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開催要項趣旨

開催要項

近世きもの万華鏡 -小袖屏風展-
開催期間1994年7月19日(火)~8月28日(日)
日程 前期:1994年7月19日(火)~8月7日(日)
後期:1994年8月9日(火)~8月28日(日)
うち、毎月曜日(7/25、8/1、8、15、22)は休館日
時間 午前9時30分~午後4時30分(入館は4時まで)
主催 国立歴史民俗博物館/朝日新聞社
後援 文化庁

趣旨

国立歴史民俗博物館には近世の染織資料のコレクションとして著名な「野村コレクション」が収蔵されております。小袖から髪飾り・袋物まで、その総数は1,000点ほどにもなりますが、特に注目されますのが近世初期の風俗画「誰が袖(たがそで)屏風」の造形にならって実際の小袖裂(こそでぎれ)を押絵貼りとした二曲一隻の屏風100隻です。

通称、小袖屏風。ここに貼装されている小袖は、辻が花、縫箔(ぬいはく)、寛文小袖、慶長小袖、元禄小袖、友禅染など、近世の服飾界を彩った小袖の諸相を網羅し、当代の染織資料として重要な位置を占めています。すでに本館では、昭和61年に「近世の小袖意匠~野村コレクションより~」と題しまして小袖屏風10隻、小袖18領の展示をいたしましたが、今回の企画展示ではこの特徴的な小袖屏風に焦点を当て、その全容を紹介したいと考えております。

さらに本企画展示では、本館蔵の100隻のほか、これまで所在不明であったもの、あるいはまったく未紹介であったものなど6隻の小袖屏風を加え、現在までに確認されている小袖屏風のすべてを公開できることになりました。また、誰が袖のかたちに成形されていながら屏風に貼装されていない小袖裂や、改装前の裏地に記されていた墨書なども今回はじめて展示し、小袖屏風にまつわるさまざまな側面を紹介するように企画しました。

このコレクションの旧蔵者である野村正治郎氏(1879-1943)は、明治から昭和初期にかけて京都の古美術商として活躍しました。野村氏の没後、コレクションは遺族の転居に伴いアメリカに渡りましたが、およそ20年前に里帰りを果たし、昭和58年に本館の収蔵するところとなりました。小袖屏風は昭和16年に全100隻が恩賜京都博物館(現京都国立博物館)で展示され、里帰りして間もない昭和48年に東京国立博物館で約50隻が展示されましたが、大規模な展覧の機会は少なく、惜しくもその一部が紹介されるのみでした。

残念ながら、会場等の都合で全作品を一時に展示することができず、前・後期の2期に分けて展示することとなりましたが、100隻に小袖屏風が公開されるのは国内では昭和16年以来半世紀振りであり、小袖屏風関係の資料が一堂に会するのは、これらが制作されて以来はじめてのことであります。この展示を通じて、近世の美意識と近代の創造性とが融合した小袖屏風の特質を御理解いただき、わが国の染織文化とそのあり方について理解を深めていただければ幸いです。

黒輪子地(りんずじ)鼓滝模様絞縫(しぼりぬい)小袖

鬱金(うこん)絖地(ぬめじ)桐段雪輪模様絞縫小袖