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『中世の古文書入門』(河出書房新社、2016年)2刷での修正について


この本は、おかげさまで増刷されることになり、2019年1月30日付けで2刷が刊行されました。その際に、一部の解釈を改めた点があります。

第1章の「後醍醐天皇綸旨」の付け年号について、23頁下段〜24頁です。

2016年10月30日の初版では、公的な性格を持たせるために差出側が書いた、と説明していたのですが、2刷(修正したので正しくは第2版なのですが)では、下記のように直しました。

「これらの奉書は公的な性格を持つため、一般の手紙とは少し違う所もあります。公文書の特徴の一つは、日付に年も書くことで、後々まで証拠能力を持つという意味です。綸旨の場合、年が月日の上に書かれることもありますが、ここに掲げた写真では、「正中三」と右肩に小さく書かれています。これを「付け年号」と言いますが、この場合は、もらった側が「後の証拠になる」と考えて書き込んだようです。本来私的な文書である書状が、公文書として機能していく過程を見るようです。」図版の吹き出し解説も、これに合わせて変えました。

付け年号は、室町幕府奉行人連署奉書の折紙のものでは、略式の年号の書き方として最初から書かれるのですが、この綸旨の場合は、後で書き込んだと考えた方がよさそうです。『日本の中世文書』展の図録解説(2-11、執筆は佐藤雄基氏)でもそのように考えていますし、同図録の「平宗盛自筆書状」(2-54)の「仁安二年」という付け年号は明らかに別筆で、そのような慣行があったことが分かります。展示の後で増刷のお話があったため、これを機会に改めた次第です。御諒解いただければ幸いです。




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