共同利用型共同研究

近代日本農村における家事科教育に関する歴史的研究

研究期間:2023年度

研究代表者 徳山 倫子(京都大学農学研究科/農業史・教育史)
館内担当教員 樋浦 郷子(本館研究部)

研究目的

申請者はこれまで、近代日本の農村における未婚女性への教育に関する歴史研究を行なってきた。教育制度が整備された1900年代以降、初等教育を終えた後に高等女学校等の中等学校に進学することができない大多数の農村女性への教育の場として、実業補習学校(1935年以降は青年学校)や、社会教育機関である処女会(女子青年団)、私設の裁縫塾、農会などの団体による啓蒙活動など、多様な設置主体による教育活動が展開されつつあった。

農村女性への教化・啓蒙の現場では、農村の生活改善を目的とした家事教育や、都市への憧れを戒め農村の主婦になるように諭す訓育がなされる場合があったことを申請者は明らかにしてきたが、かかる教育方針は地域住民との摩擦も生むことにも繋がった。本研究では、農村における家事教育に着目し、教育者が掲げる理念や教育実践と地域住民の要望のズレについて、当時の教育雑誌や郷土史料の分析から明らかにすることを目的としている。

分析方法としては、家事科および裁縫科教員の投稿が掲載された雑誌『家事及裁縫』や、地域社会で家事科教育を担った教員たちが執筆を担った教育資料を中心に、学校教育に着目して分析を行う。こうした史料の分析を通して、教科書の示す指導内容が農村の生活実態と合わない中で、いかに現場に即した教育を行うべきかと苦戦する教員の姿を描き出したい。ただし、学校教育に関する史料の分析のみでは、初等教育の就学率や実業補習学校への進学率が男子と比較して低調であった農村の女子教育の全体像を見通すことができない。そこで、関連史料として社会教育団体であった処女会の機関誌『處女の友』やその後継誌を閲覧し、社会教育と学校教育の教育内容や理念の比較も行いたい。かかる史料には裁縫塾などの他の女子教育施設との協力/対立関係に関する記述が散見されることから、これらの分析により農村における未婚女性への教育のありようの全体像を見通すことも期待できる。