発掘調査報告書に掲載されている
放射性炭素年代測定例が検索できます。
日本列島の全ての都道府県データが公開されています。
約4万4千件のデータから必要な情報を探してみましょう。
考古学では遺跡や遺物の「年代」を決定するためのいくつかの方法がありますが,「年代」には大きく分けて二つの種類があります。ひとつは「相対年代」,もうひとつは「絶対年代」です。
「相対年代」は人工遺物や遺跡の年代があるものより「古いか,新しいか」を決定する方法です。正確な暦を示すものではありません。相対年代では層位や型式が示標となります。これに対して「絶対年代」は,ある遺物や遺構,遺跡に対して数値的な年代を与えるものです。
放射性同位体が放射壊変によって減少することを利用して「絶対年代」を得る方法が「放射年代測定法」です。ウラン(U)やトリウム(Th),ベリリウム(Be),などを用いた放射年代測定法がありますが,考古学者が最も頻繁に利用するのが過去5万年間に適用可能な放射性炭素年代測定(14C年代測定,炭素14年代測定)です。
放射性炭素(14C)は炭素の同位体の一で,天然に存在する放射性元素です。自然界の炭素には12・13・14という重さの異なる同位体がありますが,炭素14はその中で一番重い炭素で,炭素12の1兆分の1と極めて少ない数しかありませんが,大気中で生成されて地球上には広く存在し,食物連鎖によって生物に取り込まれます(右図)。
遺跡に残る骨や燃料に使った木炭,建物の柱,食べカスの貝など,すべての有機物に炭素が含まれています。そのため,放射性炭素年代測定法は考古学の分野で,最も広く使用されているのです。
炭素14は放射壊変によって自然に減少していきます。その際,1粒のベータ線を発生し,窒素に変化していきます。放射性元素が元の数の半分に減少するのにかかる時間を「半減期」といいます。炭素14の半減期は5730年です(計算上はLibbyの5568年を使用します)。5730年経過すると炭素14の数はもとの数の2分の1になり,11460年後には4分の1に,17190年後には8分の1になります。このようにして放射性炭素年代が得られた後,「暦年較正」によってより正確な暦の年代を得ることができます。
現在,年間7000件以上の遺跡発掘調査が日本全国で行われています。考古学において遺跡・検出遺構・出土遺物の時代や時期を決定することは最も基礎となる作業であり,層位学的な検討と出土遺物を考古学的な相対編年に位置づける作業が行われます。その一方で,理化学的な年代測定による数値年代の把握も極めて重要で,加速器質量分析法(AMS法)による放射性炭素年代測定が普及した現在では,各都道府県や市町村の遺跡発掘調査においても多数の放射性炭素年代測定が実施されています。これらの放射性炭素年代測定事例は考古学にとっても,人類学や歴史学,第四紀学などの関連科学にとっても貴重なデータですが,一人の研究者がその全てを把握するのは到底不可能な数の遺跡発掘調査報告書が毎年刊行されているのが現実です。
そこで,国立歴史民俗博物館の図書室にある約6万冊の遺跡発掘調査報告書の悉皆調査を行い,放射性炭素年代測定の分析例がある報告書を抽出し,データベース化する作業を進めています。このデータベースによって,考古学における年代研究がより一層進むことを期待します。