共同利用型共同研究

『年中行事』の基礎的研究

研究期間:2023年度

研究代表者 堀井 佳代子(京都精華大学/日本古代史)
館内担当教員 小倉 慈司(本館研究部 歴史研究系)

研究目的

平安時代の内裏には、月日順に一年間に行うべき恒例の宴会・政務・神事・仏事を記した「年中行事障子」が置かれていた。宗教的儀式と政務とを区別することなく月日順に並べるスタイルは、その後の儀式書の枠組となり、この項目に儀式次第を書き加えるという形式で『九条年中行事』『小野宮年中行事』『年中行事秘抄』をはじめとする儀式書が成立する。また「年中行事障子」はその時々の儀式の変更を反映するものであり、適宜、記載内容の加除も行われたという。

これまでの研究では『続群書類従』所収『年中行事御障子文』を、11世紀頃の「年中行事障子」に書かれていた本文と見なし、その伝来の意義や後の儀式書への影響を論じてきた。しかし『続群書類従』の底本は明確ではなく、またその記載内容も11世紀には置かれていた国忌が記載されていない、細注が削られている等の、ある段階の「年中行事障子」の本文そのものとは言いがたい部分を含んでいる。そこで注目されるのが『年中行事』という書名で複数の家に伝来する写本である。『国書総目録』によると90余りが確認される。正月から十二月の年中行事を列挙しており、『年中行事御障子文』と同様の形式を示している。訓点を施すものもあり、これまで公家の諸家における有職故実の学習の跡を示すものとされ、内容が『年中行事御障子文』に比して少ないことから「抄出本」と見なされてきた。しかし11世紀以前の「年中行事障子」の姿を示している可能性が考えられる。まずは諸本の調査・翻刻を進めて、その異同を明らかにすることで、『年中行事』写本の系統をある程度確定することが必要である。その上で、儀式書の項目と対照させ、検討することで、記載内容の年代を確定させることができる。この作業を通して、『年中行事』という史料の性格を明らかにするとともに、「年中行事障子」との関わりを検討する。