このページの目次
「和宮ゆかりの雛かざり」「泥絵と江戸の名所」「印籠」

『もの』からみる近世「和宮ゆかりの雛かざり」(第3展示室)

開催概要

展示名称 「和宮ゆかりの雛かざり」
開催期間 2016年2月23日(火)~4月3日(日)
開館時間 9時30分~16時30分(入館は16時00分まで)
料金 一般420(350)円/高校生・大学生250(200)円/中学生以下無料
(  )内は20名以上の団体
※総合展示もあわせてご覧になれます。
※毎週土曜日は、高校生の入館が無料です。
休館日 月曜 (休日の場合は翌日を休館日とします)
会場 国立歴史民俗博物館 第3展示室 副室

趣旨

幕末の動乱期、波乱にとんだ生涯を送ったことで知られる和宮は、仁孝天皇(にんこうてんのう)の第8皇女として生まれ、「公武合体」の証しとして文久元年(1861)14代将軍徳川家茂(とくがわいえもち)に降嫁しました。

今回の特集展示で展示する雛人形・雛道具類(当館所蔵)は、和宮所用として伝来したもので、有職雛(ゆうそくびな)と呼ばれる種類の雛人形と、江戸七澤屋(ななさわや)製の各種雛道具、御所人形および三ツ折(みつおれ)人形などが含まれます。

上巳(じょうし)(三月三日節)にとりおこなわれる雛まつりの行事は、江戸時代に入ってから広まりをみせ、多くの女性たちの支持を集めました。儀式が定着するにつれ、その装飾は華麗なものとなり、時代時代の流行を取り入れながら、寛永雛、元禄雛、享保雛、次郎左衛門雛、有職雛、古今雛と俗称される多彩な雛人形や、精巧に作られたミニチュアの道具類が生みだされていきました。『和宮様御雛満留』(宮内庁書陵部蔵)や『静寛院宮御側日記』(同)、『和宮様おひゐな御道具』(内閣文庫蔵)などの記録によれば、和宮は、数多くの雛人形を手もとにおき、また上巳にはあちこちと雛人形を贈りあうなど、雛まつりを楽しんだようです。当館所蔵の雛人形・雛道具はその一部をなしていたと考えられ、江戸時代の文化や工芸技術を伝える資料として貴重です。

【展示代表】

日高 薫(ひだか かおり)
【所属】国立歴史民俗博物館 研究部 情報資料研究系 教授
【専門分野】漆工芸史

みどころ

  • 和宮所用と伝えられる雛人形は、有職雛(直衣雛)という貴族的な面立ちの上品な人形で、幕末期の富裕層における雛人形の典型的な作例です。
  • 婚礼調度をミニチュアとして作った雛道具は、約80点を数えますが、当時の流行を反映して、ガラス製の器なども含まれます。江戸上野池之端にあった有名な雛人形店、七澤屋製と推測されます。
  • 御所人形・三ツ折(みつおれ)人形には、和宮が兄の孝明天皇(こうめいてんのう)の形見として譲渡された由緒のある人形も含まれます。

主な展示物(予定)

※内容は変更する場合があります。ご了承ください。

内裏雛及雛道具付御所人形より

  • 有職雛(直衣雛)
  • 御所人形 孝明天皇遺物など 13躯
  • 三ツ折人形 孝明天皇遺物のうち 2躯
  • 須磨明石図屏風
  • 狗張子
  • 牡丹唐草文蒔絵雛道具

など約100点

有職雛(ゆうそくびな)(直衣雛)(国立歴史民俗博物館蔵)

和宮ゆかりの雛人形は有職雛である。有職雛とは、有職(朝廷・公卿の儀礼に関する知識)にもとづき、実際の公卿装束とかわらぬ装束を着せかけた雛人形のことをいい、18世紀後半につくられ始めた。

内裏雛及雛道具(国立歴史民俗博物館蔵)
茶弁当大(国立歴史民俗博物館蔵) 本箱「八代集」(国立歴史民俗博物館蔵)
碁盤(国立歴史民俗博物館蔵) 牡丹唐草文蒔絵雛道具(国立歴史民俗博物館蔵)
蝶足膳(国立歴史民俗博物館蔵) 小倉百人一首(国立歴史民俗博物館蔵)
御所人形「牛若と弁慶」(国立歴史民俗博物館蔵) 三ッ折人形「男まげ」(国立歴史民俗博物館蔵)

 

『もの』からみる近世「泥絵と江戸の名所」(第3展示室)

開催概要

展示名称 「泥絵と江戸の名所」
開催期間 2015年10月20日(火)~11月23日(月・祝)
開館時間 9時30分~16時30分(入館は16時00分まで)
料金 一般420(350)円/高校生・大学生250(200)円/中学生以下無料
(  )内は20名以上の団体
※総合展示もあわせてご覧になれます。
※毎週土曜日は、高校生の入館が無料です。
休館日 月曜 (休日の場合は翌日を休館日とします)
会場 国立歴史民俗博物館 第3展示室 副室

趣旨

幕末に来日したF・ベアトが愛宕山から写した江戸のパノラマ写真を見ると、整然と建ち並ぶ大名屋敷が市街地の多くを占め、現在のごみごみとした東京とはだいぶ印象が違うことに気づかされます。江戸の町の約7割は江戸城や、大名・旗本らの屋敷が建つ武家地で占められていました。地方から江戸に出て来た人たちは、隅田川べりの行楽地や両国や浅草といった盛り場の他に、武家の都の名所として壮麗な表門や長大な表長屋でかたちづくられる大名屋敷もまた見物してまわっています。

そうした大名屋敷は、広重の描く浮世絵の名所絵にもしばしば描き出されていますが、浮世絵ほどには知られていない江戸の民衆絵画である泥絵には、格好の画題となっていました。

当館には全50枚からなる「江戸名所及び諸国名所泥絵集」の他、作者が不明なものが多い泥絵としては珍しく「司馬口雲坡」の署名を持つ「江戸城堀端図」などを所蔵しています。今回の特集展示では、館蔵の泥絵の中から大名屋敷など江戸の名所を描いたものを選び、それに関連する歌川広重の錦絵などを比較展示し、武家の都特有の名所のありようをご覧に入れたいと思います。

【展示代表】

大久保 純一(おおくぼ じゅんいち)
【所属】国立歴史民俗博物館 情報資料研究系 教授
【専門分野】日本近世絵画(浮世絵、江戸後期の風景表現)

みどころ

・鮮やかな青、独特の遠近表現…泥絵特有の画風を楽しむ!
・署名をもつ泥絵「江戸城堀端図」も公開

ベロ藍(プルシアン・ブルー)の鮮烈な色感と誇張された線遠近法(透視図法)を多用しつつ、大名屋敷の外観を特徴的にとらえる泥絵特有の画風をごらんいただきます。泥絵はもともとは司馬江漢や亜欧堂田善といった洋風画家の描く油彩画の質感を模倣しようとしています。しかしながら、本家の重厚な油彩画と異なり、肉筆画でありながらも、おそらくは地方への安価な土産物であったため、グラデーションや点景人物の描写などに量産化を目的としたパターン化が見られます。そうした民衆絵画特有の素朴な画風が魅力でもあります。

一方で、浮世絵の分野で名所絵の第一人者であった広重が描く大名屋敷は、見事な遠近表現で、ほとんど破綻を見せません。霞ヶ関や有馬屋敷など、同じ場所を描いた泥絵と比較して両者の絵づくりの違いを見てください。

なお、江戸の町全体のイメージをお示しするために展示する洋風の「江戸景観図」からは、武家の都らしい市街地の眺望が見て取れます。

主な展示物 


▲江戸景観図 江戸末期(本館蔵)
・泥絵 江戸城堀端図
・泥絵 霞ヶ関図
・江戸及び諸国名所泥絵集
・歌川広重 江都勝景

など約30点(すべて本館蔵)

1. 泥絵 江戸城堀端図 江戸末期 司馬口雲坡
江戸城日比谷門付近の八代洲河岸から西を望んだ風景を描いた泥絵。粗雑なものも少なくない泥絵の中では、描画が比較的丁寧、細密で、また絵師の落款(司馬口雲坡」)がある点で貴重である。
2.江戸及び諸国名所泥絵集 有馬家屋敷 江戸末期
赤羽根橋の北に広がる赤羽根広小路(勝手が原)から、久留米藩有馬家上屋敷に火の見櫓(画面左)と増上寺の塔(画面右)を描く。ただし、画像は反転している。
3. 泥絵 霞が関 江戸末期
霞ヶ関の坂を正面に見る泥絵の定型的構図。向かって右が広島藩浅野家、左が福岡藩黒田家の藩邸。酷似する図様のものが複数知られている。
4.江戸及び諸国名所泥絵集 向島三囲稲荷 江戸末期
花火で知られる隅田川の向島堤から筑波山を望む。
5.江戸名所 本郷の景 江戸時代(安政元年)
歌川広重画、山田屋庄次郎版。山田屋版の「江戸名所」は人物の風俗描写豊かな江戸名所絵シリーズとして知られる。本図は加賀藩邸を背に本郷通りを行き来する人々を描く。
6.東都名所 霞か関之図 江戸時代(天保末頃)
歌川広重画、江崎屋版。天保末頃の広重の江戸名所絵シリーズ「東都名所」中の1図で、霞ヶ関の坂上から江戸市街、江戸湾を眺望する。
7.江都勝景 よろゐの渡し 江戸時代(天保後期)
歌川広重画、川口屋正蔵版。「江都勝景」は、江戸の大名藩邸の外観を画題とした珍しい江戸名所絵シリーズ。本図に描かれる鎧の渡しは、日本橋川を茅場町から小網町へと渡す場所にあり、これに面した丹波田辺藩牧野家の藩邸が描かれている。
8. 赤羽根有馬屋敷前の三美人 弘化4~嘉永5年
歌川国芳画、丸屋清次郎版。赤羽根の久留米藩有馬家の屋敷を背景に三美人を配する。右の二人は武家の女、左は芸妓か。邸内には江戸の名所であった水天宮の幟、火の見櫓が描かれ、路上には、参詣する人々が数多く描かれる。

9. 江戸景観図 江戸末期
江戸の市街を西に向って鳥瞰する視点は19世紀初頭以後のパターンだが、強い洋風表現が異色の作例。江戸最末期の景観で、海上にはお台場も築かれている。

ギャラリートーク

展示解説会:10月20日(火)11時00分~

※開催日時は変更する場合があります。ご了承ください。

『もの』からみる近世「印籠」(第3展示室)

開催概要

展示名称 「印籠」
開催期間 2015年7月28日(火)~8月30日(日)
開館時間 9時30分~17時00分(入館は16時30分まで)
料金 一般420(350)円/高校生・大学生250(200)円/中学生以下無料
(  )内は20名以上の団体
※総合展示もあわせてご覧になれます。
※毎週土曜日は、高校生の入館が無料です。
休館日 月曜 (休日の場合は翌日を休館日とします)
会場 国立歴史民俗博物館 第3展示室 副室

趣旨

当館は、平成25年度に約4000点にのぼる「根付・印籠コレクション」の寄贈を受けましたが、この中には約300点の印籠が含まれます。今回の特集展示では、その中からさまざまなタイプの印籠を選び、当館が以前から所蔵している「牧野義一印籠コレクション」とあわせて公開します。

通常の総合展示ではまだ展示されたことのない初公開の資料や、展示の機会の少ない貴重な資料をみることができます。

印籠は、武家や裕福な町人男性が佩用(はいよう)する携帯用の薬入れとして、近世初期から急速に流行しましたが、当初より装身具としての機能が重視され、高度な工芸技術を駆使した装飾がほどこされました。展示室では、多様な素材や工芸技術、ウィットに富む装飾デザインなどを解説しつつ、都市を中心に華開いた豊かな生活文化の一端をご紹介します。

みどころ

100点を超える展示資料(印籠)のほとんどが、初公開です。

蒔絵・螺鈿・彫漆・芝山象嵌など、江戸時代から明治時代におこなわれた各種技術の粋を集めた細密工芸としての印籠の美をご堪能いただけます。

小型で精巧な工芸品は、明治時代以降、外国人の目にとまり、日本美術愛好家たちの蒐集対象となりました。本展示では、ジャポニスム運動の強力な推進者として知られるルイ・ゴンス(Louis Gonse 1846-1921)や、アメリカの宝飾デザイナー・ガラス工芸家、ルイス・カムフォート・ティファニー(Louis Comfort Tiffany 1848 -1933)旧蔵の印籠も展示されます。

主な展示物 

・根付・印籠コレクション(316点のうち約100点)
・牧野義一コレクション(50点のうち約10点)
・森玄黄斎著『印籠譜』(享保2年刊・復刻本)
・稲葉新右衛門著『装剣奇賞』(天明元年刊)
・輪舞遊楽図屏風 四曲一双

など約120点(すべて本館蔵)

1) こぼれ菊落葉堆朱蒔絵印籠
(牧野義一コレクション)
2) 花籠蒔絵芝山象嵌印籠
(根付・印籠コレクション)
3) 桔梗蒔絵螺鈿印籠 銘「法橋光琳造」 (根付・印籠コレクション)
かつては、アメリカの宝飾デザイナー・ガラス工芸家、ルイス・カムフォート・ティファニー(Louis Comfort Tiffany 1848 -1933)が所蔵していた。
4) 柳下稲架蒔絵印籠 銘「古満休伯作」
(根付・印籠コレクション)

5) 南天蒔絵鞘形印籠
(根付・印籠コレクション)

6) 雲龍蒔絵印籠
(根付・印籠コレクション)
7) 鴨蒔絵螺鈿印籠 銘「観」
(根付・印籠コレクション)

8) 舞楽蒔絵印籠 銘「観」
(根付・印籠コレクション)

9) 茄子蒔絵印籠
(根付・印籠コレクション)
   
10) 屈輪文堆朱印籠
(根付・印籠コレクション)
   

ギャラリートーク

開催日時 7月28日(火) 14:00~
講師 日高 薫(情報資料研究系)