開催概要
文字がつなぐ-古代の日本列島と朝鮮半島-
日本約220点、韓国約80点 日本初公開作品も含む約300件の資料と書を一堂に公開!
古代文字で読み解く両国の交流の歴史
必見!国宝「額田寺伽藍並条里図」実物公開!
奈良時代に描かれた古代の風景がカラーで現代に蘇る!
奈良時代の絵図で、麻布に顔料をもって描かれています。古代の寺院伽藍と寺領が詳細に記されており、古代の景観や土地利用のあり方を具体的に知ることのできる貴重な資料です。経年による傷みがかなり進行しているため、今回、7年ぶりの展示となります。10月15日(水)~11月16日(日)の限定公開。11月18日からは、本図を科学的に調査した上で当初の姿を推測して作成した復元複製を展示します。
展示の趣旨
古代から朝鮮半島と日本列島は、ともに中国の漢字文化を受け入れ、はぐくんできました。日本では、7世紀後半から9世紀にかけての木簡が、藤原京や平城京からだけでなく各地からも数多く出土し、古代の日本列島で文字による政治が活発に行われていたことが明らかになりましたが、そのルーツについてはよくわかりませんでした。『古事記』『日本書紀』などといった古い歴史書には、漢字文化が朝鮮半島から伝わったことが伝承として記されています。ただこれまではどうしても“漢字のふるさとは中国”という意識が強すぎたために、「漢字文化の来た道」を学問的に検証することは困難だったのです。
ところが、韓国では1970年代末以降、5~7世紀の石碑があいついで発見され、さらに90年代末からは、日本の木簡のルーツとなるような木簡が次々と発見されるなど、朝鮮半島の古代文字文化の様相がしだいに明らかになってきました。日本においても近年、文字を使って政治を行いはじめた7世紀代の木簡が数多く出土するようになり、それぞれの文字文化をつなぐ資料が、私たちの前に姿をあらわしはじめたのです。このような流れをうけて、日本と韓国の研究者の間で古代文字文化に対する関心が高まり、両国間において様々な研究協力や学術交流が進められるようになってきました。その結果、今まで考えられてきた以上に、古代の日本列島と朝鮮半島が文字によって深くつながっていたことが、明らかになりつつあります。
今回は、このような研究成果を踏まえ、韓国の研究機関の全面的な協力を得て、古代の朝鮮半島から日本列島へ、文字文化が受け入れられ、それが形づくられていく過程、さらには文字文化を媒介とした両地域の交流の歴史をテーマとした展示を開催し、最新の古代文字研究の成果を広くご紹介したいと思います。
【展示代表 紹介】
小倉 慈司 (おぐら しげじ Ogura Sigeji)
1967年東京都生まれ。専門は日本古代史および史料学。
特に、古代神祇制度の研究、禁裏・公家文庫の研究をしている。
1999年に博士(文学)の学位(東京大学)を取得。
宮内庁書陵部編修課主任研究官としての経験を経て、現在、国立歴史民俗博物館研究部准教授を勤める。
見どころ
朝鮮半島の古代文字文化を一望
南山新城碑(なんざんしんじょうひ)第1碑(実物)をはじめ、石碑複製や木簡等の出土遺物(実物・複製)、墓誌(複製)・王興寺(おうこうじ)出土舎利容器(複製)など、朝鮮半島の代表的な古代文字資料が、国立中央博物館・国立文化財研究所・国立海洋文化財研究所という韓国を代表する3研究機関の全面的な協力のもと、約80点出陳されます。その大部分は今回、初めて日本において紹介されるものです。
・武寧王墓誌(ぶねいおうぼし)(複製)は5~6世紀の百済王の墓誌ですが、武寧王は『日本書紀』にも登場し、九州で生まれたとの伝承を持っています。
・釜山の西に位置する城山山城(じょうさんさんじょう)遺跡は新羅が6世紀に築いた山城ですが、『日本書紀』欽明(きんめい)天皇22年条に見える新羅が「阿羅波斯(あらはし)山」に築城したという記事との関連が推測されています。この城山山城を築造する際の荷札木簡(複製)が出陳されます。
「蚫」「畠」は国字?「八十一」は何と訓む?
朝鮮半島と日本列島とで共通する文字文化の姿が明らかになってきました。たとえばこれまで日本で生まれた国字と考えられていた「蚫(アワビ)」「畠(ハタケ)」が朝鮮半島でも既に使われていたことが木簡の出土によって判明しました。朝鮮半島においても日本列島においても、コトバを漢字という外来の文字を使って表わすために、漢字の音と意味を組み合わせるなど様々な工夫がなされたのです。そこには『万葉集』に見られるように、遊びの要素が入ることもありました。その他にも竜王に雨を祈る信仰や魔除けの符号など、共通する文化の姿を木簡によって紹介します。
シルクロードの終着点に伝わった文書と遺物
8世紀の平城京、そして東大寺正倉院はシルクロードの終着点でした。鑑真(がんじん)がもたらした写経(実物)、新羅からの輸入品を購入するための申請書(実物および複製)、新羅の高僧元暁(がんぎょうが)著述し光明(こうみょう)皇后が所有していた新羅の経典(実物)、新羅や渤海(ぼっかい)へ遣わされた官人に関する記録(木簡、正倉院文書複製)、写経事業をになった渡来系氏族出身の写経生による直筆文書(宝庫外正倉院文書 実物)、日本に渡来した唐人の名前が記された墨書土器(実物)などを展示します。長屋王(ながやおう)・淡海三船(おうみのみふね)などの政治家・文化人は新羅使を歓待し、空海は会えなかったことを惜しむ詩を渤海使に贈っています。秋田城からは百済王族子孫の直筆署名のある漆紙文書が発見されました。
さまざまな文字の世界
文字にはさまざまな書体があります。空海は『古今文字讃(ここんもじさん)』と称される様々な書体を紹介した書物を唐から持ち帰り、嵯峨(さが)天皇に献上しています。今まで書名のみが知られていましたが、近年、その写本が紹介され研究が進められています。日本では9世紀にひらがなが生まれました。藤原良相(よしみ)邸跡出土の仮名墨書土器や『伏見院宸翰源氏物語抜書』などのひらがな、そしてかなを装飾的に記す葦手(あしで)(隆房卿艶詞絵巻(たかふさきょうつやことばえまき))などを紹介するとともに、藤原定家の書、また文字をデザイン化した小袖屏風や李朝文字絵も展示します。朝鮮半島では印刷文化が発達しましたが、東アジア世界に大きな影響を与えた高麗版大蔵経(こうらいばんだいぞうきょう)や朝鮮王朝の金属活字の影響を受けた日本近世の古活字版を紹介します。
高句麗広開土王碑 実物大拓本パネル
広開土王碑(こうかいどおうひ)は、高句麗の広開土王(在位391〜412年)の功績を記念して、子の長寿王(ちょうじゅおう)が414年に建てた高さ6.39メートル、幅1.35〜約2メートルの四角柱の石碑で、四面に計1802文字が刻まれています。ここでは、水谷悌二郎氏が所蔵していた原石拓本を、企画展示室前にほぼ実物大のままパネルにして紹介します。パネルのもとになった原石拓本は、写し取る前に判断した釈文を前提に作られた墨水廓填本(ぼくすいかくてんぼん)や石灰拓本よりも資料価値が高いものです。なお、ホールの天井の高さは6メートルあります。
パネルの横には高精細画像のモニターがあり、拓本の中の好きな部分を自由に拡大して見ることができます。下の写真は、「来」という一文字を拡大したところです。
展示構成
プロローグ 中国から朝鮮半島、そして日本列島へ―文字の伝来
朝鮮半島における文字文化の芽生えから、日本列島への本格的な文字の伝来までをたどります。
1.文字による支配
今の私たちが外国の文字に憧れ、外国語が書かれたTシャツを着たりするように、古代においても、外来の文字は支配者たちを魅了しました。やがて文字は支配の道具として、時間、人間、土地、物品の管理などに利用されていきます。人間が作った文字は、逆に人間を支配するようになっていったのです。
2.信仰と文字
文字文化の第二の波は6世紀の仏教伝来でした。仏教の教えを伝えるために、漢字はなくてはならない存在でした。仏教を伝えた百済や新羅といった朝鮮半島の国々はまた、文字文化を伝えた国々でもあったのです。仏教の教えにとどまらず、人々の生活に根ざした「まじないの世界」においても、文字は絶大な威力を発揮しました。
特設 歴博の正倉院文書コロタイプ複製
東大寺の正倉院に伝わる正倉院文書は、奈良時代の政治や社会を知るための貴重な文書群です。世界的にみても貴重なこの文化遺産を未来に永く伝え展示研究に活用するために、歴博では開設以来、実物そっくりな複製製作に取り組んでいます。このコーナーでは正倉院文書の概要や複製製作の過程を動画や画像によって紹介します。
3.文字と生活文化
文字は、時空を超えて多くの人々に伝えることのできる力を持っています。書物の誕生によって学問・文化が発展し、モノとともに文字によって情報が伝えられることにより、宮廷文化が花開きました。それはさらに人々の往来を通じて各地へともたらされていきます。
4.文字を使いこなす
コトバを漢字で表わす―それは決して簡単なことではありませんでした。朝鮮半島での先例を参考にしつつ、さまざまな工夫のうえに漢字による日本語表記が形づくられていったのです。『万葉集』では「八十一」と書いて「クク」と読ませるような遊びもなされるようになり、さらに9世紀以降、書体への関心も高まっていきました。
5.それぞれの道
日本では平安時代になるとひらがなが生み出され、日本語の表記に大きな変化をもたらします。一方、朝鮮半島では印刷文化が発展し、金属活字がいち早く生み出されます。こうして日本列島と朝鮮半島の文字文化は、それぞれの道を歩みはじめるのです。
特設 中世の木簡-高麗船水中発掘-
韓国では近年、水中発掘が盛んに進められています。木簡や青磁獅子香炉など水中発掘によって明らかになった中世高麗の生活文化、東アジア交易の姿を紹介します。
エピローグ 文字文化交流の担い手
文字文化交流の背景には、文字を運び伝えた人々の行き来や介在がありました。倭人の名を記したと思われる朝鮮半島の木簡、新羅の高僧が日本にもたらした経典などの存在は、そのことを端的にあらわしています。
主な展示資料
- 誓幢和上碑拓本、武寧王墓誌 複製:(大韓民国国立中央博物館蔵)
- 南山新城碑第1碑、月池(雁鴨池)出土木簡、「十石入瓫」銘甕:(大韓民国国立慶州博物館蔵)
- 城山山城木簡 複製:(大韓民国国立加耶文化財研究所蔵)
- 高麗青磁宝物船木簡、青磁獅子香炉:(大韓民国国立海洋文化財研究所蔵)
- 金光明最勝王経(百済豊虫願経)(国宝):(西大寺蔵)
- 判比量論(重文),高野雑筆集(重文):大谷大学博物館蔵)
- 買新羅物解文書(重文):(尊経閣文庫蔵)
- 小治田安万侶墓誌(重文)、有銘単龍紋環頭大刀、四分律巻第十七:(東京国立博物館蔵)
- 戒律伝来記(重文):(唐招提寺蔵)
- 大方広仏華厳経(新羅経)(重文),東大寺要録(重文):(東大寺図書館蔵)
- 万昆嶋主請暇解(重文):(奈良国立博物館蔵)
- 秋田城出土漆紙文書、墨書人面土器:(秋田市教育委員会秋田城跡調査事務所蔵)
- 藤原良相邸跡出土仮名墨書土器:(京都市蔵)
- 年中行事障子、日給簡:(宮内庁京都事務所蔵)
- 長屋王願経、宋版一切経、高麗版大蔵経:(宮内庁書陵部図書寮文庫蔵)
- 滋賀県長浜市塩津港遺跡出土起請文木簡:(滋賀県蔵)
- 古今文字讃:(四天王寺大学図書館蔵)
- 錦部君麻呂手実,三国遺事:(天理大学附属天理図書館蔵)
- 西大寺旧境内出土「皇甫東□」墨書土器:(奈良市蔵)
- 長屋王邸出土籤引札木簡、飛鳥池遺跡・平城宮木簡、胞衣壺:(奈良文化財研究所蔵)
- 多賀城跡出土漆紙仮名文書:(宮城県多賀城跡調査研究所蔵)
- 額田寺伽藍並条里図(国宝)10/15(水)~11/16(日)まで実物公開※11/18(火)~は復元複製展示
- 下記作品は、本館蔵
万葉集巻第十一(重文)、千載佳句(重文)、隆房卿艶詞絵巻(重文)、紫紙金字大方広仏華厳経巻第六十三(重文)、成田市八代椎木出土梵鐘(重文)、山辺郡印(重文)、伏見院宸翰源氏物語抜書(重文)、大安寺資財帳(重文)、源氏物語、新羅飯万呂請暇解、王広麻呂手実、紺紙銀字妙法蓮華経巻第四(高麗経) 、正倉院文書 複製、加句霊験仏頂尊勝陀羅尼記 複製、国分松本遺跡出土戸口変動木簡 複製
※資料総点数約300点 内国宝2点、国指定重要文化財16点
※期間中、展示替えを行います。
展示替資料一覧(PDF)
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関連イベント
ギャラリートーク
日程 | 時間 | 担当者 |
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10月18日(土) | 13:30~ | 小倉 慈司 (当館歴史研究系) |
10月19日(日) | 13:30~ | 仁藤 敦史 (当館歴史研究系) |
10月26日(日) | 11:00~ | 小倉 慈司 (当館歴史研究系) |
11月2日(日) | 11:00~ | 仁藤 敦史 (当館歴史研究系) |
11月9日(日) | 13:30~ | 小倉 慈司 (当館歴史研究系) |
11月15日(土) | 13:30~ | 三上 喜孝 (当館歴史研究系) |
11月16日(日) | 13:30~ | 仁藤 敦史(当館歴史研究系) |
11月22日(土) | 11:00~ | 三上 喜孝 (当館歴史研究系) |
11月29日(土) | 15:00~ | 小倉 慈司 (当館歴史研究系) |
12月6日(土) | 13:30~ | 小倉 慈司 (当館歴史研究系) |
12月13日(土) | 11:00~ | 三上 喜孝 (当館歴史研究系) |
オリジナル漢字をつくってみよう
江戸時代に庶民の間で楽しまれていた『(おののばかむらうそじづくし)』を見本として、自分だけのオリジナル漢字を作ってみませんか。漢字に親しみながら、漢字の成り立ちについて学べます。
開催日 | 期間中毎日実施 |
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会場 | 企画展示室A前(エスカレーターの手前) |
参加費 | 無料 |
対象 | どなたでも |
木簡型に万葉仮名を書いてみよう
万葉仮名を使って文字を書くことにより,万葉仮名について学んでみませんか。古代の日本や朝鮮において使われていた文書形態の一つである木簡を模した型に自分の名前などを書いてみましょう。作品にはひもをつけて,しおりとしてお持ち帰り頂けます。
開催日 | 期間中毎日実施 |
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会場 | 企画展示室A前(エスカレーターの手前) |
参加費 | 無料 |
対象 | どなたでも |
スマートフォンによる文字・音声ガイドのご案内
展示場では、お手持ちのスマートフォンで、Wi-Fiによる文字・音声ガイドをご利用いただけます。 展示室で音声をお聞きになる際は、イヤホンまたはヘッドホンをご使用下さい。
文字・音声ガイドをお手元でも体験できます
展示場と同じ文字・音声ガイドを、お手元でもご体験いただけます。スマートフォンだけでなく、パソコンでもご利用できます。
展示場では、お使いのスマートフォンの種類を判別してそれぞれに適した画面になるように調整したものを配信しています。 以下のリンクから、機種ごとの文字・音声ガイドを体験することができます。
携帯音楽プレーヤーを音声ガイドとして使うことができます
携帯音楽プレーヤーをお持ちの方は、音声データをダウンロードできます。パソコン等でダウンロードして解凍し、音声ファイル(MP3形式)を音楽プレーヤーに転送すれば、展示場で音楽プレーヤーを音声ガイドとしてご利用いただくことができます。(ファイル名がそのまま音声ガイドの番号になっています。)
- 音声データ(MP3フォーマット、41個のファイルをzip形式で圧縮、約60メガバイト)
テキストもご用意しました
文字・音声ガイドのテキストを下記に掲載いたしました。
クレジット
制作:国立歴史民俗博物館
歴博フォーラム
第95回「古代アジアの文字文化交流」 (※終了しました)
開催日時 | 11月1日(土) 10時00分~15時00分 |
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会場 | 国立歴史民俗博物館 講堂 |
講師 | 安部聡一郎(金沢大学)、李京燮(東国大学)、田中史生(関東学院大学)、仁藤敦史(本館歴史研究系)、三上喜孝(本館歴史研究系)、平川南(人間文化研究機構)、橋本繁(早稲田大学) |
司会 | 小倉 慈司(本館歴史研究系) |
定員 | 260名(先着順) |
備考 | 参加無料、要事前申込 |
歴博講演会
第371回「文字文化から見た古代の日本と朝鮮」(※終了しました)
開催日時 | 11月8日(土) 13時00分~15時00分 |
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会場 | 国立歴史民俗博物館 講堂 |
講師 | 小倉 慈司(本館歴史研究系) |
定員 | 260名(先着順) |
備考 | 聴講無料、申込不要 |
コロタイプを刷ってみよう-正倉院文書の複製体験-(※終了しました)
コロタイプ印刷の体験を通して、企画展示で展示する正倉院文書の重要性や正倉院文書複製事業の意義について学ぶ体験です。コロタイプ印刷とは、約160年前にフランスで生まれた印刷技術で、ゼラチンを塗ったガラス板で版を作り印刷します。点の集まりで表現される普通の印刷とは異なり、拡大してもなめらかに線や色合いの変化が表現され,また色あせもおこりにくくなっています。
開催日時 | 11月23日(日)、24日(月・振休) 10:30~12:00、14:30~16:00 |
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会場 | ガイダンスルーム |
参加費 | 無料 |
対象 | 小学生以上。ただし、小学生の場合は保護者の方が同伴してください。 |
受付 | はじめに説明(約20分)がありますので、各回の開始時刻(10時30分、14時30分)にお集まりください。 |
※内容は変更する場合があります。ご了承ください。