開催概要
朝顔がもっているたくさんの突然変異の遺伝子を見つけ出し、変化朝顔というおびただしい数の系統群をつくりあげた、江戸時代後期の朝顔の園芸文化は、世界でも特異であり、その後の明治・大正・昭和の文化にも、大きな影響を与えながら受け継がれてきました。江戸時代後期には、日本は世界の園芸センターの一つとなりましたが、朝顔はその中核的な植物でもありました。したがって、その実態を浮き彫りにすることは、生活文化の特質や技術史を理解することになります。
国立歴史民俗博物館は、1999年以降、辛うじて維持されてきた江戸時代以降の朝顔の系統を収集し、毎年、くらしの植物苑特別企画として「伝統の朝顔」の展示を開催してきました。今、いくつかの遺伝学研究室を除くと、国立歴史民俗博物館は系統を収集・維持していく唯一の博物館となっており、上記のような日本文化とその歴史の理解を促すという意味で、継続的な展示が求められます。
今年度は、江戸時代後期以降の正木系統・出物系統、明治・大正時代以降に流行した正木系統の一種である大輪朝顔、比較としてヨーロッパで栽培されてきた朝顔の近縁種を展示に加え、あらたに平成生まれの変化朝顔約6系統も展示します。
会場 | 国立歴史民俗博物館 くらしの植物苑 |
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料金 | 個人(高校生以上) 100円 /団体(20名以上) 50円 |
開苑時間 | 9時30分~16時30分 (入苑は16時まで) |
写真は過去のものです
展示構成
当苑で栽培、育種した以下の朝顔を展示します。
- 変化朝顔 約80系統
- 明治時代以降の大輪朝顔 約20系統
- 平成になって交配・育種された変化朝顔 約6系統
- ヨーロッパ・北米の近縁のアサガオ 約4系統
※展示系統はすべて鉢植えとします。正木系統・大輪朝顔と出物系統を2つの温室とあずまやに約250鉢展示します。朝顔は一日ごとに開花状況が変化するので、午前7時から9時までの状況を見て、毎日、展示する鉢を交換します。
西欧の朝顔については、大鉢に植え込んだものをあずまやの前の広場で展示します。
関連の催し
朝顔苗有償頒布のご案内
日時 | 8月9日(火)~14日(日)9:30~13:00 |
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場所 | くらしの植物苑・休憩所(佐倉中学校となり) |
価格 | 1鉢 200円(消費税込み) ※解説書付き |
備考 | ※数量に限りがあります。品切れの際にはご容赦ください。(期間中800鉢) 問い合わせ先: 財団法人 歴史民俗博物館振興会 TEL 043-486-8011 |
※ご好評につき、完売致しました。
準備状況
2005年8月31日
展示している系統のなかから、花筒が一度折り返し、花筒の中間に台ができるものを選んでみました。この系統は、花の正面だけではなく、横からもご覧下さい。横から見ると花筒が短くなっているので、この構造がとてもよくわかります。台咲は丸咲が折り返しているもので、この牡丹咲を台咲牡丹といいます。車咲は切咲が折り返しているものを風車に見立ててこの名があり、これが牡丹咲となったものを車咲牡丹、さらに牡丹の部分の花弁が筒状になって折り返すものを鳥甲(とりかぶと)といいます。車咲牡丹の系統は嘉永・安政期にもっとも人気が高かった系統です。詳しくは図録をご覧下さい。
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2005年8月24日
歴博ではじめて展示する系統のなかから、形の異なる牡丹咲をあつめてみました。牡丹とは、雄しべと雌しべが花弁に変化する変異です。種子をつけることはできませんが、そのぶんのエネルギーは花を咲かせることに用いているようです。会期も半ばをすぎ、日長も短くなっているため、花が勢揃いしています。ぜひ、何度でもお越し下さい。
2005年8月17日
獅子牡丹のなかでも原始的獅子といわれているものです。獅子をもつ系統は、現在では花弁が管状になって折り返す系統がほとんどで、この形状が風鈴のようにみえるため風鈴獅子咲とよばれています。写真は花弁が管状にならずに深く切れ込んでよじれたり折り返したりしているのがわかります。
2005年8月10日
『伝統の朝顔』オープン 今年7年目を迎えた、くらしの植物苑特別企画『伝統の朝顔』がオープンしました。一日花の朝顔を出来るだけ長くみなさまに見ていただくために、さまざまな工夫をしておりますが、近年は猛暑が続いておりますので、ぜひ花の美しい午前中早いうちの観覧をおすすめします。是非お越し下さい。会期は9月4日までです。
2005年8月3日
出物系統の親木です。花びらがとがっているのが桔梗咲の特徴です。葯が花弁に変化することもあり、八重になるものもなかにはあります。これも歴博ではじめて栽培、展示する系統のひとつです。出物が楽しみですね。
2005年7月27日
ちょっと見ただけではアサガオとはおもえないアサガオです。写真は歴博ではじめて栽培、展示する出物系統のひとつです。これは親牡丹で、「牡丹」といわれる雄しべと雌しべが花弁に変化した花は、種子をつくることができません。今年度はトップページにあるような吹詰牡丹という変わった咲き方をするアサガオも展示します。
2005年7月20日
つるは巻きつく性質を失っており、いったん上へ向かったあと、下へ下へと伸びていく、「枝垂(しだれ)」という系統で、花も葉も下向きにつきます。枝垂は戦後になってから大輪の朝顔から発見された比較的新しい変異ですが、写真は、さらに平成になってから九州大学で新たに作られたうちのひとつです。
2005年7月13日
写真は歴博ではじめて栽培、展示をする系統のひとつです。糸柳葉という柳と笹の複合した系統で、柳よりも全体にさらに細くなります。アサガオの葉色には青葉と黄葉があり、いままでご紹介してきたものは青葉の系統で、8月下旬頃から花を咲かせますが、今回展示する黄葉のものは花芽が早くつくようですので、オープンと同時にいくつかの花がみられることと思います。葉が細くなるものにはほかに針葉がありますが、こちらは葉が撚れません。
2005年7月6日
アサガオは多面発現といって、葉や花、茎などさまざまなところに隠れ持っている性質が現れてきます。ほとんどは自家受粉ですが、人工交配による交配実験の結果、美しい花を得たり、さらにかくれ持っている性質がわかることもあります。 写真は、九州大学で平成になってから作られた系統のうちのひとつです。まだ遺伝子がきちんと安定しておらず、同じ系統番号の種子を播いてもいろいろな性質が現れてきています。どんな花が咲くのか楽しみですね。