開催概要
朝顔は古くから多くの人々に親しまれてきました。特に江戸時代以降、文化・文政、嘉永・安政、明治・大正期など、繰り返し朝顔ブームが訪れ、変化朝顔とよばれる、朝顔に見えないような多様な形の花と葉を持つ朝顔が創り出されてきました。特に、朝顔は一年草であるにも関わらず、種子を結ばない変異も種子によって維持してきたことは世界的に見ても特異なもので、幕末の嘉永・安政期にはきわめて多くの品種が創り出されていたようです。
しかし、大正期以降、現在でも広く栽培されている大輪朝顔の栽培が盛んになる一方、変化朝顔の愛好家は次第に減少し、第二次世界大戦後の変化朝顔はわずか数名の愛好家によって維持される状況になりました。幸いなことに、江戸期に起源を持つ変化朝顔の変異の多くは、愛好家や研究者の努力によって現在まで維持されているのです。そこで、江戸時代以降の独創的な知識と技術を駆使してつくり上げられた伝統の朝顔を広く知っていただき、人と植物との関わりを見るべく、当苑では1999年以降、歴史資料としてこれらの朝顔を展示してきました。
今回は、文化・文政期頃(1810年代~1830年代)に武士や庶民の間でおこった「朝顔の第一次ブーム」をテーマとし、当時の変異が現在にも残っていることを紹介します。第一次ブームにおいて楽しまれていたのは、種のできる正木とよばれる比較的単純な変異がほとんどです。展示では、その様子を図譜と現物を対比させて紹介します。あわせて、当時の人々の朝顔に対する知識について、現代の遺伝学や植物学の面から紹介します。
また、くらしの植物苑内のハウス、東(あずま)屋、よしず展示場に、当苑で栽培した鉢植えの朝顔を展示します。
開催期間 | 2020年7月28日 (火)~2020年9月6日(日) |
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会場 | 国立歴史民俗博物館 くらしの植物苑 来苑されるお客様へのご協力のお願い |
料金 | 個人 100円 団体(20名以上) 50円 ※高校生以下は入苑無料です。 |
開苑時間 | 9時30分~16時30分 (入苑は16時00分まで) ※ただし、8月10日(月・祝)~16日(日)は8時30分から開苑いたします。 ※開花の特性上、午前中の早い時間が見ごろです。 |
休苑日 | 毎週月曜日(休日の場合は翌日休苑) ※8月11日は開苑します |
主催 | 国立歴史民俗博物館 |
主な展示内容
●明治時代以降の大輪朝顔25系統程度
●ヨーロッパ・北米産の近縁の朝顔 10系統程度
計 約100系統、約700鉢を展示
★公的機関としては日本最大規模です!
展示風景
1)松島鍬形葉白地紫時雨絞丸咲(咲分け) | 2)黄蝉葉栗皮茶丸咲大輪(団十郎) | 3)黄抱常葉紅覆輪丸咲牡丹 |
4)青尾長立田葉淡青切咲 | 5)青縮緬立田雨龍葉紫車咲 | 6)黄縮緬葉瑠璃筒白総鳥甲吹上台咲牡丹 |
7)黄弱渦柳葉淡水色地青紫吹雪采咲牡丹 | 8)青林風尾長爪龍葉白管弁流星獅子咲牡丹 | 9)青渦顰葉渦小人紅筒白丸咲 |
豆知識 ー変化朝顔の名称-
江戸時代に育まれた園芸植物の中で、変化朝顔には特異な名称がつけられています。第一次ブーム(文化・文政期)の番付表にはその走りが見られますが、第二次ブーム(嘉永・安政期)に基本ができあがります。それは葉の色、模様・質・形、茎の形、花の色・模様・花弁・咲き方・花弁の重ねを順番に記述し、必要に応じて付加してゆく命名法で、現在の遺伝学から見ても非常に理にかなったものです。
たとえば「青水晶斑入弱渦柳葉淡藤爪覆輪采咲牡丹(あおすいしょうふいりじゃっかやなぎばあわふじつめふくりんさいざきぼたん)」を見てみましょう。まず始めに、葉についての記述です。青(葉の色)・水晶斑入(模様)・弱渦(質)・柳葉(形)に分解できますが、これは青葉の水晶斑入で、「渦」と「柳」の突然変異が入った葉であることを示しています。次に、花についての記述です。葉の記述と同様に、淡藤(花の色)・爪覆輪(模様)・采咲牡丹(咲き方)に分解できますが、淡藤の地に覆輪が入った花色で、撫子のような花弁で、采咲という細かく切れた咲き方であることを示しています。
左:青水晶斑入弱渦柳葉 右:青水晶斑入弱渦葉(葉) |
淡藤爪覆輪采咲牡丹(花) |
※7月28日(火)展示解説会、8月10日(月祝)~16日(日)朝顔苗有償頒布、8月22日(土)第257回くらしの植物苑観察会は中止となりました。大変ご迷惑をおかけしますが、ご了承ください。
関連図録等
『季節の伝統植物』 800円
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