言葉に表されるように、中国の黄河(こうが)の竜門という急な滝を登った鯉は竜になるという伝説(でんせつ)があります。
このことから、鯉には、子どもが元気に成長し、出世して立派な大人になって欲しいという吉祥の意味(いみ)がこめられているのです。
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瀑布鯉魚図(ばくふりぎょず) 楫取魚彦(かとりなひこ)筆 1769(明和6)年 |
上の画像は、今回の展示にある鯉の滝登りの図です。
私たちの生活の中には、この他にも吉祥を表す動植物があり、昔から絵画や工芸品(こうげいひん)に用いられてきました。例えば松竹梅(しょうちくばい)や鶴亀(つるかめ)です。
今回の展示では、歴博所蔵(れきはくしょぞう)の絵画や工芸品(こうげいひん)の中から吉祥に関わるものをよりすぐり、それらにこめられた吉祥の意味を読みといてご紹介します。ぜひごらんください。
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梅樹下草模様小袖(ばいじゅしたくさもようこそで) 江戸時代中期~後期 きびしい寒さの中で花を開く梅は、吉祥のシンボルです。その生命力から長寿(ちょうじゅ)と子孫繁栄(しそんはんえい)を表しています。 これは琳派(りんぱ)の絵師、酒井抱一(1761~1828年)がえがいた小袖(和服の元となったもの)で、鳥取藩主(とっとりはんしゅ)の池田家に伝わるものです。 |
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龍宮城模様一つ身(りゅうぐうじょうもようひとつみ) 江戸時代後期 浦島太郎(うらしまたろう)の物語にある龍宮城(りゅうぐうじょう)も、永遠(えいえん)や長寿(ちょうじゅ)を意味する吉祥のシンボルです。 |
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牡丹獅子置物(ぼたんじしおきもの) 美濃・魁翠園製(かいすいえんせい) 1853(嘉永6)年頃 (国立歴史民俗博物館蔵) 能(のう)の演目(えんもく)「石橋(いしばし)」の場面です。菩薩(ぼさつ)の使いの獅子が石橋の上にあらわれ、美しいボタンの花にたわむれて舞(ま)う長寿を祝うおめでたい場面です。 |