共同利用型共同研究

「三大考」論争関係資料の調査研究

研究期間:2023年度

研究代表者 三ツ松 誠(佐賀大学地域学歴史文化研究センター/日本思想史)
館内担当教員 天野 真志(本館研究部)

研究目的

『古事記』の記述と西洋天文学知とをつなぎ合わせ、宇宙の成り立ちを図解した服部中庸「三大考」は、本居宣長によって『古事記伝』の附巻とされ、世に広がった。そして文献注釈を旨とする学者からは批判の的となり、『古事記伝』本編とは異なり、現代の上代文学研究者から先行研究とはみなされていない。他方、尊王攘夷思想の一源流として知られる平田篤胤の出世作『霊能真柱』は、「三大考」を先行研究としつつ、宇宙の成り立ちそして死後世界の在り方について代案的解釈を提示する作品であり、復古神道の立場に基づく神道国教化政策にもつながるものとして、画期的な意味を持った。「三大考」は、国学の文献学的展開と宗教的展開の分かれ目に位置する作品なのだ。

こうした「三大考」批判派と篤胤をはじめとする継承派との間での論争は、「三大考」論争と呼ばれて古くから研究者の注目を浴びてきた。近年の議論としては金沢英之『宣長と『三大考』』(笠間書院、2005)があり、服部中庸の草稿を紹介し、論争関係書目録を付すなど、研究の今日的水準を示している。しかし残念なことに、国立歴史民俗博物館所蔵平田篤胤関係資料の閲覧の途が幅広い研究者に開かれたのは、当該書の刊行より後の時点でのことだった。論争の一方の極であった平田篤胤とその後継者に関する資料には、この問題に関する一次史料が少なからず含まれており、研究をさらに進める可能性が秘められていると見込まれる。

本研究の課題は、金沢氏らの先行研究を踏まえ、平田篤胤関係資料から「三大考」や国学宇宙論に関する著作・草稿・書簡について、資料情報の整理また紹介を行うことで、「三大考」論争研究をさらに発展させる基礎を築くことにある。