企画展示をより楽しく、より深く鑑賞していただくため、本館の広報担当職員が企画展示の担当者から展示の見どころや作り手の気持ちを取材します。
今回は3月10日から開催する企画展示「大ニセモノ博覧会-贋造と模倣の文化史-」の代表者である西谷大教授(研究部考古研究系)にお話をうかがって来ました。
第3回 ニセモノの地域性(2)
西谷:山口の家に伝わる雪舟の絵を展示プロジェクトメンバーである美術史専攻の研究者と一緒に見に行ったんですが、彼はプッと笑ってました(笑)。
- どうしてですか?
西谷:雪舟というのは基本的に山水画なんですよ。でも山口の家が持っていたのは鷹の絵なんです。その美術史の研究者に見てもらったところ、やはりニセモノでした。そして、鷹の絵にはちゃんと鑑定書が付いていて、こちらはホンモノ。
- すでに題材からして怪しいんですね。
西谷:ちなみに美術史の研究者がどういったところで真贋を判断しているかと言うと、一つは落款(らっかん)
- そういった力はどうやって磨くんですか?
西谷:とにかく本物を見続けてセンスを養うそうですよ。ちなみに山口の雪舟の絵は、その美術史の研究者に言わせると明治のタッチらしいです。この家のおじいさんは最後までホンモノだと信じていたらしいですが。
- 知らなくてよかったかもしれません・・・。
西谷:次に大石内蔵助の手紙のニセモノを見てください。これを見ると本文は素人には何を書いてあるのかよく分かりませんが、「大石内蔵助」という署名だけははっきり書かれていて素人目にも読めます(笑)。これがニセモノを作るときの一つの手口なんですね。
- そうやって客の心をくすぐるわけですね。まんまと騙されそうです。
西谷:今回、そうした真贋を見分けるポイントを解説した「教授のつぶやき」というキャプションを設置します。先ほどから話に登場している美術史の研究者に、作品ごとに専門家はこう見ているという説明をつけてもらったものです。真贋を見分けることが今回の展示のテーマではありませんが、楽しみ方の一つとして置かせていただきました。
- 専門家に解説していただけると、ちょっと自分も分かったような気がして楽しいですね。
<第4回に続く>