基盤研究 (C) 一般

幕末世相取材錦絵の美術史的研究

研究期間:2017年度~2019年度

研究代表者 大久保 純一(本館・研究部)

研究目的

幕末の風刺画や世相に取材した錦絵を、伝統図像や主題との関係、あるいは個々のモティ―フが担う意味についての先行作例など、主として絵画史的観点から分析を加える。これまでの錦絵を中心とした浮世絵研究では、美人画、役者絵、名所絵が錦絵の三大ジャンルとされてきたが、現存する作品数や幕末の諸記録を見ると、幕末動乱の世情を背景に、世相諷刺、あるいは流行り病や災害など世情に取材する錦絵の出版は激増し、上述の三大ジャンルに匹敵、もしくは凌駕する市場を確立している。幕末政治史や社会史では研究対象とされてきながら、美術史の方面では芸術性に乏しいという理由で看過されてきたそうした錦絵を、先行する浮世絵作品、古絵巻や版本挿絵の図像伝統を踏まえ、そこにいかなる意味付与がなされたにかなど絵画史上の位置づけを試み、また従来世相諷刺とは認識されてこなかった作品の新たな掘り起こしも試みる。