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博物館訪問日誌 <2> イングランド編(ロンドン、チェスターを除く)


北部・中部イングランド(ヨーク、ヘイドリアンズ・ウォール、カーライル、ノッティンガム、リーズ、ハリファックス、リバプール、レスター、マンチェスター、ウォルソール、バーミンガム、オックスフォード、ケンブリッジ)
南イングランド(カンタベリー、ソールズベリー・ストーンヘンジ、ブライトン、ドーヴァー、ヘイスティングス、ポーチェスター、ポーツマス、ウィンチェスター)

<ヨーク York>
 1998年6月24日
ヨークミンスター York Minster <史跡>
 1998年6月24日昼訪問
 寄付£2 
 ヨーク大司教座のある大聖堂。ローマ時代からの複合遺跡だが、現在の建物は、13〜15世紀。壮大な建物はともかくとして、感心したのは、1967〜72年に発掘された地下の遺跡が、「ザ・ファウンデーションズ(基礎)」と称する展示施設になっていたこと。ここは£1,80の有料。階段を下りると、遺跡が8つのエリアに分けられて保存・展示されており、ローマ時代、サクソン時代など、現在の建物に先立つ時代の遺跡が見られる。各時代の建物を重ね合わせた図・模型や復原図も随所に用いられているので、わかりやすい。一部はローマ時代のバシリカ(政庁)と重なっており、後にローマ皇帝となるコンスタンティンはここにいた……などという説明は、地下で現場を目のあたりにできるだけに、実に迫力がある。
 塔の上にも登ることができ、こちらは£2。螺旋階段をひたすら登り、いったん屋根の上に出てまた登るので、相当怖い体験ができる。解説等の工夫は特になく、上まで登って景色(と大聖堂の屋根や尖塔群)が見れます、というだけのことだが、石を積んで積んでこんなものを作った人間の偉大さに感心。
 売店では、学校教育用の資料を販売していたので、『どうやって作ったのだろう(How was it done?)』(キーステージ2(小学校高学年)科学・技術用の教師用ブックレット、£3)と、『ローマ人・サクソン人・バイキング人』(ファクト・シート集、£1,50)の二冊を購入。他にも教材類は30種類くらいあり、郵便でも申し込めるようになっている。The Center for School Visits という部門の製作だが、 大聖堂がこれだけの資料を自前で用意していることにまた感心。

カースル(城)博物館 Castle Museum
 1998年6月24日(水)午後訪問
 大人£4,75 子供他£3,30 家族£14,15 ガイドブック£2,50  写真可
 かつてのヨーク城の場所にあるが、城の残存建物はクリフォード・タワーだけで、博物館の建物は、18世紀に建てられた監獄(男性用・女性用の両方)を改造したもの。ヨークシャー博物館、ヨーク市美術館、ヨーク市文書館と共に、ヨーク市の運営。
 中は、17世紀から1950年代までの各時代の部屋の復原(家具などは全部本物。暖炉の火の音、時計の音などもする)、台所、風呂などの生活史の展示、ヴィクトリアン(19世紀後半)、エドワーディアン(20世紀初頭)のそれぞれの町並みの復原(店の商品から街路の石まで、マネキン以外すべて実際に使われていたものを使って、架空の街を作っている)、武具、衣装、水車小屋、など多岐に渡る本格的な生活史博物館。
 面積広大で、ドクター・カークという収集家のコレクションが一つの基礎になっている由だが、本物を用いた環境復原的手法による展示は、なかなか見応えがある。難を言えば、やはり監獄の建物を流用しているため、随所に監獄本来の部分が出ていて、ちょっと紛らわしいことか。
 なお、ここの展示室警備員は、単なる警備ではなく、「アテンダント(付き添い係)」と呼ばれており、観客の案内を兼ねている。私が入ったときは、ちょうど日本語が少し分かる人が入り口近くにいて向こうから話しかけてくれ、比較的すいていたこともあって、結局大部分を日本語混じりで案内してもらってしまった。このLさんはまだ40台だろうとおもわれるおじさんだが、以前はフランス語の教師をしていたが、この方が面白いので博物館で働くようになった。日本語は本で自分で勉強した(やはり語学の才能のある人は違う)。『シークレット・ヨーク』という著書もあって、博物館の売店で売っているよ、とのこと。ことさらにガイドツアーなどするわけではないが、警備の人が案内もかねるというのは、なかなか賢いやり方。イギリスの博物館の警備員は時々横柄で感じが悪いことがあるが、ここはお客さんを大事にしてくれる感じで好感が持てる。
 開館は1938年、現在の年間入場者は35万人の由。

クリフォーズ・タワー Clifford's Tower <史跡>
 1998年6月24日(水)夕訪問
 大人£1,70 
 1068年ウィリアム征服王の築いたヨーク城の、円錐形の土盛りの上に乗った天守(キープ)部分。現在の建物は13世紀に石で作り直されたもの。イングリッシュ・ヘリテージの管理。四つ葉型の、ノルマン式城郭としては特異な形状。
 特に変わった整備はしていないが、解説パネルは復原図も用いてわかりやすい。
 ガイドブック(£2,95)も、やはり建物の復原図と復原地図が多く、すぐれた内容。日本語の簡易ガイドもあり。

ヨルヴィック・バイキング・センター Jorvik Viking Centre
 1998年6月25日(木)朝訪問
 大人£4,99 学生・老人£4,59 子供£3,99
 写真:復原部分不可、博物館部分フラッシュ不可(?)
 発掘されたヴァイキングの遺跡を復原したことで名高い施設。発掘の跡に、1984年開館。次項のARCと共に、ヨーク考古学トラストの所有だが、運営はヘリテージ・プロジェクトという会社が行っている。
 かなり混むと聞いていたので、朝一番で行くと、ちょうどヴァイキングの格好をしたおじさんが、近くの通りへ立て看板を運んでいるところだった。「あんた、ヴァイキングか?」「そうとも。面白いよ、見ていきな!」。場所は再開発でできたコッパーゲート通りの商店街の一画で、要するにその地下が遺跡博物館になっている。
 中へはいると、4人乗りの「タイム・カー」に乗せてくれる。音声解説は日本語もあり。各時代を象徴する無彩色の人形が並んだ「タイム・トンネル」を、発掘が始まった1976年からさかのぼっていくと、バイキング時代、948年10月のコッパーゲートに出る。街路、家庭、裏庭(トイレを使用中)、港の、人形がヴァイキング語で会話をし、「におい」もする中を、自動的に進む「タイム・カー」から解説を聞きながら見ていく。ガイドブックに「ここにあるものは、雑草に至るまですべて証拠がある」と豪語するだけあって、復原自体はなかなかの出来。しかし、あまりじっくりと見ている時間もなく、あれあれと思っているうちにここが終わると、続いて発掘現場の調査風景で、考古学者のおじさんが測量をしているところ。この現場は、先ほど見てきた復原と鏡の関係で対応しているという。
 もう終わり?という感じでタイム・カーを降りると、今度は保存作業室が復原されており、白衣を着た人形が顕微鏡を覗いたりして分析と保存の作業中。このコーナーを抜けると、遺物展示とパネル解説の部屋。次は、もう売店に出てしまい、さっきのヴァイキングおじさんが金属をたたいてお金を作っている。あれだけ名高い施設だから、まだまだ先があるのだろうと思うと、やっぱりこれで終わりで、意外に小規模という印象。
 売店では、ガイドブック(£?)、先生向けの解説書『エデュケーション・リソース・パック』(£10)、シート式の解説を綴じた『インフォメーション・パック』(£5)、タイム・カーの解説(50p)、その他ヴァイキング関係の教材など、資料類は大変豊富に用意されており、作りも丁寧で、教育施設としての配慮は十分うかがえた。
 外に出ると、まだ午前中なのに、もう行列が出来始めていた。

考古学資源センター Arcaeological Resource Centre
 1998年6月25日(木)午前訪問
 大人£3,6  写真可
 ヨルヴィック・ヴァイキング・センターから5分ほどの所にある、中世の教会の建物。体験学習で考古学の方法について学ぶことができる施設。「教会」のドアを開けてはいると、受付のお姉さんはちょっと怪訝な顔で「学校の団体が来ますがいいですか?」と聞かれる。個人客はあまり来ないらしい。自分は博物館職員でそう言う活動を見たいからその方がいい、というと、それなら結構、というわけで、中へ入れてくれる。なんだかずいぶん若いお兄さんが、交代で付き添ってくれ、色々なコーナーを説明しながらやらせてくれた。どんなことができるかというと、ヴァイキング・センターのガイドブック(巻末にここの解説もある)によれば、
1)陶器、骨、貝殻などの遺物を分類して、層位番号に従って並べる。
2)ヴァイキング時代の牛の骨と現代の牛の骨を比較する。
3)ローマ時代の皿、ヴァイキング時代の壺、中世の水差し、など色々な陶器の破片を分類する。
4)ヴァイキング時代の溜穴から出土した小さな骨とか貝殻とかを拡大鏡を見ながら分類し、過去の環境をどう復原できるか考える。
5)復原したヴァイキング時代の機織り機で布を織ってみる。
6)ヴァイキング時代の靴を縫ってみる。
7)羊の毛から糸を紡いでみる。
8)ヴァイキング時代のタイプの錠を鍵で開けてみる。
9)コンピューターによる収蔵遺物の検索。
といったもの。なるほど、これは個人客に一人一人説明しながらやらせたのでは大変で、団体向き。でも若いお兄さんたちは、時々「分類の答えは……えーとこれは自分もよく分からないけど……」となりながら、いやな顔もせずにつき合ってくれた。「上司」のMさんが時々来て説明してくれたが、このお兄さんたちは体験労働で来ているボランティアの人たちで、16才からいる。
 色々な人がボランティアで働きに来ており、今日は8人働いているが、年間150人くらいになる。イギリス以外からもかなり来ていて、話を聞くことのできたHさんはドイツのライプチヒから来ているという、高校生ではなくて23才の学生さん。博物館学を勉強しているが、ドイツの博物館はちょっとクラシカルなのでここに来た(そうそう、日本もそうなんです)。こういうことに関心があるなら、ハリファックスの「ユーリーカ(子供博物館)」に行くといいわ。と教えてくれて、このお姉さんとは話が合いそうだったが、あいにく次の団体が来てしまい、あ、ごめんなさい、次の仕事になったので、とあっちに行ってしまったのは残念。それにしても、若い人がたくさん働いているのはいい。職員は6人(常勤は3人)で、ボランティアには、一通り教えた後は、オン・ザ・ジョブで、先輩の仕事をまねさせて(シャドーイング)覚えさせる、とのこと。こういう内容なら、たしかにそれでつとまりそう。
 この時来ていた小学校の先生にも引き合わせてもらったが、ロンドンの近くから四日間ユースホステルを使った修学旅行に来ているそうで、私たちの若い頃の博物館はこうじゃなくて、ラベルに小さな字が書いてあるだけだったわ。今はこういう「ハンズ・オン」をさせてくれるけどね、とおっしゃっていた。
 Mさんのお話では、1990年にナショナル・カリキュラムができて、ハンズ・オンの必要性も述べられている。ここもその年にできた。年間約千グループ、3万人が来るが、問題は建物が狭いので24人以上になると混雑状態になること。外に連れ出して、「どの窓が古い?」と様式編年を考えさせたりしている。遺物がすり減ったりするのは問題ではあるが、ここはとにかく手で触らせる体験学習に徹している。ワーク・シートなんかは使わずに、子供たちをいつも「keeping busy」にしている。ブリティッシュ・ミュージアムをみたかい?子供は飽きてお絵かきなんか始めてるよ。あれじゃだめなんだ。私は掘っていたこともあるが、考古学者というより先生だね。トラスト自体も、教育チャリティー(何と訳すべきか。おそらく、免税になる公益法人と思われる)なんだ。とのこと。やや見せ物的なヴァイキング・センターだけで終わらせるのではなく、体験的に考古学を理解させようとする努力と、はつらつとした運営にひたすら感心。

ギルド・ホール The Ancient Guild Hall of the Company of Merchant Adventurers of the City of York <史跡>
 1998年6月25日(木)午後訪問
 £1,5? ガイドブック£1?
 1357年に商人組合のホールとして建設されて以来、今日までホールとして使われている。
 史跡としても公開。礼拝堂なども含めて一通りの施設が現在もあり、建設した「Company」が現在も所有。ホールだから、がらんとしているが、木造大建築の迫力は十分。下の階では学校の団体がお弁当を食べていて、なるほど今でも機能している。

ミックルゲート・バー博物館 Micklegate Bar Museum <史跡・博物館>
 1998年6月25日(木)午後訪問
 大人£1,5 写真可 日本語案内あり
 ヨークの市壁の上を歩いていくと、途中にある門の一つ。南西のここが正門格で、王を迎え入れる門とされている。内部は監獄ともなり、反逆者などの首もさらされた、その囚人や「首」の復原人形などが展示されている、何とも薄気味悪い雰囲気。一つの階は、なぜか19世紀にここに住んでいた警官の家族?についての展示で、人形の少女が洗濯をしている。受付の裏は、なんと市門がらみの伝説の幽霊(女性)の「復原」。 こんな博物館だが、学校の団体は来るらしく、表のポスターには、「スクール・パック」も用意されている、と書いてあった。

ヨークシャー博物館 Yorkshire Museum
 1998年6月25日(木)午後訪問
 大人£3,60 子供£2,30 (ヨークの住民は無料) 写真可
 地域史の博物館。自然史部門が大きな比重を占めているようだが、そちらは時間がなく割愛。入るとまず企画展示室で、4月から11月の「アニマル・マジック」他をやっていたが、これは何と完全に子供向けの、がらくたを使った動物像、図書などの資料を用意してのお絵かき、ブロックなどの組み合わせ、パソコン操作、といった内容。小学校の団体で賑やかだったが、それが帰った後は閑散。
 常設展は、実大復原などもあるが、どちらかというと古典的な、遺物とパネルを中心とした普通の展示。ただ、ここはセント・メアリーズ・アビーという大修道院の跡地に建っていて、修道院跡の建物も一部残っているのだが、遺跡自体を建物内に取り込んだ修道院関係の展示は、もちろん「実大」でもあり、なかなか斬新。グレゴリアン・チャント(?)の音楽も流れているし、設立者を主人公にした映画仕立ての解説映像も上映されている。
 売店で教育用の資料を聞いたところ、歴史のがある、といって、ローマ関係のワークシートをくれたが、イラストやコラムが豊富で、なかなか内容豊か。年間入場者数を聞いたら、「年によって違っていて……」とわざわざ統計を取り寄せてくれた。それによると、少ない年は10万人を割っているが、恐竜の企画展があった年は30万人を超える、といった調子で確かに変動が激しい。

トレジャラーズ・ハウス Treasurer's House <史跡>
 大人£3,50? 写真不可
 16・17世紀の建築。もと修道院の会計係の屋敷だが、その後様々な家族が使用。ナショナル・トラスト管理の史跡にはじめてはいる。受付ではすぐ荷物を預かってくれ、感じがよい。まず、ガイダンスビデオ。各部屋は、19世紀頃の様子に復原され、台所では「料理」も並ぶ。各部屋にボランティアのおばさんが控えている。
 受付でうかがったところでは、ボランティアは、駐車場の係りなども含めて300人が組織されており、交代で勤務している由。
 子供用のガイドや、ワークシートも用意されている。ワークシートは、各部屋について、「この部屋には鏡は何枚あるかな?」とか、「この部屋には金色の女性がいます。誰でしょう?」とか、細部に注目させることで観察を促す問題が多い。何種類もあるのは、また来たとき違うことができるように時々作り替えているから、の由。

ヘイドリアンズ・ウォール Hadrian's Wall
 1998年7月28・29日(火・水)訪問
 ローマ時代、ハドリアヌス(ヘイドリアン)帝(在位117〜138)の時にローマ帝国の最北の境界として作られた世界的に有名な長城の跡。カーライル(Carlisle)−ヘクサム(Hexham)間を、5月23日〜9月27日の間、主な遺跡や施設、近くの鉄道駅などを結んだ見学者用のバス(HADRIAN'S WALL BUS。国立公園、自治体、バス会社の共同(?)による)が運行されている。一日4往復。約二時間おきなので、一日最大三ヶ所を見ることができる。バス終日券大人£5、子供£3、ファミリー£10。ごく普通の路線バスだが、窓にローマ兵の横顔が貼ってある。週末と祝日には、昼の二つの便に、カーライル市のコスチューム・ガイドが同乗してくれる。

ハウスステッズ ローマ砦 Housesteads Roman Fort <史跡・博物館>
 7月28日午後訪問
 カーライルからバス約1時間40分。乗ったのは3〜4組くらいで、すいている。あまり舗装のよくない田舎道をぶっ飛ばすから、相当な揺れ。
 ここは、ヘイドリアンズ・ウォールの中間付近で、もっとも保存がよい砦の遺跡の一つ。ウォールは平地よりも、崖縁など要害の地を選んで作っており、この砦も小高い丘の上にあるので、駐車場から数分歩いて登っていく。遺跡のすぐ下に民家風の博物館があり、遺跡がナショナル・トラストの所有、イングリッシュ・ヘリテージの管理(?)なので、両会員は無料(通常料金は大人£2,7)。
 博物館の内容は、出土遺物、ローマ兵の実大復原、砦の復原模型など。一室のみの小規模なもの。雪の日の空中からの写真で、地表の凹凸から遺跡の存在が分かる、というのが興味深い。イングリッシュ・ヘリテージ製作の解説ガイド『ヘイドリアンズ・ウォール』(£2,95)、子供向けのアクティビティー・ブック(£1,99)などを販売。
 遺跡は、いかにもローマの、四角い石造りの壁の中に、政庁、病院、穀倉、兵舎、「水洗」トイレ、門などの跡。外にも、住居、店などの跡。「城下町」の原初形態を見る思い。特に変わった整備はないが、復原図などを説明板に積極的に使っているのは他の遺跡でもよく見るところ。「ウォール」自体は、この砦の城壁にとりついているが、丘上の「城」から城壁が両側に下っていく様子は、朝鮮の「倭城」に何とよく似ていることか。侵略軍が前線に作った城、という点で、本質も現象も、まさに同じ。
 なお、史跡整備では草刈りが問題になるので、羊や牛などの草食動物を放し飼いにすればよい、と時に冗談混じりで言うが、これは無理だということが分かった。ここは羊の放牧地の中にあるので、なにしろ周囲は糞だらけ。道を外れた草地の中は、歩くのに一苦労。

 (この日は、バスの基地の一つヘクサム(Hexham)に宿泊。午後6時にはもう人通りもまれな、実に静かな地方の市場町。)

ヴィンドランダ Vindolanda
 7月29日午前訪問
 ヘイドリアンズ・ウォールの南、つまり内側にある砦(fort)と集落の跡で、現在も発掘が続いている。受付でローマ軍事博物館との共通券を買ってはいると、ちょっとした遺物の展示があり、遺跡へ出る。風呂(Bath House)などもある集落と砦跡が整備されており、砦跡の一部が発掘中。発掘自体も、いわば「展示」の一部として見せている。ウォールの一部を、木と石の双方で復原した施設(replicas)もある。
 敷地の奥へ谷を越えて進むと、チェスターホルム(Chesterholm)博物館がある。1832年の山小屋風の建物。中はかなり広く、遺物を豊富に展示。「木簡」が大量に発見されていることが特徴。実物大で職人の部屋などを復原した部分もある。写真不可。外の川沿いには、「オープン・エア・ミュージアム」があり、石塔などの他、神殿・店舗・兵士の家などいくつかの復原建物が建っており、中では人形が料理をしていたり商売をしていたり、ほぼ完全な生活環境の復原がなされている。ボタンを押すと、人形(たち)の「会話」も聞ける。1996年(?)にできた、史跡における復原施設の最も新しい事例の一つ。
 なお、運営は、The Vindoranda Trustという、1960年代の発掘を受けて、発掘事業と遺跡の整備公開のためにできた団体(「チャリティー」の登録を受けている)。

ローマ軍事博物館 Roman Army Museum
 7月29日午後訪問
 特定の遺跡とは直接の関係を持たない博物館。内容はちょっと古く、兵舎内部の部分復原なども一応あるが、あまりぱっとしない。ローマ兵の武器武具などについて、上官と兵士のやりとりのかたちで解説したビデオの大画面上映が若干目新しい程度。少しおざなりな感じで、せめて武器武具の試着とか、何か工夫が欲しいところ。カフェは「タベルナ」という名前。
 15:05博物館前発のバスまで、時間つぶしに近くのWalltown Cres という、断崖の上を走るウォールを見学。登るのにちゃんとした道はないので、羊の糞をよけるのに一苦労。ここの解説板も、イングリッシュ・ヘリテージの製作で、復原図付き。日本語もある。読んでいると、親子連れが来て、お父さんが日本語の所を読んで見せてくれ、というので音読してあげたら息子たちは不思議そうな顔をしていた。「日本に行きたいと思ってるけど、お勧めかね?」もちろん。いいところがたくさんありますよ。こういうのはないけどね。

 今回の訪問で直接見学できたのは以上の場所だけだが、この他、東側では、チェスターズ(Chesters)砦(タイン川の渡河点に作られた砦。博物館もあり)、コーブリッジ(Corbridge)(ヘイドリアンズ・ウォール以前からのローマ遺跡で、ウォール以後はその補給基地)、ニュー・カッスル(ミュージアム・オブ・アンティクイティーにミトラ神殿の復原がある)、サウス・シールズ(South Shields)砦(東端の砦で、1986年に西門を復原し博物館としている)などがあり、また西側では、この他、バードスワルド(Birdoswald)砦が、カーライルに近く、ビジター・センターもある。バスで前は通ったが、1999年2月から新しい展示がオープンすると看板が出ていた。いずれも、博物館や発掘は別として、地上の遺跡の管理はだいたいイングリッシュ・ヘリテージが行っている模様。

<カーライル Carlisle>
テュリーハウス博物館・美術館 Tullie House Museum and Art Gallery
 7月29日午後訪問(4時過ぎ〜5時)
 大人3,50(NACF無料) 子供£2,50 家族£10。 10時〜11時は「early bird offer」で半額。 ガイドブック£2,50  写真不可
 1877年に、ロンドン万博(1851年)の影響を受けてカーライルの最初の公共博物館がオープン、1893年にテュリー・ハウスに移り、現在の建物は1991年5月3日にオープンしたもので、年間約25万人の入館者がある。
 展示はカーライルとボーダー(国境)地方の地域史(自然史も含む)。遺物に一部実大復原なども交えた、水準の出来。ヘイドリアンズ・ウォールの「復原」や「ローマ時代の町並み」風の部分も。
 目玉は「国境の略奪者たち(The Border Reivers)」という、14〜17世紀頃に、スコットランドとの国境地帯が無法地帯となり、そこで「活躍」していた略奪をこととする人間たちを扱ったオーディオ・ビジュアルの映画館風のもので、始まる時間ごとに入場させてくれる。入ったときは、閉館近かったこともあり観客は私一人だけ。内容は、一部に人形やジオラマを配したステージにイメージ映像が映り、せりふと解説の音声が流れる、というものだが、なにしろ直接当時を示す画像は何もないので、効果音混じりの声音を使った英語がよく分からなかったせいもあるが、ただおどろおどろしいだけで、別にこんな仕掛けをする必要は全然感じられなかった。全くの独りよがりとしか思えず、こういうものはすぐに飽きられるか時代遅れになるのは見えており、イギリスの博物館にも、こんな勘違い「展示」があることが分かったのは収穫。業者ベースで作った展示の弊害か。
 石臼で粉をひいてみる、馬具を付けた「馬」に乗ってみる、といった体験型展示も一部にあるが、実際には使えないのがあったり、熱意は今ひとつ。
 (この後グラスゴーへ向かうが、これについては「スコットランド」の項を参照。)

<ノッティンガム Nottingham>
 1998年12月11日(金)訪問
 この日は、ハンズ・オン展示が多くてよい、と聞いたノッティンガム城博物館の見学が第一の目的だったが、行ってみたら、なんと、11月〜2月は金曜日が休みで、近くのブリューハウス・ヤード博物館(ノッティンガムの生活史)共に見ることができなかった。やむを得ず、街と他の博物館施設を見学する。

衣装・織物博物館 The Museum of Costume and Textile
 ノッティンガム駅から徒歩10分
 無料  写真不可  ガイドブックはなし
 17世紀後期から18世紀の住宅群の一部を改造した建物。1790年から1935年まで、6つの部屋に、各時代の衣装を着たマネキンを配し、家具・調度(絵画など)まで実物を使って部屋全体を復原している。手前には、それぞれの解説ラベルがずらり。環境復原の中で見せる工夫は、やはりすぐれている。チェスターのグロスヴナー博物館でも同様の展示を見たが、ここは建物もその時代に実際に使われていたものだから、大変マッチしている。復原展示室の間の部屋などには、衣装・織物の資料が所狭しと展示され、かなりの充実ぶり。ノッティンガムはレース産業などの織物の街でもある。

ロビンフッド物語 The Tales of Robin Hood
 1998年12月11日(金)昼訪問
 ノッティンガム駅から徒歩15分
 大人£4 ガイドブック£1,95
 イギリスに多い歴史復原体験館の一つ。最初はコスチュームガイドが入り口まで案内、「シェリフのスパイがいるから気を付けろ(?)……」などと、かなり成りきり。「ここはシャー・ウッドの森……」「ロビンを捕らえろ!(?)」といった前口上の部分を通ってから、二人乗りの懸架式の乗り物に乗って(前へ進むだけでなく、向きも場面場面へ小刻みに変わる)、ノッティンガムの街からシャーウッドの森へ、という形で、いろいろな「当時」の(一応、12世紀ころが舞台らしい)場面を通り、冒険をして(矢が「飛んで」きたり)、最後は全員集合の宴会シーン、というのが、「復原体験」の部分。もちろん元がお話だが、発掘成果も参考にしたとかで、商人、職人なども多数登場し、中世生活復原として一応の水準か?。どういうストーリー展開だったのかは、残念ながらこの手の声音を使ったナレーションは苦手でほとんど意味が分からず。英語しかないのはちょっとサービス不足。一緒に入って次の乗り物に乗った、タイ人だと言っていた新婚らしいカップルは、いずれにしても二人きりの空間で喜んだだろう。
 降りると次はパネル展示中心の博物館的な展示。ロビンフッド物語の背景など。雪を散らして冬景色仕立てにしているのは、途中にある「サンタの洞くつ(Santa's Grotto)」という、クリスマス恒例の、子供が一緒に写真を撮れる(大人は有料)というイベントのための演出。そう言えば、降りるときに茶色のずきんをかぶった男が降ろしてくれたが、あれが「中世のサンタ」だったらしい。この日は閑散としていたが。
 二階も続きで、弓の試射(3本1ポンド)などもできる。模造の武器も。剣の重さが分かったのはよい。なぜか本物の鷹もいる。15分おきというフィルムの部屋もあったが、待ちきれず出てしまった。
 この種の施設で人が入っていないと、職員もあまりやる気がないし、すさんだ退廃的な雰囲気が漂い出す。ここも1989年5月開館とのことなので、約10年。ちょっとすさみ始めている。
 売店は、ほとんどクリスマスグッズ。

 オールド・マーケット・スクエア(クリスマスの飾りがきれい。メリーゴーランドもまわっている。出店の中には、「BONSAI」屋さんもあった)、ツーリスト・インフォーメーション、セント・メアリーズ教会、と街を一回り。随所に、番号を付けて歴史的な建物(群)の解説や見学ルートなどを案内する地図付きパネルがあるのはよい。

ギャラリーズ・オブ・ジャスティス The Galleris of Justice
 ノッティンガム駅から徒歩10分
 大人£7,95  ガイドブックは97年版が(旧版なので)「たったの30p」
 古い大きな建物に、表記の看板と掲示が出ており、内容が今ひとつよく分からないが、とにかく博物館らしい。見学に4時間を要する、とか、いろいろ教育活動をしている、とか書いてあり、博物館協会(MA)の会員証でタダで入れるところだし、他に行きたい所もなくなったので、とにかく入ってみる。
 中は「犯罪と刑罰の展示(Crime & Punishment Galleries)」と「警察の展示(Police Galleries)」。受付のお姉さんは切符を二つ渡してくれたが、見学はツアー制で、次は、前者は2:15から2時間、後者は3:15から(?)1時間のなので、今からだと両方は無理。切符は有効だからまた来たらいいわ、とのこと。こっちがお勧めね、という前者のツアーに参加することに。ベンチで待っていると時間になって法服を着たお兄さんが来てくれたが、結局参加者は私だけ。まず中世の「クガタチ」相当の裁判などについてパネルで説明してくれ、ではどうぞ、と自動ドアの中へ入れられると、マネキンの女性が鉄火裁判をさせられている。次の間へ進むと、「裁判」の歴史についての展示。見終わって出ると、さっきのお兄さんが、「法廷」へ案内してくれる。実は、ここから先は本物の裁判所・刑務所跡。裁判官、被告、検察、など何人かのマネキンがいる。説明の後で、マネキンの「せりふ」と、他の「登場人物」の実演映画によって、1832年の騒動でつかまった人物の実際の裁判が再現される。
 終わると、「看守」に引き渡されて、被告席から下の階へ案内され、「刑罰」の展示を見た後、1800年、および1860年の監獄の中を延々と案内される。それぞれのコーナーで、一部の部屋が環境復原、時にマネキンまで置かれて復原されている。「受付」の部屋、チャペル、独房、風呂、洗濯室、物干し場、懲罰室、絞首台……最後の方は、オーストラリアへの流刑の歴史関係、それから、「刑務所はなんのためにあるか?」、最後に現代の監獄、といったテーマの、AVや実物、めくり回答クイズなども用いた博物館展示。切符には、「A4-564」などとIDナンバー(何種類かの内の一つ)が打ち出されており、以上の各コーナーには、実際の囚人の経歴や判決結果がパネルになってIDナンバーが付けられており、「ここではあなたはこの囚人です。」と言われる。
 結局4時まで、この監獄遺跡博物館を、マンツーマンでみっちり案内された。向こうも暇なので、時々「休暇かい?」「これは日本ではどうだ?」とか質問してくるから、全く気が抜けない。前歴を聞き忘れたが、元警官といわれたら信用する、姿勢はいいがガニ股の「看守」のおじさん、少しは気を使って丁寧に話してくれたので、何とか切り抜けられた。
 開館は1995年だが、展示を更新して、今のところは今年の7月に再オープンしたばかり。年間入場者を調べてもらうと、月4000人程度なので、年間45000〜5万人、夏は多いが、冬はみんなうちに閉じこもってしまうから、御覧の通りで、ショップも片づけている。でも今日はこれから「マーダー・ミステリー・イヴニング」というイベントをやる。来館者は、学校団体も多いが、老人とか家族連れも多いね。小さい子にはちょっと怖がらせるので向かないと思うがね。とのこと。学校用のインフォーメーション・パックはタダでくれた。資料集のようなものが欲しかったのだが。最後に握手を求めると、「手が冷たくて悪いね。」「いえ、こちらもですよ。」出たり入ったりの監獄巡りで、すっかり冷え切ってしまった。
 博物館としても史跡の活用としても、最新の事例の一つを思いがけず見学してしまったが、ここは「法の博物館(Museum of Law)」の最適地として選ばれた由で、ガイドブックによれば、近い将来「国立法博物館(the National Museum of Law)」となることを期待している、とのこと。どうみても採算はとれていないが、ガイドブックの奥付けによれば、現在は「The Museum of Law Trust Company」という一種の会社組織で運営している。個人・企業の寄付者名が、ページ全体にずらり。よく見ると市や郡の名前も入っているから、一種の第三セクター方式なのだろう。

<リーズ Leeds>
 王立武器武具博物館 Royal Armouries Museum
 1999年1月13日(水)昼〜午後訪問
 リーズ駅徒歩20分
 大人£7,95 企画展込みだと£8,95 (NACF会員無料) ガイドブック£2,95
 写真可
 最古の国立博物館であり、世界でもっとも古い博物館の一つという、もともとロンドン塔のホワイト・タワーにあった(現在もある)王立武器武具庫が手狭になったため、新しい博物館を北イングランドのリーズに作ったもの。1996年の開館で、新しい大規模な博物館として是非見て置くべく、次項のEUREKA!の見学とセットで出張した。
 場所は、中心街と反対側のエア川(River Aire)の川沿い、一種の再開発地区。路線バスも一時間に二本ほど来てくれる。車のアクセスを主な前提にしているらしく、駅から歩いていくとちょっと大変。駅からは、歴博よりちょっと遠いか。入り口も駐車場の側にあるのでなかなか分からない。
 やっと中にはいると、入場料のブースには誰もいない。たまたま職員が歩いてきたので席に着くのかと思うと、奥へ行けという。閑散期は奥まったところのインフォメーションの所で券売もしている様子。三人くらいが話をしていて、しばらくこちらに気がつかない。名字(surname)は?とか聞かれたが、何のことかよく分からない内に、いいです、とのこと。どうも何か名前の調査をしていて、外国人なら必要ない、ということらしい。ちゃんと説明すればいいのに。デスクの上には、館内案内や本日のイベント案内のシート(質の良くないコピー)などが置いてあり、必需品と思われるのだが、渡してもくれないし、持っていきなさいとも言わない。展示室は実は二階からなのだが、エレベーターの場所も教えてくれないから、正面に見えた螺旋階段で上がってしまった。
 (というわけで、この時点でかなり失望。ここ8ヶ月ほど博物館を観客の立場で見続けてきた経験から言うと、良い博物館は、入ったときに必ず受付の人がこちらを向いてほほえんでくれる。悪い博物館は、こちらをちゃんと見てくれない。まず例外のない法則。来館者にきちんと向き合った展示をしているかどうかは、実はこういうところに如実に現れる。)
 この螺旋階段は、本体の建物とは半ば独立した円筒状の部分(Hall of Steel)にあるのだが、この中世城郭の塔をイメージしたと思われる部分はスコットランド博物館にもあって、歴史を扱う建物にこのごろ好んで付けられるみたいだが、正直言って発想が陳腐だし、全然有効に機能してないので無駄としか思えない。建物は、内部も細長い吹き抜けで二つに分断されており、わかりにくいし機能的な構造とも思えない。
 内容は、戦争、トーナメント、オリエント、狩猟、自己防御、といった展示室に分かれており、一応時代順風だが、中世の隣に現代の武器が並んでいたりで、構成がよくわからない。展示は、武器武具は大体本物だが、一部復原やレプリカも使用している。ただそれを並べるのではなく、戦闘シーンなどの実大人形(群)にしてみたり、ビデオで装着の様子や実際の使い方(鉄砲など)を説明したり、さらに実演をやってみせたり、と色々な手法を使っている。
 しかし、人形には「さわらないで」の表示しかないのが多く、なんのシーンだかよく分からないし、ビデオはすべてスピーカー方式で勝手に流れているので、音が錯綜して展示室はかなり騒々しい。
 目玉は「実演」で、この日は予定表の刷り物によると、時間を決めて計9回、二人で中世の武器を使った模擬戦をしたり、一人芝居をしたり、中には国連活動でのボスニアの地雷の体験談を二人の迷彩服を着た兵隊さんが語る、などというのもあった。大体展示室の中に設けられた競技場(?)やステージで行われるが、講堂で行われる講演会風のも一つある模様。「オリエント」の展示室では、この日は「鉄砲は日本にどうやって来たか」というお話(storytelling)があったらしい。
 数人の観客を相手に一生懸命やっていたけれど、コスチューム・実演型の試みとして興味深いが、展示室内でいきなり始めて観客を引きつけるのはちょっと難しそう。展示室の内容とはつながりがあっても、展示自体とは直接つながりがない、独立した形のパフォーマンスなのも、無理があるのではないか。また、展示室自体がかなりうるさいから、せりふもよく通らず、大声を出すだけになりがち。時間になってもなぜか誰も出てこないのもあった。
 なお、日本関係のものはかなりあり、甲冑、刀、馬具などの展示の他、日光東照宮の流鏑馬のビデオが流れ、流鏑馬装束の実大人形(馬上)もある。茶室も展示室内にこしらえられているが、何も説明がないし、障子は破れ放題。
 小映画館風のコーナーもかなりあり、戦闘復原(再演)を含めた色々な映像・音響を流しているが、やっていたりいなかったり。「戦争」展示室の導入映画(9分ごと)は、第二次大戦から始まって、ヴァイキング時代(?)ころまでさかのぼる各時代の戦争・戦闘シーンのイメージ映像風のもので、あまり意味はないし、実際だれも見てなかったが、入り口は閉まっていて最後にやっと勝手に入っていいことに気がついたし、ここを通り抜けると古い時代からの順を追った展示に一応なっていることもようやくわかった。
 すべてこういった調子。いろいろ新しい趣向を取り入れてはいるが、すべてちぐはぐでなんだかよくわからず、印象が薄い。業者主導の展示の悪弊か。少なくとも、学芸員がまめに展示室を見回って観客への配慮の向上に努めている博物館でないことは確か。物が物だけに難しい面もあろうが、ハンズ・オンタイプの部分がほとんどないのも遺憾。私が触れたのは、壁に掛けられた中世の鎖帷子の復原断片だけだった。展示室にいる職員がただうろうろしているだけなのももったいない。リーズは産業都市なので、博物館を会議などの会場に貸すこともしているらしく、この日も一部では名札を並べたり準備に忙しい様子。テレビカメラが来ていたのも、そのためか。何だか落ち着かない。
 ただ一つ、ハッとさせられたのは、「未来の戦争」という一対の人形展示で、一つにはスターウォーズ(?)だが、もう一つは、子供部屋に覆面をした迷彩服の男がおもちゃを蹴散らして上がり込んで外を狙い、中では女の子が泣いている、というもので、「こういう紛争(conflict)は絶えることがない」という説明が付いていたのは身につまされる。
 売店は、武器のミニチュアとかお菓子が多い。弾丸セットなんか売るのはどんなものか。教育関係のオリジナルな物はない模様。こういう所に限って「イヤー・ブック」という研究紀要みたいなのを二冊売っていたが、こういうのは一般の来館者にはあんまり関係がない。
 屋外のTiltyard(馬上槍試合場)では、夏期には馬や鷹を使ったパフォーマンスが見られるらしい。別棟のThe Craft Court では、武器武具職人さんの製作現場がガラス越しに見られる趣向だが、見られる、という以上のものがない。
 企画展の「スポーツ」は、ロンドンの科学博物館からの巡回展。何の表示もなかったが、実は駐車場の彼方にある倉庫?の仮会場で、シートで塞いだ壁からは風が吹き込み、うらぶれた感じでやっていた。色々なスポーツの疑似体験や運動生理の実験などができるというものだが、どうせなら全部ゲーム式にするくらいでないとあまり楽しめない。既に相当使い古した感じで、壊れているのもあったが、まだこの先巡回するらしい。売店は、アディダスのお店。

<ハリファックス Harifax>
ユーリーカ!子供のための博物館 Eureka! The museum for Children
 ハリファックス駅徒歩1分
 大人と12歳以上の子供:£5,75  3才から12才までの子供:£4,75
 学校期間中の学校団体:£3,10 その他の週末および休暇期間の団体:£3,75
 ガイドブック£1,95?  写真可
 イギリスで始めてのこの種の博物館。1992年7月開館。体験型展示の好例として、評判を聞いたり博物館学の本で目にしたりしていたので、必ず訪れたいと考えていた博物館の一つ。Eureka! というのは、アルキメデスがお風呂でアルキメデスの法則を発見したとき叫んだ、「わかった!」という意味の言葉の由(辞書を引いたらちゃんと出ていた。)。
 立地は駅を出てすぐの所で抜群によい。そのわりに敷地もかなり広く、前庭は「Health Trail」というたくさんの運動具が並んだ施設になっていて、入場前後の時間に遊べる(運動できる)ようになっている。これは子供を対象にするとき、ほとんど不可欠。かわいらしい子供のキャラクターのサインや絵があちこちに出ているが、これはSatoshi Kitamura という、日本人のイラストレーターに依頼したもの。どおりでなじみやすいと思ったが、イギリス人もやはりこういう絵はかわいいと思うらしい。ただ、もちろん顔の色はいろいろにしてある。
 入館すると、外にいるときからにこにこ迎えてくれたお姉さんが、キョロちゃんみたいな鳥のスタンプを手の甲に押してくれる。これが入館証。中は、なるほどハンズ・オン展示を総動員した体験型博物館で、「資料」の類は全然ない。
 内容は、「一緒に暮らし、働く(Living and Working Together)」「発明・創造・通信(Invent, Create, Communicate!)」「私と私の体(Me and My Body)」「物(Things)」の四つのテーマが中心。ナショナル・カリキュラムができてからの開館なので、それに沿った、ないし対応を意識したものになっていて、パンフレットにも対応一覧が出ている。
 一番興味深かったのは、「一緒に暮らし、働く」で、ここには、家、スーパー(M & S)、郵便局、銀行、ガソリンスタンド、工場、などがあり、それぞれの所で、例えばガソリンを何リットル入れていくら払う、とか、郵便局で仕分けをしたり、切手を貼ったり、とか、銀行でお金を引き出したり、借りたり、金庫の鍵を開けたり、お札をデザインしたりとか、スーパーでお買い物をしてレジでお金を払う、とか、社会科、算数、EIU(実社会に初めて溶け込むための教育)その他いろいろな分野での(疑似)体験学習ができるように工夫されている。
 特に感心したのは、「掘る(Dig)」の部分。スーパーの前の広場に面したところが「工事中」になっていて、掘り下げたところへ降りられるようになっていて、もちろんガスや電気の管もあるが、垂直断面にはちゃんと各時代の遺物が顔を出していて、どの層が何時代、どの遺物は何の跡、という説明が付いており、層位による時代の変化が理解できるようになっている。「工事現場」の横には、ヨークのARCの協力で、お得意の遺物分類コーナーが作ってあり、実物の陶器片などの遺物を箱に入れて、紙に升目を切った分類枠の上に並べられるようになっている。各遺物を解説した絵入りの詳しいめくり型解説シートも一緒に置いてあるが、これはちょっと難しいか。いずれにしても、現実に即して都市考古学のなんたるかを理解させるすばらしい工夫。
 この隣には、「ジャングル」という4歳以下の子供専用の一画があり、ジャングルの中を探検して植物・動物などをさがしたり、ボールプールで遊んだりできる。  「発明・創造・通信」は、BTなどがスポンサーで、電話などによる通信の実験、ヨットの遭難体験、デスクトップ・パブリッシングによる新聞づくり(顔写真も入る)、テレビのスタジオ、など。
 「私と私の体」は、色々な測定や実験をしながら、体がどんな風に成り立っているかを理解させる。最初に「パスポート」を持ってそれに記入していったり、各装置では、説明と「Do」という操作の指示を分けたり、工夫は見られるが、やはり瞬間的に装置の意味や使い方を悟るのはかなり難しい。
 車椅子や松葉杖などを使って段差などのある所を歩かせるコーナーがあるのには感心。
 「物」は、ロンドンにある科学博物館地階の子供向けハンズ・オン展示にあるのと全く同じ物がかなり多く、趣旨も同じ。まあ、両方見て苦情を言う子供はめったにいないだろう。
 総じてかなりよく考えられた展示だが、ここのような配慮の行き届いたところでも、使い方がすぐに分かって内容がスムーズに理解できる展示(装置)というのは、良くて半分くらいか。観客の目になってみると、また子供の側からすると(私の英語速読能力は、たぶん子供と同じくらい)、まだまだわかりにくい展示が多い。博物館(学芸員)の側の意図を伝えるのがいかに難しいかには愕然とするほどのものがある。
 最後にインフォメーションで質問を試みた。開館年、設立者(fund)などの一般的な質問には、メディア用のパックがある、と言ってまずこれをくれる。年間入場者は、5万人、と聞いたが、資料を見ると1992年7月の開館から5年後の1997年8月で2百万人、とあるから、平均40万人の勘定。約三分の一が学校団体で、あとは家族連れなどの一般の由。組織的には「A registered educational charity」で、Clore & Vivien Duffield Foundation という財団の寄付で設立が可能になった。「パトロン」のチャールズ皇太子、スポンサー、政府や地方自治体の援助、などでハリファックスの中心部に建設できた、とのこと。独立博物館の一つに分類すべきかと思われるが、イギリスで「なに立」というのはかなり難しい。
 スポンサーは、およそ百におよぶか。普通は殺風景な一覧をお義理で壁に作ったりするが、ここは開き直って、その名も「The Sponsorship Tree」という、スポンサーの名前を金属の実に書いた大きな木のオブジェみたいなものを壁面に作って飾っている。色々な賞を受賞した、その賞状も一緒に飾っている。イギリスの博物館の宣伝や紹介では、よく「賞を取った(Award winning)」という表現をするが、各種観光協会的な組織などや企業などが、色々な賞を出している。(たしか、文化庁相当の政府機関も出している。)
 職員は「small team」とのことで、オフィスに15人、来館者に接する部門(front of the house)に15人くらい。
 常設展示の内容は開館以来変えていないが、イベントを多く行っているので、その意味ではいつも変えている、とのこと。
 先生向けにはエデュケーション・リソース・パックを用意しており、買う必要はないわ、といって一つくれた。(ショップにはなかった。)展示についての詳しい解説が中心で、ワークシートは博物館側では供給(provide)しておらず、これをもとに先生が自分で作る由。実際この日来ていた学校団体は、手書きを印刷したシートを持って見学していた。
 ショップは教育玩具みたいなのが多いが、今ひとつ。
 カフェでは、注文した物を乗せたトレイに、アンケートのかわいいシートを一緒に乗せてくれる。「家族チケットとランチが(毎月第一月曜抽選で)当たる」という景品付きで、よそでも見るが、ちゃんと調査するつもりなら、やっぱりこういう利益誘導が必要。住所氏名、来館グループの年令構成、来館時間、カフェの評価、コメント、という内容。
 この他、館内の随所にもアンケート用紙は置いてあり、展示各部分の5段階評価などもある。職員の態度などに関する評価、館内での対応を記入する欄もあり、自己評価はかなりまじめにやっている様子。「通信」のところの日本人の女の子の衣装が全然変だったので、書いておいた。

 この日は、この後観光案内所(The Piece Hallという、周囲を壁で囲んだ18世紀の面白い市場の建物の中にある)の隣にある「カルダーデール産業博物館(Calderdale Industrial Museum)」という博物館にも寄ってみたが、観光案内地図にも出ているし、看板も掛かっているのだが、中は暗く、「入り口」がない。気がついてドアを開けてくれたおじさんは、「閉館(Closed)」だと言う。ずっとですか?と聞くと、'I hope……'と何か言っていたが、要するに閉鎖。ここも「受賞」博物館、と観光地図には出ているのだが、また潰れた博物館を見て少し暗い気分に。

<リバプール Liverpool>
マージーサイド海事博物館 Merseyside Maritime Museum
国立税関博物館 HM Customs & Excise National Museum
 1999年2月4日(木)昼訪問 (晴れたり曇ったりだが、歩けないほどのすごい強風(gales))
 リバプール・ライム・ストリート駅から徒歩15分
 大人£3、16歳以下・学生・老人・無職£1,5、家族(大人二人子供三人まで)£7,50(NMGM(National Museums & Galleries on Merseyside)8館共通。一年間有効) MA会員無料 写真可  ガイドブック£1,95(次項含め3館共通)
 「マージーサイド」は、リバプールのある州の名前なので、横浜市と神奈川県の関係のようなものだろう。「アルバート・ドック」という19世紀に建造されたドック(四角い船溜まりとそれを囲む倉庫などの建物群)が、再開発で博物館、商店などの集合体になっている(1971年閉鎖、1986年修復)。下記の3館もこのエリアにある。
 標記の2館は、実は同じ建物にあり、受付も共通。券売では、NMGMのシールをくれるが、他館に入るには共通券(pass)も必要。館内案内図をくれないのは不備。内部は部分的に工事中でわかりにくいが、警備のおじさんは、1階を見てから地下へ行き、4階から下がると良い、と教えてくれる。結局かなりつきあってくれ、警備というより、付き添い(attendant)系の要員らしい。1階部分が税関博物館ということらしく、怪しいのは誰か、どうやって密輸入品を持ち込むか、偽物はどれか、など。ボタンスイッチ、めくりクイズ、重量計測など、一応工夫はしている。
 海事博物館では、地階の奴隷貿易の展示(Trans Atlantic Slavery:Against Human Dignity)に感心。アフリカ文化の紹介から、どのように奴隷貿易が行われたか、彼らはその後どうなったかを詳細に追う、イギリス(だけではないが)の自己批判とも言える内容。実物資料は、アフリカ文化以外は奴隷の足かせなどそれほど多くないが、模型や、関係者の本、文献資料などを受話器型の装置で聞かせる「語り」の展示が多く、また、4人のアフリカ住人のその後を追う個人史の形を取り入れる、など、なかなか工夫も多い。1994年のオープンということで、売店には展示および市内の関連地点探訪(Histry Trail)の資料もあり、最近の活動の一つとしてかなり力を入れている。後で気がついたが、次項の生活博物館では1981年の黒人暴動が紹介されており、こうした差別の歴史を踏まえて、なぜアフリカ系住民がいるのかを正しく理解させようという趣旨と思われる。博物館が、生々しい社会問題の改善に積極的な役割を担わされている。
 (なお、ツーリスト・インフォメーションの無料パンフレットコーナーには、「絲路之音(Silk Road News)」という中国語・英語並記の情報誌が置いてあり、これはリバプール市役所(「利物浦市政府社」)の「区発展均等部(Comunity Development & Equality Unit)」の「資助発行(fund by)」とあり、市役所が、各人種のコミュニティーを無理に同化させるのではなく、それぞれのアイデンティティーを尊重していることがうかがわれた。ついでながら、Happy Cristmas は「聖誕快楽」と訳す。)
 海事博物館地階は、この他に移民の歴史も扱っている。2〜4階は、港の歴史、救助、船の建造、模型、絵画などだが、正直言ってたいしたことはない。ただ第二次大戦の所は独立したコーナーになっており、空襲の被害も大きかった対ドイツ戦争が詳しく扱われている。「語り」が当時の(?)電話機の形の装置で聞けるのはちょっとした工夫。
 売店は、ガイドブック、パンフ類は50pなど安いのが色々あるが、教育用資料は特には見あたらない。

リバプール生活博物館 Museum of Liverpool Life
 1999年2月4日(木)午後訪問
 入館料等同上
 アルバート・ドックにある国立3館の一つ。海事博物館から水路を隔てた所に位置する、やはり古い建物の再利用。1993年開館。 現在一部改修中。
 近代の生活・生業・文化・衛生などに関する資料や現場の復原などが、ちょっと雑然とした感じで配置され、随所にビデオがある程度。「居間」の次にジュークボックスがあったかと思うと、障害を馬が飛び越えている、といった具合。ガイドブックによると、印刷工など、デモンストレーションも行っているようだが、確かに何かしないとちょっと活気がない。
 Demanding a Voiceというコーナーでは、リバプールでの暴動の歴史を扱っており、1981年の黒人コミュニティーが起こした暴動(explode)(この時は、ロンドン、ブリストル、リバプールで起こった)を、記録と証言のビデオで扱っていたのが印象的だった。
 庭は、1998年のジャマイカからの移民の始まりとなった「ウィンド・ラッシュ号」50周年記念の、カリビアン・ガーデンとなっている。子供の遊具が置かれた遊び場のようだが(この日は入れなかった)、ここでも人種間の融和を図る役割を博物館が果たそうとしている。
 別棟の「埠頭長の家(Piermaster's House)」は、1852年建造の家を修復して公開しているもので、暖炉にはちゃんと火も燃えていて(今は石炭は見せかけだけでガスを使っている由だが)、実際に生活できるレベルまで細かに復原が行われているので、興味深く見られる。部屋ごとに、ボタンを押すと解説の流れる装置が付いている。なぜかさっき海事博物館でつき合ってくれた警備のおじさんが、今度はここにいて、他に客もいないのでまた案内してくれた。ドックの陸側にあるビルは景観が良くないので取り壊し、2000年(?)にテーマパークとなる由。

テート美術館リバプール Tate Gallery Liverpool
 1999年2月4日(木)午後訪問
 入場無料 写真:館蔵品は可(?)
 現代美術の美術館。アルバート・ドックの、海事博物館と同じ旧倉庫群の一画だが、ここは国立でもない(ようだ)し、お互いに没交渉。
 各展示室企画展方式で、キュービズム他の展示を行っていた。展示自体は特に変わったものではないが、教育プログラムはきわめて充実しており、大人、ヤング(14〜25才)、ファミリー、学校・大学、といった対象別に、コース、ワークショップ、ガイドなどの案内パンフレットを用意している。
 「Taste」という館内の「カフェ・バー」は、ボーイさんが注文を取りに来る結構本式のレストランだが、ライス・サラダ付きのサンドイッチが£2,05と安かった。

ビートルズ・ストーリー The Beatles Story - Experience the Magic
 1999年2月4日(木)午後訪問
 大人£6,45 フラッシュ不可?
 ご存じリバプール出身のビートルズを題材にしたテーマ館。やはりアルバート・ドックの一画にあるが、地下にあって、しかも外側からしか入れないので、海事博物館やテートの側から来るとわかりにくい。
 4時過ぎにはいると、受付のお兄さんはきわめて聞き取りにくい英語で、5時がどうのこうのいうので、5時からのツアー制なのかと思ったら、5時で追い出されるぞ、ということだった。お金を払っても、レシートだけで案内図も何もくれないし、どっちへ行けとも言わないので、間違ってショップの方へ行ってからやっと展示?室へ。
 内容は、年代を追って、セットや若干の関係資料、パネル類を並べる程度。各部屋に、日本語を含めた数言語でごく簡単な解説が書いてある(ロシア語はいまだにソ連の旗)。ビートルズが出演していたキャバーン・クラブの(映画に使ったという)セットとその手前の町並み、というより地下通路?のような部分がやや大がかりで、60年代の雰囲気が漂う。自分の知っている年代が、もう歴史になってしまったかという感慨はある。あとは最後の、「イマジン」が流れる白いピアノを置いた白い部屋が感傷を誘うのに成功しているかと思われる程度。「アビーロード・スタジオ」に置かれたマネキンなどは実にお粗末で、とても本腰を入れた施設とは言い難い。この種の興行的施設の質は、1.ガイドブックがない、2.マネキンが安手、という所に現れる。
 5時まで、という話だったのに、4時40分頃から係りの兄さんがせかしにかかり、看板を片づけたりし始めていた。ショップは、グッズばかりで、受付には「インターナショナル・ショッピング」のカタログも置いてあるが、CDの類は見かけなかった。
 博物館として機能させるつもりなら、初版のレコードを全部展示するとか、音楽自体を系統立てて紹介する、といった手法があるはずだが、そういう気はない。「リバプール生活博物館」で見たジュークボックスのレコードが新鮮な印象だったので、CDしか知らない世代には、当時の蓄音機(を未だに我が家では使っていた)みたいな再生装置でレコードを回すだけでも意味があると思うが。

保存修復センター The Conservation Center
 1999年2月5日(金)午前訪問
 リバプール・ライムストリート駅より徒歩8分
 大人£3(NMGM共通) 写真:許可制。フラッシュ不可。
 ガイドブック50p, ファミリーのためのインフォメーション・アクティビティーブック 50p
 1996年12月開館の、博物館・美術館における保存修復事業自体をテーマにした博物館(国立博物館・美術館共通の保存修復部門の現場とセットの施設だが、展示はもちろん、カフェや売店も完備した、きちんとした博物館)。市街中心部にある、旧ミッドランド鉄道の建物を再利用している。1998年のヨーロッパ博物館賞を受賞したと、大きく垂れ幕が出されている(賞を取ったAward winnning というのはよく博物館を紹介する際に使われる枕言葉だが、地元の観光協会の賞、などというのとは違って、これはさすがに権威があるらしい)。
 受付では、音声解説装置(番号入力のIC型)を渡してくれる。ワークショップや実技見学のスタジオツアーは、あいにくこの日はなしで、展示室見学のみ。
 展示内容は、「コンサベーターは、資料のお医者さんです。」という解説に始まって、
・資料が何からできているか:資料の裏や中を見せる
・破壊の原因(Agents of Decay):人、虫、光、湿度……が影響したのはどれか、光の強さを測る、湿度によって絵がどう伸び縮みするか、害虫のビデオカメラによる観察(ズームもできる)
・調査(Detective Work):X線で絵の下にあるものを見る
・修復は最小限に(Doing as little as possible):鳥の標本から処理前にDNA分析用の皮を保存する、日本の鎧の小手を、錆びているが安定化(stabilize)に留める。
 修復によって、どのように資料が作られそれに何が起こってきたかについての情報が失われてしまうことを避ける、という姿勢がはっきり打ち出されていることには敬服。
・修復:巻物、タイル、陶磁器、等をどう直したか、絵の写真の一部を欠いておいてそこを描かせ、ライトをつけるとそこが見える、粘土で彫刻の描けた部分を補わせる、といった工夫も。各テーマには概説的な説明と、それぞれの資料についての説明が、例えば「3」と「31」といった階層的な番号入力によって音声解説を聞くことができる。
・絵、彫刻の洗浄
 二階は、ガイダンス・ビデオの上映(「これは何の建物?」と聞いても誰も分からない、という冒頭シーンから、仕事の内容を解説していくもの)、 展示としては、資料の移動用具、計測器、梱包材、家庭での保存についてのインタラクティブ画像、マネキンや演示具の制作、など。
 この他、ハンズ・オン・アクティビティーとして、資料の調査、タイルの修復、光の功罪、型どり、等の実習をさせ、また、いずれかの修復スタジオと関連させて、ビデオや実地に基づいて、コンサベーターが実際の作業を説明する「Spotlight on 」という企画などがビデオルームで行われている、と紹介パネルがあった。この部屋は、学校・大学団体には、カリキュラムに応じたハンズ・オン・セッションのために使うこともできる由。
 インフォメーションで聞いたところ、入館者は、週平均で約1000人の由。教育用資料を尋ねたところ、小学校用・中学校用それぞれの立派な冊子体のリソース・パックをくれた。
 自分が職務として関わっている世界なので、知識としての新鮮さはないが、これが独立した博物館として成り立つことを見せつけられたのは衝撃的で、その努力に敬服。やはり、博物館自体の教育機関としての自覚が前提にある。そこで培われた理念と工夫を動員すれば、こんなテーマでも、あるいはだから、十分博物館としてなりたつ、ということであろう。

リバプール博物館 Liverpool Museum
 1999年2月5日(金)昼訪問
 リバプール・ライムストリート駅徒歩5分
 大人£3(NMGM共通) ガイドブック50p(カラー64ページの立派なもの) アクティビティーブック『パターンと形』『ナンバー・サファリ』各50p『これは……からできている』20p(各鉛筆つき) 写真:許可制
 ギリシャ神殿風の壮大な建物。宇宙から恐竜まで、というか、エジプトのミイラから機関車まで、というか、何というか、水族館まで付属した、なんでもありの、「小『大英博物館』」の一つ。自然史部門が特に充実。展示は若干古い感じがするが、2、3年後?を目指して全面更新?改築?の予定で、既に工事が始まっている由。「剥製標本のできるまで」という展示や、ギリシャの彫刻では、ゼウス神の彫刻の語り、という趣向で、各彫刻のライティングと音声による解説が団体向きに(?)あるなど、若干工夫も。日本関係は、例によって刀や根付けなど。The Art of the Samurai という、館蔵品のガイドブックも£2,95で販売していた。
 良かったのは「自然史センター」という部屋で、たくさんの標本にさわることができ、顕微鏡(TV画面に拡大する方式の、歴博の調査室にもある性能の良いのが3台もある)が自由に使える、スタッフ(赤いシャツを着た二人が巡回)に質問ができる、CD-ROMの自然史百科事典が自由に使える、といったもので、午前中は団体に使わせ、午後一般に開放している。並べてある標本は2、3ヶ月で取り替えている由。スタッフはエデュケーターですか、キューレーターですか?と聞いたところ、うーん、と言って、キューレーターとしての仕事をしているデモンストレーター、とのこと。確かに、専門知識が必要。家族連れや学校の宿題?で調べに来たらしい子供などでにぎわっており、標本のスケッチをする場所などもある。こういう施設は、スタッフだけではなく、家族連れなら、例えばお父さんがイニシアチブを取って観察・教育もできるから、これは良い工夫。歴史系博物館でも試みられて良いのではないか。
 なお、この解説員のお兄さんによれば、ここの展示(建物も?)は近く全面更新になるよし。

ウォーカー美術館 Walker Art Gallery
 1999年2月5日(金)午後訪問
 大人£3(NMGM共通) 写真:許可制
 立派なカラー折り畳みシートのガイドは無料。名品図録は£7,95
 アクティビティー・パンフレット『ギリシャ神話』『ショックと恐怖』(がそれぞれ絵画や彫刻にどう表現されているか、といった内容)各20p(鉛筆つき)、テーマごとの作品解説(8頁)が各50p(これは各展示室に備え付け)。
 リバプール博物館の隣にある、これまたギリシャ神殿風の立派な建物。こんなのが4つ?くらい並んでいるから、かつての栄光はすごい。これはナショナルギャラリー風の、中世から20世紀までの古典的名画美術館。特に19世紀のイギリス絵画が充実。
 彫刻は「受賞」展示だそうだが、彫刻が林立する中を自由に歩ける配置で、音声ガイドが3箇所の受話器型装置で聞ける。

<ノッティンガム Nottingham>
ノッティンガム城博物館 Nottingham Castle Museum
 1999年2月10日(水)昼訪問
 ノッティンガム駅から徒歩10分
 無料(週末・祝日は大人£2) 写真可? ガイドブック50p(異常に安いが、展示替え前のものらしい)
 前回「冬期金曜休み」で見られなかったため、仕切直し。
 ウィリアム征服王以来のノッティンガム城だが、17世紀に貴族の館として作り直され、1831年には暴動による火災で内部を焼失、その後市が買い取り、修復の上で1878年に博物館・美術館としてオープン。
 さて、今度は近づくと自動ドアがオープン。無料だが、館内案内図などが何もないし、インフォメーションもなく、どう見たものか、一回りしてやっと構造が分かったが、実は展示自体あまり脈絡がない。
 一階は、「どの資料にも物語がある(Every Objects Talks a Story)」「人生の輪(The Circle of Life)」「装飾美術(Decorative Art)」「みんなギリシャ語(It's All Greek to me)」それに連隊博物館。
 「どの資料にも物語がある」は、実用品・装飾品の色々な資料を色々に並べた展示。例えば、「資料の物語(Object Stories)」のコーナーには、資料の一つに正徳5年銘の阿波の鐘があり(「さわってください」にもなっている)、なぜそれがノッティンガムにあるのかについて、日本の来館者の紹介による地元紙の新聞記事や、廃仏毀釈で廃絶した元の所蔵者である寺の跡の写真などが、ラベルと解説ファイルに紹介されている。
 「これを選びました(People's Choice)」では、一般の人々に一つの資料を選ばせ、なぜそれが気に入ったかを、人物の写真入りのコメントと共に紹介している。横には応募用紙もあり。インド系住民などが目につく。
 「なんだろう(Puzzling Object)」は、ケース内に日本の鐙、靫などもある。ケースの手前には、上にヒントがあり、めくると答え(馬に乗ったときのどの部分か、といった図解つき)が出る「めくりクイズ式」の解説がある。
 一部には、「ノアの箱船」という、壁面に絵を描いて、めくると中の資料(陶器の動物の置物)が見える仕掛けもあり(ボタンを押すと、鳴き声も出る)、こういう専ら子供を対象にした展示も用意している。
 「人生の輪」は、通過儀礼などに使う世界の衣服や道具などを展示。ここは、ガイドブックでは「人類学展示室」となっているので、わかりやすく展示替えをしたものと思われる。日本のよろいも「ステータス」の所に出ている。衣装を着てみて、大きな鏡で見てみる体験もできるようになっている。
 「装飾美術」は、陶器などの展示だが、色々な時代、種類の陶器片をはめ込んで、触ってみて「古いか新しいか」「手作りか機械製か」などを考えさせる展示も。このように触れる展示は、どの展示室でも工夫されている。解説シートは、インド系の言葉など、何種類かが置かれている。
 「みんなギリシャ語」は、陶器などギリシャの資料は展示しているが、資料自体についての解説は全くなく、古代ギリシャの今日の世界への影響(アルファベットとか、デモクラシーとか、ギリシャ語起源の色々な言葉とか)を考える、という展示。資料は、ラベル一切なしで、食器群なら食べ物の模型と一緒に置かれるなど、機能によって説明されている。ギリシャ神話については、The Myth Quiz というめくり式クイズ(表に三択の問題があり、めくると答えと解説が出る。もちろん絵もついている)の展示になっている。
 二階は、絵の展示室と、企画展など。
 地階は、ノッティンガムの歴史。まずノッティンガム城についてのスライドショー、あとは通史的に地域の色々なテーマを追う展示。パネルが多いが、実物資料は、これもテーマに即した、機能自体によって説明する展示になっており、ラベルの全くないケースが多い。例えば、中世に栄えたアラバスターの彫り物(教会などで使う聖者などの彩色浮き彫り)の展示では、制作の過程(道具も)と色彩まで復原した「完成品」を、工房風のケースの中に色のさめた実物資料と同時に展示している。個々の資料の解説はなくても、これなら意味は一目瞭然。ケースの外には、「博物館の石工」が彫った見本を、触れる展示として置いてある。
 売店には、郷土史関係の本などの他、地元工芸作家の作品なども販売。
 教育関係は、「access」というパンフレットによれば、ノッティンガム市博物館美術館の共通のチームとして置かれており、またさらにフリーランス・エデュケーターも12人ほどおり、直接連絡を取るようになっている。イベントは、「みんなギリシャ語」「1941年の暮らし」などのプログラムが博物館ごとにいくつも用意されているが、「on request」となっており、あらかじめプログラムを用意しておいて、学校団体などからの要請があったときに行う、という方式らしい。

ブリューハウス・ヤード ノッティンガム生活博物館 Brewhause Yard : The Museum of Nottingham Life
 1999年2月10日(水)午後訪問
 ノッティンガム駅徒歩10分
 無料(週末・祝日は大人£1,5) 写真可?
 ノッティンガム城の下にある、歴史的な建物(一つ連続したコッテージ)を再利用した博物館。大体ヴィクトリア朝以後の生活道具、部屋、戦前のショッピングセンター、防空壕、などを展示。箱の中のものをさわって当てるクイズ式の展示などもあり。めくりクイズ式のものは、開けたら空襲警報が鳴りだしてびっくり。

<レスター Leicester>
ニュー・ウォーク博物館美術館 New Walk Museum and Art Gallery
 1999年2月10日(水)午後訪問
 ローマ時代からの歴史的都市レスター市の博物館の一つ(他に、郷土史のニューアーク博物館など)。ここがレスター最初の公共博物館で、1849年のオープン。ニューウォークという、両側にジョージアンの建物が並ぶ美しい並木道にあるギリシャ神殿風の建物。
 入ると正面の部屋が改装中で、どう行ったものか分からないが、インフォメーションのおじさんは、こっちでもあっちでも、どこからでもどうぞ、とのこと。でも館内案内図はない、とのことで、やはりこれではわかりにくい。
 展示室は、自然、恐竜、古代エジプト、装飾美術、絵画・彫刻、それに企画展。
 「古代エジプト」は、X線フィルムを展示したり、解説をクイズ式にしたり、言葉作りの回しゲームをつくったり、とわかりやすさに心がけている。
 変わっているのは絵画の展示で、「Discovering Art」というこの展示は、絵の年代などは一切無視して、テーマごとに並べている。内容は、「画家の目(The Artist's Eye)」(パターン、動き、色彩、など)「鳥、けもの、魚」「Art Exposed」(画材、技法。絵の前に材料や制作過程を置く)というもの。紙やクレヨンを置いてお絵かきコーナーを作ったり、お面と布で動物になって鏡で見るみるコーナーがあったり、遠近法を磁石付きの貼り絵で試してみたり、と子供向けの配慮も多い。視覚障害者用に、絵のレリーフと点字をつけたものもいくつか。
 陶磁器などの装飾美術は、だいたい年代順だが、中国と日本は別にケースあり。日本のものは、根付け、刀、能面など、またお決まりのもの。こういう物はイギリスにかなり入っている。
 恐竜の所では、テレビ撮影をしていたが、別に立入禁止にするでもなく、来館者は自由にその辺を見ている中で、でも人のいない時を見計らってやっている。工事も開館しながらやっているし、基本的に無休だから、イギリスの博物館ではよくこういうことがある。
 この他、パンフレットによれば、レプリカの衣装を着たりの体験学習ができる「ディスカバリー・ルーム」があるらしいが、普段公開しているものではない模様。

レスター・マーケット Leicester Market、ギルド・ホール Guild Hall <史跡>
 1999年2月10日(水)夕訪問
 博物館見学の後、町が面白そうなので、一回り。マウンドが残るという城跡付近には残念ながら行けなかったが、700年以上同じ所でやっているという市場(広場に大きな天幕がつけられている)と、14世紀の建築というギルドホールを見学。ギルド・ホールは木造のかわいい建物。ホール内に入れる。暖炉に火が燃えているのはほっとする。老人が一人入ってきて、笑いながら火にあたっていた。一部は、監獄となっていた時代を復原。隣は大きなセント・マーチンズ教会。中世都市の景観が髣髴とされる。立派な建物の並ぶ ハイ・ストリートを通って駅へ。

<マンチェスター Manchester>
マンチェスター科学産業博物館 The Museum of Science & Industry in Manchester
 1999年2月25日(木)午後訪問
 マンチェスター・ピカデリーまたはヴィクトリア駅から、メトロリンク(路面電車)G-MAX下車徒歩5分。
 大人£6,50(MA会員無料) 写真可? ガイドブック£1,50だが、品切れ。
 産業革命後、綿織物で栄えた名高い工業都市マンチェスターの、世界最古の鉄道駅舎(リバプールから綿花を運んだ)などを転用した博物館。やや町外れの「カッスル・フィールド(Castle Field)」にあり、件の駅舎や付属倉庫群など5つの建物からなる壮大な規模。
 入り口にまごついた後、「ローワー・バイロム・ストリート倉庫」という建物から入ったが、ここは展示室としては、「Xperiment」という、実験装置で体験学習する展示、「繊維・織物・ファッション」、それに企画展示室が入っている。「Xperiment」は、テクニクエストなどにあるのと同じ様な物で、学校団体でにぎわっていたが、それほど大きな規模ではないし、倉庫利用の建物なので、暗かったり、今ひとつ。「繊維……」は、素材、原理などをやはりさわったり動かしたりの体験展示にした部分と、実物の織物機械群。企画展示は、この時はかなり鳴り物入りの感じで、「恐竜展」をやっていたが、中では、ジャングルの中で恐竜たちが動き、吠えている。めくりクイズ式の解説も。
 もらった案内図(Site Guide)を頼りに、歴史系の展示がある「1830駅舎(Station Building)」へ行ってみるが、建物の線路に面した部分は、無粋な黒い鉄柱が並んでいたり、ガラスで仕切ってオフィスになっていたりで、あまりそれらしい雰囲気がない。もっと時代を感じさせる修復ないし演出が必要。
 中は、計測、カメラ・コレクション、一等予約ホール(マネキンを使った復原)、メーキング・マンチェスター、地下のマンチェスター、というものだが、低予算の昔風郷土資料館的展示で、あまり感心しない。歴史展示部分はあまり資料がなく、パネルや安手の復原が中心。地下は衛生に関する展示(イギリスではこれが比較的目につく)。目玉の一つにヴィクトリア朝時代の下水道の復原があり、「におい」もする、というのだが、中世の復原などでよく使われている例の(煤けた藁が腐ったような)いやなにおいで、こういう流行は意味がないからやめてほしい。
 向かいの「1830倉庫」は、未来、電気、があるらしいが、行き方もよく分からず、後の展示を見られなくなっては大変なので、パス。
 機関車が前に置かれた「パワー・ホール」では、機関車や蒸気機関の実物や模型が置かれている。巨大な蒸気機関を時間を決めて現在も動かしているのは立派だが、結局それだけで、どうして動くのかもよくわからない。なぜかここにも大きな恐竜が一体。
 最後に、道を隔てた「航空・宇宙展示室」。ここも、19世紀と思われる装飾的な鉄骨の大建築で、中には飛行機の実物がたくさん。二階の回廊状部分に、パネル、ビデオその他の展示がある。いくつかの飛行機には、乗客が乗り込む風景などマネキンが配されて、使用時の雰囲気を出している。大部分はイギリスの物だが、なぜか一つだけ、第二次大戦末期に日本軍が作った特攻有人ロケット「桜花」が展示してあり、あまりに小さな飛行機の前に立つと、こんな物に乗せられる哀しさが伝わってくる。その解説が「ロケット推進の自殺飛行機:最初の自殺用に作られた飛行機(The first purpouse build suicide aeroplane)……」というのもまいってしまう。
 以上、規模の割には工夫も熱意も今ひとつで、ガイドブックも品切れ、というのにちょっとあきれて、せっかくマンチェスターまで来たので、別の博物館も見ることに。

ポンプ・ハウス:民衆の歴史博物館 The Pump House : People's History Museum
 1999年2月25日(木)夕訪問
 科学産業博から徒歩10分
 大人£1(MA会員無料) 写真:許可制、フラッシュ不可
 1909年に作られた水力による動力供給の施設を博物館としたもので、国立労働史博物館(The National Museum of Labour History)の一部(本体の方は文書館とスタディー・センターになっているので、ここはその展示・教育部門、ということ)。
 内容は、労働運動史・人権運動史。資料的には、組合旗などの旗(banner)を多く所有し、織物の修復スタジオも有している由で、定期的にいくつかを壁掛け展示しているが、他にはあまり目立った資料は目につかず、展示はまだ新しい(1998開館か)が、部屋、店などの復原も細切れで、あまりインパクトはない。塗り絵コーナー、「箱作り」の労働体験コーナーなどが若干の教育的工夫。博物館学の研究のため、という理由で申請書を書いて撮影許可をもらったが、あまり撮りたい展示はなかった。企画展示は、既に死亡したホームレスの人々の写真などとコメントでホームレスとホームを考える、というもの。来館者のコメントがたくさん張り出してある。
 ショップでは、ガイドブックは展示のみで、お買い求めは受付(目と鼻の先)で、とあり、どうも全体にお役所仕事してる感じ。「労働党に投票を!」なんていう(昔の)ポスターも出ていたが、ここの創設は現在の労働党政権の誕生と何か関係があるのだろうか?

<ウォルソール Walsall>
ウォルソール博物館美術館 Walsall Museum and Gallery
 1999年2月26日(金)午前訪問
 ウォルソール駅徒歩10分 
 無料 写真可?
 ウォルソールは、バーミンガムから電車20分ほどの地方都市。1220年?から市場があるという歴史的都市でもあり、この日もマーケットはにぎわっていた。
 V & Aでお勧めとして聞いた博物館美術館は、図書館と同じ建物にあり、1892年図書館のスタッフによる収集資料陳列から始まった由。あいにく改修中(late this year に new art gallery がオープンの由)で、有名なGarman Ryan Collection と企画展示室は見ることができず、常設展の「Walsall inside out」しか見ることができなかった。一室だけの、いかにも郷土博物館の趣だが、教育的工夫は一通り凝らされており、小規模博物館の一つの典型。
・「タイムトンネル」:廊下状の部分に、中世からの歴史地図、絵、写真、スライドなど。窓開け展示(中はメダル、レコード、切符など)もいくつか。
・「石灰鉱業」:実大の坑道、焼成模型、出土化石のさわれる展示など。
・「娯楽(Pastimes and Leisure)」:昔のレコードプレーヤーなどを、窓から覗く。
・「何だろう(What is it ? What is it made from ?)」:子供向け展示。昔の湯たんぽなどを、さわれるむき出し展示で。またガラス瓶などを、原料と共に並べて、答えをめくりクイズで。
・衣服:年代別の展示の前に、かぶれる帽子と鏡。
・戦争:体験者の語りが聞ける。
・その他、地場産業らしい鍵の展示、など。
 受付(誰もいなかった)には、クイズ式のシート。各展示コーナーには解説シート。

<バーミンガム Birmingham>
バーミンガム博物館美術館 Birmingham Museum & Gallery
 1999年2月26日(金)午後訪問
 産業革命の栄華を髣髴とさせるヴィクトリア・スクエア前の壮大なカウンシル・ハウス(?)の一画にある。中はかなり複雑だが、
・絵画:19世紀イギリスのラファエル前派の作品が有名で、その展示室は、ヴィクトリア朝時代を模して、壁は薄紫、橙、緑、の各色で塗られている。現代まで。
・自然史:植物・岩石・恐竜、動物など。
・科学:マンチェスターなどと同様の、簡易実験体験展示。これはどこも似たような物だが、ここは新しい展示室らしく、この種の中ではよくできた感じ。
・古代エジプト、古代の人々:大体古典的なケース展示だが、遺物は「お守り」など機能別に展示してあり、比較的分かりよい。
・世界の人々:人類学展示。日本の結婚式の写真も。仮面の模型を付けて鏡で見ると自分がどうなるか、という工夫がよい。
・バーミンガムの考古学:資料若干。人気なし。
・社会史:孤立的下階にある、超古典的郷土史展示。
・企画展示:本館の銀器コレクションと、別館ガスホールの、「Devious Devices」という、機械仕掛けで動く人体の現代美術?。
 といった内容で、新旧混合、新しい試みと取り残されたような部分が混在していて、ちぐはぐな印象だが、だんだん良くなる、ということなのかもしれない。インフォメーションには、家族向きのワークシートが三種類(展示室探検、ブラック・ヒストリー、銀器企画展)。ショップでは、館全体のガイドブックはなく、絵も画家別などで使いにくい。オリジナルの物があまりなく、絵はがきも少なくて有名な物が置いてなかったり、どうも不備が目立つ。
 私が収集している博物館鉛筆は、入ったときは確かあったのだが、帰るときに探したらボールペンしか置いてなかった。どうも、途中にいた小学生の団体が、イナゴのごとく買いあさっていったに違いない。

<オックスフォード Oxford>
オックスフォード博物館 Museum of Oxford
 1998年10月20日(火)午前訪問
 カーファックスタワー(3〜10月、£1,2)のそば、タウンホールと同じ建物(クライストチャーチ側の脇からはいる)。
 大人£1,5、子供£0,5、オーディオガイド£0,5  写真不可
 ガイドブック「The Story of Oxford」£2,99
 先史時代から現代までを扱う典型的な「市立郷土資料館」。いかにも低予算の手作り風だが、考古学的調査の成果を踏まえ、復原模型なども交えてわかりやすい展示になっている。パネルには数カ国語の解説要旨があり、手書きの日本語(なぜか途中で切れていたり、訂正してあったりする)も見られる。各時代の都市の変化を現在の地図に落としているのは、もっとも知りたいテーマの一つで、大変よい。図録にも掲載して欲しいし、歴史地図を買って帰れるとなおよいのだが。
 オーディオガイドはテープ式のものだが、場所の移動に気を配っているので、なんとか最後まで付いていけた。45分で、BGMも入ったなかなかの力作。
 売店で子供向けのパックなどの有無を聞いたところ、ワークシート(時代別に9種類、各20ペンス)を出してくれた。

アシュモレアン博物館 Ashmolean Museum もう一つの「大英博物館」
 1998年10月20日(水)午後訪問
 無料だが、入り口の献金箱に£2の寄付を要請する掲示。 写真不可。
 エジプト、ギリシャ・ローマ、イギリス、東洋(日本もあり。近世絵画、陶磁、印籠・根付け、などの他、人物埴輪、勾玉なども若干。企画展として「南画」をやっていた)、イスラム、等々何でもありの、まさにもう一つの「大英博物館」(絵画もあるので、プラス ナショナルギャラリー)。BMのような巨大な展示物はないが、資料がぎっしり詰まっている分だけ、こちらの方がすごみがあるとも言える。京大文学部陳列館(現京大総合博物館)が使っているのと同じタイプの収納展示ケースがあるのは、こちらが本家と思われる。ただ、古典的なだけではなく、一部に遺跡の復原模型を配したり、調査方法自体に関する展示があったりの工夫も見られる。
 各展示室には、「Hand list」という印刷した目録と参考図書が備えてある。また、テーマごとの解説リーフレットが、一部20ペンスか10ペンスで置いてある(これはBMも同様(価格は50ペンス))。
 教育関係では、古代ギリシャの資料を用いての小学生対象の「Hands-on」活動についてのポスター展示もあり、エデュケーション・サービスも活動していることが分かった。
 売店は、収蔵品の絵はがきが充実。「ジャパニーズ・ネツケ・イン・オックスフォード」など出版もかなりしている。

オックスフォード・ストーリー Oxford Story
 1998年10月20日(木)午後訪問
 大人£5,5、ガイドブック「Guide to Oxford」£1,99(展示の写真はあまりない)。
 ヨークのヨルヴィック・バイキングセンターと同様の、車に乗って見て回る歴史復原施設。解説は、日本語もあり。かなりすいていた。
 オックスフォード大学に関係した、中世以来の著名人物の蝋人形+若干の環境復原、という程度で、ある時点の村自体を復原したバイキングセンターのような迫力はない。これなら、特に車に乗ってみてまわる必要はないとも言える。
 1988年の開館(この年の何かの賞のプレートあり。(こういうのはあちこちの博物館にある。))、年間入場者は16万人、とのこと。ヘリテージ・プロジェクトという会社の運営で、他にヨルビック・バイキングセンター、カンタベリー・テールズ、ホワイトクリフス・エクスペリエンス(ドーヴァー)、ア・デイ・アト・ザ・ウエルズ(東南イングランドのタンブリッジ・ウェルズにあるらしい)もこの会社の運営。「中世の臭い」は、たしかにカンタベリーなどと同じだった。

<ケンブリッジ Cambridge>
フィッツ・ウィリアム博物館 The Fitzwilliam Museum
 1998年11月6日(金)午前訪問
 無料(£3の寄付を要請)、 写真可?
  ケンブリッジ大学の博物館の一つ。150周年の垂れ幕がかかる荘厳な入り口を入ると、すぐに受付があり、荷物を預かってくれ、リーフレットで館内の説明をしてくれる。「顔つき」がいかめしい感じの割にはフレンドリー。二階は中世〜近代の西洋美術、一階は、エジプト、中国・朝鮮・日本・イギリスの陶磁器、ギリシャ・ローマ、武器武具、など。150周年の記念展もしている。オックスフォードのアシュモレアンと双璧だが、こちらの方がすっきりした展示構成で、アシュモレアンの、収蔵展示に近いぎっしり詰め込んだ感じと対照的。大学博物館なら、後者の方が迫力があって、個人的には好き。
 売店では、他の博物館図録なども販売。二階の、小さいが外が見えて感じのよいカフェでサンドイッチをとる。
 パンフレットによれば、エデュケーション・サービスの部門もあり、学校団体の訪問、教師のためのワークショップ、コース、その他色々なプロジェクトを用意している。外に出ると、小学校らしい団体が入ろうとしていた。

キングス・カレッジ・チャーチ <史跡>
 1998年11月6日(金)午後訪問
 £3、写真不可
 16世紀、チューダー朝建築の傑作として知られる。
 身廊の片側に歴史と建築についての展示室を設けている。

ラウンド・チャーチ・ケンブリッジ <史跡>
 1998年11月6日(金)午後訪問
 1115〜1130年に作られたノルマン式の、丸い教会。エルサレムの聖墓教会を十字軍後に模したものという。日本語案内あり。

ケンブリッジ民俗博物館 Cambridge & County Folk Museum
 1998年11月6日(金)午後訪問
 £1?   日本語案内あり。
 建物は16世紀に農家として作られ、17世紀に増築されて1936年に博物館となるまで宿屋だったという。ケンブリッジと周辺で使われていた日常生活用品を収集・展示した典型的な「郷土資料館」。中は、「職業」「台所」など7つの展示室に分類された色々な物がごちゃごちゃと置かれている。あまり洗練された展示ではないが、入り口には「動物探し」の博物館探検クイズシートが置かれているし、展示室の随所には子供向けの、動物の足跡をかたどったマークのついたポイント解説や、靴の形をした企画展との関連させたクイズなどが貼られている。また売店には、エデュケーション・サービス発行の手作りのワークシート・資料集がテーマごとに何種類か置いてある(各2,5ポンド)。聞いてみると、学校からの訪問がある時にワークショップを行っており、そのための資料、という。休日のワークショップなども色々企画している。体裁は古くいかにも低予算の博物館だが、若い女性4人くらいで運営しているようで、志は低くはない。

ケンブリッジ城跡 Castle Mound <史跡>
 11世紀末、ノルマン・コンケストの後で作られた一連の城の一つ。17世紀の市民革命の際にも城として使用。公園化されており、かつてキープ(天守)のあった土盛りは、上ってケンブリッジ市街を一望することができる。

考古学・人類学博物館 Museum of Arcaeology and Anthropology
 1998年11月6日(金)午後訪問
 無料、寄付歓迎。 火〜土曜の午後2時〜4時半開館 写真可?
 古色蒼然たる大学の建物の入り口に看板が立っており、指示通り中庭へ回り込んで見つけたMUSEUMと彫られた入り口は、これまたクラシックな重々しい扉が閉ざされており……、おそるおそる開けてみると、ちゃんとやっていた。進み方が分からずうろうろ見ていると、にこにこ顔の受付のおじさんは、わざわざ館のリーフレットと大学博物館全体のパンフレットを渡しに来てくれた。
 展示は、低予算・手作り風だが、一階の考古部門は、時代別のサインの表示、復原図、石器の使い方を示す腕ニョキ展示、現在のお金も置いたコインの展示、など、どちらかというとわかりやすい展示を心がけている。
 二階の人類学部門も、比較的明るい展示。日本関係は、甲冑、能面、根付け、アイヌの衣装、など。ちょっとだけのケースで展示するとこういうものになるのかもしれないが、古典的すぎる印象。1898年当時の南洋調査関係の資料・動画などを展示した、一種の学史展示もやっていた。
 リーフレットには、ローマ・アングロサクソン関係の、7〜11才向けのアクティビティ・シートが利用できる、と書いてあるので聞いてみたが、あいにく再版中で在庫がなかったのは残念。
 なお、ケンブリッジ大学の博物館は、前記パンフレットによれば、他に、古典考古学博物館、ホイップル科学史博物館、セドグウィック地球科学博物館、動物学大学博物館、ケトルズ・ヤード(現代美術)、植物園、薬草館、スコット極地調査協会、大学図書館、があり、一般に公開されている。植物園以外は、無料。

南イングランド
<カンタベリー Canterbury>
 9月28日(月)他訪問
大聖堂 Cathedral <史跡>
 大人£2,5、60+£1,5
 イングランド教会(いわゆる国教会)の大本山。ここの大司教がイングランドの宗教的指導者としてマスコミにもたびたび登場する。カンタベリーは、この大聖堂を中心とした中世都市として名高い。城壁もよく残る。

聖アウグスト修道院跡 St Augustine's Abbey <史跡>
 大人£2.0
 現存の大聖堂も見事だが、城壁の外にある修道院跡(イングリッシュ・ヘリテージの管理)が興味深い。ヘンリー八世の修道院解散令で廃墟となった修道院の典型。遺物展示のある博物館を併設。音声ガイド有り。案内板には復原図多数。時代順の復原ビデオも屋外にあり。

ウエストゲート博物館
 大人£0,9(NACFで無料)、senior£0,6
 市門の塔そのもの。片側を展示施設に利用。武具、牢獄、古地図等を展示。屋上からの眺望が見事。ハイストリート、大聖堂などが一望できる。
 11:00から12:30、13:30から15:30という変わった開館時間。

ロイヤル博物館 Royal Museum & Free Library
 無料。
 図書館の二階が博物館とギャラリーになっている。
 18,19世紀絵画、陶磁器などと、なぜかエジプトの遺物が若干。あとは連隊博物館。

ローマ博物館 Roman Museum
 大人£2,2、60+£1,45、学生£1,1
 1946年、1990年の発掘に基づく展示。旧市の中心街にあり、当時のモザイクの床がそのまま展示されている。復原ビデオも詳細で見事。店舗の復原展示、遺物分類の体験学習コーナーや、研究展示などもあり。今日的な展示の博物館で好感が持てる。

<ソールズベリー Salisbury、ストーンヘンジ Stonehenge>
 1998年8月18日(火)・19日(水)
ソールズベリー大聖堂 Salisbury Cathedral <史跡>
 8月18日午後訪問
 大人£3、子供£1、家族£6。 写真可
 1220年〜1258年に建設。イギリス随一、ヨーロッパでもケルンに次ぐ尖塔を持つことで有名なゴシック聖堂。中へ入ると、子供に「動物(の彫刻など)を探してみよう」の小冊子をくれる。ボランティアのおじさんか。カフェなども「友の会」のボランティアが中心に運営している模様。写真も自由で、「大聖堂構内の芝生でご持参のお弁当をお楽しみいただけます(日本語パンフから)」など、全体的にフレンドリーな感じ。ガイドツアーも定期的にある由。

ソールズベリー博物館 Salisbury Museum (正式にはSalisbury & South Wiltshire Museum らしい)
 18日午後訪問
 大人£3,子供£0,75 ガイドブック£1
 写真不可(フラッシュから保護のための由、掲示)
 まさに「郷土資料館」。15世紀建造(?)の「The King's House」を博物館に転用。ガイドブックによれば「an independent charitable trust」。(イギリスでは独立の博物館が多い模様だが、「市立」などでも、(また「国立」でも)企業からの献金、宝くじ財団からの補助など財源は多様なようで、明確な線引きは難しいかもしれない。)ストーンヘンジの出土品、中世(大聖堂など)、祭礼、動物、銀器、陶磁器、装束(マネキン使用)、など。カフェあり。

モンペッソンハウス Monpesson House <史跡>
 18日午後訪問
 ナショナルトラストの管理。(会員無料)
 18世紀にモンペッソン家のために作られた邸宅。受付で子供にクイズのシートをくれる(各部屋の「動物(の装飾、絵など)」を探すもの。ちょっとわかりにくく、各部屋の監視(兼ガイド)の人に教えてもらう。)。できると受付で「ティック」(チェック。日本の「マル」に相当)をしてくれ、ご褒美にシンボルのハリネズミ(hedgehog)のシールをくれる。庭(garden)もあり。庭にカフェあり。

 この他、時間が合わず訪問しなかったが、同じエリア(大聖堂周辺)に、Medieval Hall(13世紀)の Secrets of Salisbury という「Sound & Picture Show(30分)」あり。大人£1,5。4月〜10月オープン。 

ストーンヘンジ Stonehenge <史跡>
 8月19日(水)午前訪問
 Salisburyバスステーションから、3番バス(ストーンヘンジ行き)。一日券大人£4,6、家族£9,2。(オールドセイラムでも下車可。)10時発、10:15駅発、10:40ストーンヘンジ着。ナショナルトラスト、イングリッシュヘリテイジ会員は無料。
 すごいにぎわい。ツアーバスも多数。駐車場、券売、店などは低地を利用しており、遺跡からは目に入らない。券売からはトンネル階段を通って遺跡入り口へ。途中に復原壁画。
 音声ガイドあり。6言語。置き場から勝手に持っていき、帰りに返す方式。受話器型IC式。遺跡外に持ち出すと「命を脅かすほどの(?)音が鳴る由(音声ガイドの使用説明音声)」。ロープを張って通路を造っており、中には入れない。
 整備は、今後ガイダンス施設などと共に、周辺(周囲にも遺跡多数)も含めてやり直す予定、と看板が出ている。

オールド・セイラム Old Salem <史跡>
 8月19日午後訪問
 ソールズベリーから遠くないので、バス停には止まるバス数系統あり。
 13世紀にソールズベリーへ移転するまでの旧集落遺跡。内城の入り口を入るとすぐにイングリッシュ・ヘリテージの小屋と券売兼売店があり。その外は自由。大人£2,子供£1。
 鉄器時代からの周壕を利用。丘の上なので、見晴らしは抜群。城郭の建物跡、大聖堂基礎などが残る。案内板などによる比較的単純な整備。発掘後の保存整備に関する説明もあり。

<ブライトン Brighton>
ブライトン博物館・美術館 Brighton Museum & Art Gallery
 1998年10月26日(月)午前訪問
 無料 写真:可?(フラッシュは不可)
 図書館と一緒になった古色蒼然たる建物の中に、古典的な、やや雑然とした何でもある感じの展示と新しい試みが混在している。入り口を入ると、所蔵品の猫の飾りをかたどった大きな猫の献金箱があり、お金を入れると「ご寄付どうも(?)」と声がする。
 テーマは、民族文化、考古、20世紀美術とデザイン、陶磁器(以上一階)、地域史、ファッション、絵画(以上二階)というもの。
 「考古」の続きには「ディスカバリールーム」があり、考古学の方法を体験できるようにしている。柱穴などから復原した住居、土器の分類、観察・計測・記録、人骨一体分の発掘状況を示してその観察記録を作る、顕微鏡、ケースとパネルの一部を空白にして、「あなたの持っている資料を教えて下さい(Do you have an object that tells a story?)」つまり、自分の持っている(拾った?)資料を用紙に記入して送り、適当な物なら展示する、という試み、など。
 二階は美術だけかと思って行かなかったが(この日は子連れ=ベビーカー持参だったため、階段しかないと二階に上がるのはきわめて面倒)、あとで地域史の展示(Brighton History Galleries)もあることに気がついた。ガイド・リーフレット(30p)によれば、店舗の移設復原、「My Brighton」というタッチ・スクリーンでブライトンを探検するシステムなどがあるらしい。「My Brighton」は、住民参加の地域史展示の試みとして博物館関係の本で以前目にしたことがあったので、ショップで売っていたCD-ROMは購入した(£9,95)。
 この週は学校はハーフターム休暇だったため、それに合わせたと思われる子供向けのワークショップ(参加学習)として、バングラディシュ・ダンスというのをやっていたので、エデュケーション・ルームからは太鼓の音がドンドコ聞こえていた。ポスターとイベント案内によれば、Vijay Mehayさんというフリーランス・アーチストが講師。午前は8〜10歳、午後は11〜14歳が対象。無料だが予約必要。外部の専門家を導入するのはV & AやBMとも共通。

ロイヤル・パビリオン The Royal Pavilion <史跡>
 10月26日(火)午後訪問
 大人£4,5 (ブライトンとホーヴ(隣町)の在住者は£1,75) ガイドブック£3,9(?)、アクティビティーブック£1,5。内部写真不可
 ジョージ四世が18世紀末〜19世紀はじめに建造した離宮。外観はインド風、内装は中国風趣味の変わった建物。毀誉褒貶様々だが、個性的で面白いとは思った。現在は家具等も含めて、ジョージ四世時代の忠実な再現が、丁寧な修復によって行われている。キッチンなども、人形こそいないが、食材のレプリカ等をおいて、使用時を髣髴させるようにしている。ネズミまでいるのも楽しい。
 感心したのは、子供向けの配慮。受付(フレンドリーな雰囲気)には、建物の中にいる動物(の装飾など)を探してみよう、というシート、各部屋の内装の色に着目させるシート、など、クロスワードパズルなどをかねた色紙の楽しいシートが4種類おいてある。内一つは、「動物」に着目させた上で、最後に想像上の動物(ドラゴンなど、ここで見たものか自分で考えたもの)の絵を描き、最後に箱に入れて応募すると賞がもらえる、というものだった。また、ミュージックルームという広い一室には、パビリオンの写真と当時の生活(?)の絵の大きなパネルが床においてあるのに気付いたが、よく見るとこれはタイル状の巨大ジグソーパズルだった。この他、ハーフターム向けの企画と思われるが、Dragons & Serpentsという、紙でマスクを作る、という工作教室のような物をやっていた。子供一人50ペンス、Drop-in(予約のいらない立ち寄り式)だが、あいにく昼休みで参加はできなかった。

<ドーヴァー Dover>
ローマ壁画館(?) The Roman Painted House
 1998年11月17日(火)
 後述のホワイトクリフ・エクスペリエンスの手前。ローマ時代の都市の一画に当たり、モザイクを持つ家の跡を保存しているらしい。わりと見せ物的なノリの建物。残念ながらイースターから9月の間しかオープンしていないので、中は見られなかった。

ドーヴァー博物館 Dover Mueum
 1998年11月17日(火)午前訪問
 ドーヴァー・プライオリー(修道院)駅徒歩10分
 大人£1,65 写真可 ガイドブック£1,75
 1836年の設立だが、現在の正面だけヴィクトリア朝の建物は1991年に後述のホワイトクリフ・エクスペリエンスの一部としてオープン。
 石器時代から第二次大戦までのドーヴァーの歴史。実物資料と模型、書き割り、人形などが混在し、ちょっと歴博風。一階はローマ・サクソン時代まで。二階は企画展だが、実は地元画家作品の展示即売を兼ねる。三階は中世以降。各時代の都市の復原模型がよい。この他、ブロンズ・エイジの出土船の展示を準備中。教育用資料は売店にある、とのことだったが、ダンケルク撤退作戦50周年、というのがあるだけだった。売店は、その他地方史の本など。いかにも公立(ドーヴァー州(Counsil)役所?の一部)の博物館。

ホワイトクリフ・エクスペリエンス The White Cliffs Experience
 1998年11月17日(火)昼訪問
 ドーヴァー・プライオリー駅徒歩10分(駅から来ると入り口がわかりにくいが、反対のマーケット・スクエアの側が入り口)
 大人£5,5、ガイドブック£1,95
 ローマ時代と第二次大戦をテーマにした歴史体験館。受付のお兄さんの英語がきわめて分かりにくいが、要するに、展示(体験)室にはトークンを入れて入れ、ということらしい。
 まずローマ。最初にローマ時代を演じマルチ画面が置かれた部屋を通ると、ローマ時代の町並み風復原。薬屋、兵士の住居、港、船の内部、などが配置されている。随所に「?」「!」というサインの付いたボードを自分でめくる解説、人形(色なし)、遺物の本物・コピー当て、兵士になれるか?(素早さ、握力の測定ゲーム)、足踏み荷揚げ機、オールこぎ、などかなり体験展示になっている。ビデオは、人名を選ぶと色々な人物(ローマ人)が出てきて自分を語る、というもの。
 ここを出ると、海軍基地(?)(The Classis Britania Fort)の遺跡が建物内に保存されており、この施設が遺跡の上に、その保存を一つの目的として作られてものであることが分かる。この横には「兵士の物語(A Soldier's Tale)」というホログラム劇場がある。これは遺跡と連動しており、遺跡の上に置かれたスピーカー群から流れる足音がホログラムの所まで来ると人物が登場する、という仕掛けで、薄暗い遺跡の上にザッザッと足音が響くのはリアルすぎてちょっと不気味。
 いったん部屋の外へ出ると、ノルマン時代の教会の基礎部分が屋外に見える。また、ローマ時代から現代までの船を模した子供向けの遊具もある。またトークンを入れて次のコーナーへ入ると、20世紀初期の連絡船の上。待っていると扉が開いて、「マジカル・メカニカル・シアター」に案内される。船と戦場を模した舞台に、機械仕掛けの鳥などのキャラクターが登場して、ちょっとミュージカル風に、ホワイトクリフを模した壁面に写るスライドを解説する、というもの。歴史、特に戦争が内容の中心。終わって次の部屋へ案内されると、煙がたなびいている空襲の跡。だがよく見ると、「爆撃」を受けたのは一軒だけで、あとのお店は平常通り「営業」している。バー、パン屋、ポストオフィス(タバコ屋)などが、中は商品まで復原して、店内の音も流れている。爆撃にあった家では、ビデオで体験談?が語られている。防空壕を通ると、これで終わりで外へ出る。ちょっと案内が不十分で、どう行動したらよいのかまごつく。売店では、教育用パックもあり、地理、第二次大戦、国語、の3種類、各£5で販売。ドーヴァー博物館と共通で、双方を使う内容。隣のカフェの飲み物券もくれるのでサンドイッチと一緒に出してみたら、ケーキにしか使えない由。どうもここは指示がわかりにくい。遺跡や博物館と合わせた総合的な施設として、企画自体は悪くないが、やはり「公立」のせいか、来館者本位の運営をしているとは言い難く、お役所仕事の感じが随所に漂う。遺跡も、中に入れないのではちょっと物足りない。
 (帰国後に見た横浜歴史博物館の同様の施設は、キャラクターが雄鶏であることまで類似しており、ここの縮小再生産的な模倣としか思えない。)
 この他ドーヴァーには、「ドーヴァー・オールド・タウン・ジェイル」という、ビクトリア朝時代を再現した牢獄などもあることが、ドーヴァー博物館やホワイトクリフ・エクスペリエンスのガイドにも書いてあり、博物館の分館となっている由。

ドーヴァー城 Dover Castle <史跡>
 1998年11月17日(火)午後訪問
 ドーヴァープライオリー駅から徒歩30分?
 大人£6,6、ガイドブック£2,95、アクティビティー・ブック£1,99
 ローマ時代からの遺跡を残す。城としては、ノルマン時代に築城され、第二次大戦後まで現役であり続けた。現在はイングリッシュ・ヘリテージの運営。坂を上がった所の切符売りには日本語案内もあり、案内に書かれた地図で行き方を説明してくれる。
 まず、「戦時中の秘密のトンネル」。第二次大戦中に司令部として使われたトンネルを、1984年に最終的に放棄されてから、イングリッシュ・ヘリテージが譲り受け、数年かけて整備、公開したもの。ツアーのみ(一人では迷子になる)。約50分。3:10からのツアー4にちょうど参加できた。まずガイドから見学手順の説明を聞き、ガイダンスビデオ。いったん外に出て、地下病院へ。各室は臭い、音(会話、作業の音など)まで使用時の状態を復原してあり、まず担架に乗った気分ではいると、爆弾の地響きがし、電灯がそのたびに消える。応急処置室?は修羅場。キッチンは料理を盛りつけた皿が並んでいい匂い。手術室はまさに手術中で、薬品の臭いがし、医師が指示をとばしている。と突然停電になって非常灯が点く。電話交換室、信号中継基地などでは、当時の機器も詰め込まれている。人形は使ってないが、狭いし、観覧者自体が体験しているわけだからこれでいい、という考え方か。一つの行き方。解説は、音声が流れてくるところと、ガイドの説明の使い分け。最後に、ダンケルク撤退作戦の当時の実録映画を見て終わり。なお、観客にはベビーカーに子供を乗せた夫婦がいたが、必要なところにはエレベーターもあり、何の支障もなく最後まで来れたのはさすがの配慮。
 外に出ると、あられ混じりの雨。海は晴れていて、フランスがしっかり見えた。
 城内を歩いて、ローマ時代の灯台(ファーロス)。塔の中を覗くと、ローマが感じられる。隣にノルマン以前、サクソン時代の教会。
 さらに中心へ向かうと、堂々たる外観のノルマン式キープ(12世紀)とキープヤード(「本丸と中庭」と訳しているが、「天守と本丸」の方がよい)。18世紀まで使い続けられ改修はあるが、やはり中世そのものの建築。ロンドン塔と並ぶノルマン式城郭建築の典型。一階の展示室には、城についてのガイド映像端末の他、子供のための城主と妃の椅子、顔を出して写真を撮る当時の衣装を書いた板、城の細部の説明カード、こすりだし(ブラス・ラッビングという一種の伝統工芸で、城で暮らす人々、がテーマ)などがあり、それぞれ子供向きの解説が書いてある。
 屋上に出ると、各方面に見える光景を、復原図で説明(日本語もあり)。
 キープの基層部分では、1216年のフランス軍の攻囲を体験する新しいアトラクションが今年から始まっている。3:15まで待って入ると、まず両耳イヤホンに比較的小さな装置が付いた音声ガイド装置を貸してくれる(日本語あり)。音質はかなりよい。赤外線式か?導入部分では、フランス王子ルイと城主ヒューバートの人形がいて(衣装はもちろん、顔もはっきり)、ジョン王の時代に戦闘となった背景を説明。照明もかがり火風(布を下からの風でひらひらさせている)。扉が開いて中にはいると、内部の壁面各所にスライドが投影され、実演の映像が写る。まず守備兵の準備、ナレーションに従って戦闘が始まり、矢が飛び交い、壁が崩され、肉弾戦になり、……臨場感あふれる、というより本当に現場に、当時の建物の中にいるわけだから、これは怖い。続く海戦のシーンでは、風が吹き、しぶきがかかる。ここまでやられれば、ここで何があったのか、なるほどよく分かるが、本物の遺跡をここまで使うか……!と感心。
 「中世のトンネル」は、時間もなく(冬期は4時まで)音声ガイド(これは日本語はない)も借りなかったので、ほんとに迷子になりそう。連隊博物館はパス。城内には無料の「汽車(客車を引く自動車)」も走っており、史跡の整備、活用、解説としては、もっとも行き届いた体験のできる所の一つであることは間違いないだろう。

<バトル Battle、ヘイスティングス Hastings>
 1998年11月25日(水)訪問

ヘイスティングスの戦い古戦場、バトル・アビー Battle Abbey <史跡・博物館>
 BR バトル駅から徒歩10分
 大人£6、ガイドブック『バトル・アビー』£2,25?、『ザ・バトル・オブ・ヘースティングス』£2,95?
 1066年に、ノルマンジー公ウィリアムがイングランド王ハロルドを破り、ノルマン王朝を開くことを決定づけた「ヘイスティングスの戦い」の古戦場、およびその跡に鎮魂のため建てられた修道院バトル・アビーの遺跡。(なお、イングランド史では、これ以前は、ローマ時代を除いて暗黒時代(Dark Age)と呼ばれ、文献史料も殆どない。王家を始め直接現代につながる歴史はこのノルマン朝からで、学校の歴史の授業も、選択科目を除くと、ここから始められる。)イングリッシュ・ヘリテージの管理。
 14世紀の修道院の壮大な門の横を入ると、受付で音声ガイド装置(ICメモリー式)を渡してくれる。日本語あり。構内は私立学校になっているのでわかりにくいが、指示に従って右に進むと、スピーカーの音声が聞こえて来る。ガイダンス施設の中は、戦いに至る歴史的背景を説明するパネル群と板張りの兵士・船などで、あまりぱっとしない。外に出ると、屋外劇場の形でビデオが流れており、この音声だったと気付く。向かいには遺跡全体の模型と音声ガイドポイントがあるのだが、ちょっとわかりにくく、あとで戻って聞き直した。子供の遊び場も用意されているが、遠そうなので行きかけてパス。
 古戦場は、修道院の下に広がるなだらかな斜面。草地として保存されている。「完全ツアー」と「短縮ツアー」の二つが用意されており、道標も色分けされているが、遠そうだし天気も悪いので、「短縮コース」を選択。古戦場を見下ろす道の随所にレリーフの板があり、人物の形と数字も表示されているので、初めてこれが音声ガイドのサインと気付く。音声ガイドは、戦いに参加したサクソンの土豪、ノルマンの騎士、ハロルドの妃、の三人がそれぞれ自分の立場から、戦いに至った事情や戦場で自分がどう行動したかを語る、というもので、レリーフは時間を追って進む形で道に配列されており、音声ガイドもこれに従って戦闘の状況を追っていくから、大変わかりやすく、臨場感に満ちた体験ができる。もちろん架空の物語だから、厳密に正確とは言えないが、地形以外に手がかりのない単調な古戦場を解説する一つの形として評価できる。これも「復原」の一つの形であろう。なお、この三人の他、当時のサクソン人、ノルマン人の歴史的・社会的背景や、武具、戦術などについて、客観的な第三者の解説、あるいは当事者の会話も入る。日本語ナレーションもなかなか本格的。音声ガイドは2、3年前から始めた由。
 修道院の門の建物を利用した博物館は、(修道院関係の)出土遺物の展示や、修道院生活についての復原ビデオなど。
 受付では、子供向けのアクティビティー・シートも用意。修道院遺跡の建築の意味など、これを見て気付いた点も多い。
 なお、バトルの町は、修道院の門の前の広場から、商店、郵便局などのある「ハイ・ストリート」が延びる。つまり、一種の「門前町」であることに気がついた。「博物館」も一応この並びにあったが、イースターまで休館中。

ヘイスティングス城 Hastings Castle <史跡>
 BRヘイスティングス駅徒歩15分
 大人£3、ガイドブック£1,20
 ヘイスティングスの戦いに先立ちノルマンジー公ウィリアムが拠点を築き、戦いの後ですぐに本格的に築城された、イギリスで最も古い本格的中世城郭の一つだが、1287年に崖崩れで大破し、放棄された。その後も存続した修道院跡や城壁などが残る。
 ガイドブックによると、1951年まで個人所有で、ヘイスティングス・コーポレーションに買い取られて証書?はエリザベス王女から市長に渡された、とあり、どうも市の協力の下に会社が運営しているらしい。整備は、芝張り、随所にパネルを配置する標準的なものだが、中央の広場部分には、けばけばしい見せ物小屋まがいの建物が建っており、そこで「ザ1066ストーリー」という、マルチ画面映画(+効果音響・光、ハロルド王とウィリアムの復原人形付き)を上映している。16分。この日は遺跡全体が3:30までで(このころにはもう暗くなってくる)、3時前に着いた私が最後の客だったか、とにかく観客一人ですぐ上映してくれた。内容は、ヘイスティングスの戦いと城の歴史だが、遺跡としての歴史についても詳しく、現在の遺跡の写真上に、イラストでかつての様子を追加して描く工夫が面白い。

<ポーチェスター Portchester>
ポーチェスター城 Portchester Castle <史跡>
 1999年1月8日(金)昼訪問
 BRポーチェスター駅から徒歩20分。
 大人£2,5(EH会員無料) ガイドブック£2,5
 ローマ時代に作られた200メートル四方近い城壁がほとんど残り、一隅に中世の城郭が作られ、19世紀初頭まで使い続けられた城郭。イングリッシュ・ヘリテージの管理。
 イングランドの南岸、軍港ポーツマスに近い、ポーツマス湾の奥に位置する。まさに「ポート」の城。駅からひたすら海岸方向へ歩くと、住宅地を抜けたところに城壁が現れる。ローマ時代からのランド・ゲート(陸側の門)をくぐってはいると、中は芝張りの公園になっており、ここは自由。北西部にある中世城郭部分から、有料。既に城内の受付兼売店の建物を抜けると、1396年リチャード二世時代に改築された宮殿部分。随所に、遺跡の各部分を臨む位置に、そこから見える部分のカラー復原図を入れた解説板。
 ノルマン式の四角い天守(keep)は、12世紀初頭の建築後、14世紀まで継ぎ足し続けたので、ずいぶん高い。一階(グランドフロア)は展示室になっており、城の歴史と、遺物、復原模型など。ローマ時代の復原模型は、回転させることができる。「城内の生活」の説明では、図と解説が交互に現れるように回転できる仕掛け。子供はこの方が喜ぶし、この仕掛けは、考古学の経年変化や様式変化などの説明にも使えそう。執事とその孫が会話(三種類)をする、という実大人形を用いた仕掛けもあったが、壊れている。展示部分のメンテナンスは良くない(建物と城壁は工事をしていたが)。
 二階(ファースト・フロア)は、公式広間としての説明。それより上は、18世紀に捕虜収容に使われていた階の梁が残る。屋上からは、ポーツマスまで見渡せ、遺跡の全景と湾奥の立地がよくわかる。遺跡について図示した解説板あり。
 売店では、図書・文具・玩具(木の刀など)等、EH売店の一般的なもの。子供を飽きさせないアクティビティー・シートもある、とリーフレットにあるので、受付で一部もらう。もちろん図が主体。「天守……通路の奥にトイレがあるのが分かりますか?」やっぱり見逃した。イギリス人が好きなクロスワード・パズルなども。
 ローマの城壁の上は、残念ながら歩けるようにはなっていない。
 中世城郭と反対側のセント・メアリーズ教会は、12世紀の修道院の一部。ノルマン式の簡素・重厚な会堂。現在地区教会だが、中へも入れる。荒廃を経て修復されているため、回廊などは既になく、塞がれた入り口の跡などが面白い。

<ポーツマス Portsmouth>
 1999年1月8日(金)午後訪問
 イギリス海軍の拠点で、現在も軍港として機能している港の、歴史的なドック・ヤード付近を、「フラッグシップ・ポーツマス」と称する歴史地区として、船や建物の保存と公開を行っている。(フラッグシップ・ポーツマス・トラストの運営。個々の施設もほとんど「トラスト」方式。)煉瓦壁に囲まれていて、入り口は警備のおじさんがいるし、なんだか入りにくい。入場自体は無料だが、一度ビジターセンターを通らないと先へ進めないし、出たり入ったり、かなり混乱する。全体図の掲示がないのも不親切。どこにどのような施設があるのか、はじめてくる人間にはかなりわかりにくく、全体にお役所仕事している雰囲気。

戦艦ウォリアー号 HMS Warrior
 1860年建造の、まさに「黒船」。入場料£5,15? 中へは入らず。

戦艦ヴィクトリー号 HMS Victory
 ネルソン提督のトラファルガー海戦の旗艦として有名。1765年完成。 ツアー式の公開。£5,15? 入らず。

メアリー・ローズ展示館 Mary Rose Exhibition
 大人£5,5? (MA会員無料) ガイドブック£2 写真:フラッシュ不可
 日本語案内(無料)あり。
 16世紀前半、テューダー朝、ヘンリー八世時代の沈没した軍艦メアリー・ローズを水中考古学で発掘(1965年から探査、1982年船体引き上げ)した遺物を展示している。船体の展示は別の場所で、最初場所が分からず結局見そこねたが、現在ポリエチレン・グリコールのスプレーによる保存処理中で、2010年頃乾燥の予定の由。展示館の方は時間ぎりぎりで気がつき、見学できた。遺物は、生活用品から大砲まで、実に豊富。一部は復原品を並べている。船体の一部の復原や、発掘についての映画(15分ごと)、当時の町並みの一画を模したコーナーでのスライド・プレゼンテーションなどもある。水中考古学や保存についての展示も。「船大工」のコーナーは、人形も使って復原。
 この事業もトラスト方式で、チャールズ皇太子が長になっており、実際に潜水もした由。

王立海軍博物館 Royal Naval Museum
 大人£3,5? 写真不可
 三つほどの歴史的な建物からなる。入り口が分からず、奥の方の建物から入ると、ここにはネルソンの新しい展示があり、後は隣の工事中の所を抜けて入ると、19世紀・20世紀の展示があります。とのこと。改修中のため、入場料は取っていない模様。帰りにこの「ネルソン展」はひょっとして企画展か?と聞いたら、新しい常設展で、つい十日ほど前に開いたばかり、イースターにはこの建物の残りを開け、さらに来年(?)隣の建物を開ける。大金をかけており、ナショナル・ロッテリーの金を使っている、などと説明してくれた。
 「ネルソン」の展示は、さすがに新しく、AVや子供向けのハンズ・オンなどが豊富。コレクター(研究者)が展示されているコレクションについて語る、手紙を読んでくれる、ネルソンの肖像画ベストテンを端末で解説し、絵の色々な部分(背景の建物とか服の飾りとか)を選ぶとそこの解説が出る、ライフ・マスクやこの展示のために作った顔の復原像にさわれる、また子供向けコーナーでは、ジグソー・パズル、警笛の種類当て、隠された資料にさわって当てる、ネルソンのサインを利き腕でない手でなぞってみる(ネルソンは戦闘で右腕を失っている)、といったもの。大画面のビデオや、インターネット・サイトをサーフィンできる画面、など。なかなか楽しいが、音がすべてスピーカーから出るので、ちょっと騒々しい。
 内容は、「ネルソンの死」から始まる、どちらかというと後世どう扱われたか、が中心の、「ネルソンを探して」という趣のもの。グリニッジの国立海事博物館のネルソン展示が若いときからの事跡をたどる内容なのとはさすがに差別化を図っている。
 別棟の、19世紀と20世紀の展示というのは、いかにも仮展示という雰囲気で、遺品や模型などがごちゃごちゃ細切れに並んでいる程度で、あまりぱっとしないし内容もつかみにくい。それでも、少し高いところで船の操舵輪を動かせる場所とか、多少は工夫をしている。日本関係のコーナーもあり、広島原爆の跡地にあったガラス瓶や、神風特攻隊のはちまき、降伏文書への調印、などが扱われている。
 ショップは別棟にあり、図書が多い。博物館ガイドブックは、旧版のためであろう、£1でセール中だった。オリジナルシャツなども色々置いている。

<ウィンチェスター Winchester>
 1999年2月18日(木)訪問
 ローマ人の都市の後、サクソン時代にはウェセックス王国の都となり、9世紀にはアルフレッド大王が出た。その後も大司教座所在地として繁栄。現在も伝統的建造物群がよく残る、イングランド屈指の美しい地方都市。

ウィンチェスター大聖堂 Winchester Cathedral <史跡>
 大人£2,5 写真可
 ノルマン・コンケスト後、1079年から建設がはじめられ、その後の増改築によって、現在はノルマンのロマネスク様式とその後のゴシック様式が合わさった建築になっている。中心部が古いノルマン式のため、尖塔などはなくどっしりしているが、イギリスで一番長いという壮大な建築。隣接するそれ以前の7世紀以来の聖堂跡は、地表に基礎の跡が表示されている(裏側から入ってしまったので、その場では気がつかず)。
 日本語のリーフレットもあり、写真も可で、フレンドリーな雰囲気。中のガイドブックなどの売場には、大聖堂探検(Winchester Cathedral Trail)という、色紙簡易製本のパンフレットを年齢別に3種類(6〜8才、9〜11才、12〜14才向け、各40ペンス)も売っていて、既にこの種の子供向けアクティビティー・ブックの存在を知っている上の娘(6才)にせがまれて、堂内見学はこれに従ってすることになった。堂内各所にある見所を探し出して、それが何でできているか、どんな人か(なぜ兵士の像と分かるか)、動物(の彫刻など)を探してみよう、語源を考える、といった内容で、年令が上のものは、ポイントは同じようだが、問題が難しくなる。私は、6〜8才向けでちょうどいい。ただ漫然と見ていくより、ポイントを見つけて観察するのは、理解を深める上で大人にも有効。
 ポイントを探していると、赤いバッジを付けた解説ボランティアのおじいさんが寄ってきてさらに詳しく歴史を説明してくれた。大きな蝋燭立てで造った迷路もあり、こういう遊びごごろはいい。視覚障害者用の、さわって立体と平面を理解する模型もあり。ガイド・ツアーもあり。
 ビジター・センターは、売店、食堂、トイレ、おむつ替え施設等。「セール」の貼り紙がたくさん貼られた売店では、土産物の他、イングリッシュ・ヘリテージの「ウィンチェスター」という都市考古学を踏まえた本も販売。食堂「カテドラル」では、中世の食事に由来するという、平たいパンの上におかずを載せた料理(当時は上の肉だけ食べて、パンは貧民に下賜した由)があった。これも工夫。

ウォルヴジー城 Wolvesey Castle <史跡>
 一時は国王を上回ると言われたウィンチェスター大司教の館。中世の建築群は石壁などが残る遺跡となり、その隣接地に現在の館がある。遺跡はイングリッシュヘリテージの管理だが、4月〜10月の間しか中には入れない。

ウィンチェスター大学 Winchester College <史跡>
 1348年創設の、イングランドで一番古い学校という。大聖堂の南、市壁の外の、高い壁に囲まれた重々しい雰囲気の一画。壁にあいた大きな門の前で中を覗いていたら、意外にも守衛さんらしいおじさんが、チャペルを見るならそっちへどうぞ、と言ってくれた。わかりにくくて「プライベート」の方の回廊まで行ってしまったが、チャペルは公開されている。解説などは何もないが、中世にさかのぼると思われる建築。中では、練習中らしい清澄なオルガン音楽が流れていた。思いがけず、こじんまりした、中世が息づいているような大学の構内に入れて、それだけで貴重な体験。

ウィンチェスター市博物館 Winchester City Museum
 入場無料 写真可?
 ハンプシャー博物館として1847年にオープン、1851年には、博物館法の施行を受けて市に移管されて市博となる。大聖堂境内に隣接した現在の建物は、1903年に、当時まだまれだった博物館専用に作られた(purpouse-built)もの。
 建物は3階からなり、1階は様々な遺物を展示した考古展示、2階はヴィクトリア朝時代の店を復原、3階はローマ時代についての展示。目を引くのは1997年にオープンしたばかりの新しいローマ展示で、中央には近隣の農村遺跡から出土したモザイクの床をそっくり床面に展示し、周りも遺物を並べるだけではなく、台所を復原してその中に遺物を置いたり、床のオンドル構造を実物の床の一部を使って示したり、モザイクの床については、同じ様な小さい四角い三色の石を用意して実際に並べてモザイクの模様を作らせたり、と多くの工夫が見られる。
 ハンズ・オン展示については、この他にも、陶磁器や骨などの資料をヒントに従って自分で分類してみるコーナーが三箇所ほどにあった。明らかにエデュケーターがよく活動している博物館で、掲示によれば、化石やローマ時代の遺物を学校の教室での教材用に、あらかじめ作ったセットで貸し出しており(二週間以内、£5)、アウト・リーチと言われる館外への活動も行っている。インフォメーション・パックという、各時代の教材も販売の由だったが、これは受付ではなぜかないと言われた。受付には、「動物探し」と、「歴史探偵」という、年齢別に工夫された二種類のクイズ・シートもあり。ガイドブックは、あたらしいローマ時代のもの(£2,5?)のみあり。
 なお、今後サクソン・中世から現代までの展示を整備するために99年4月から10月まで一時閉館し、アルフレッド大王死去1100年記念に再オープンする由。

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