開催概要
いわゆるメロンの仲間を指すウリ、そしてヒョウタンは、いずれもウリ科に属しており、古くから人の生活に深くかかわってきました。ウリは弥生時代以降日本に伝わり、果物あるいは野菜として育成されてきました。歴史的に見ると、雑草メロン、マクワウリ・シロウリ、モモルディカメロン、マスクメロンと多様で、時代によって趣向・用途も変化してきました。一方、ヒョウタンは縄文時代初頭には日本に伝えられ、日本人とのかかわりは1万年間にも及んでいます。一部で食用とされた以外はほとんどが器の材料として育成されてきました。こうした事実は、遺跡の発掘調査や文献史料から知ることができますが、歴史的に古い形質や遺伝的性質をもったものが各地にほそぼそと伝えられ、それら生きた資料から実体を知ることができます。
国立歴史民俗博物館では、縄文時代以来の形質をもつウリとヒョウタンの系統を収集してきました。奈良・平安時代のメロンなども含まれます。今回の展示は、これらを育成・展示し、生きた実物をとおして生活文化の歴史の理解を促そうとするものです。
会場 | 国立歴史民俗博物館 くらしの植物苑 |
---|---|
料金 | 通常入苑料に含みます。 |
開苑時間 | 9時30分~16時30分 (入苑は16時まで) |
休苑日 | 毎週月曜日(ただし、月曜が祝日の場合は翌日) |
主催 | 国立歴史民俗博物館 |
展示構成
企画の概要
ウリ科は連作を嫌うため、すべてポット植えで展示します。
ウリは古代から現代までの13系統をトンネル仕立てで展示します。
ヒョウタンは縄文時代から現代までの11系統を棚仕立てで展示します。
展示の解説
展示解説パネル(6枚)をあづまやに設置します。
準備状況
ウリとヒョウタンは、どちらも果菜類の代表として世界中で古くから親しまれてきました。人とのかかわりの歴史が古くかつ深く、世界各地の民話や伝 説の中にもよく登場してきます。果菜とは、野菜の中で果実を食用として利用する植物を指しています。利用の仕方はさまざまですが、利用する部分はおおむね 果実に限られていることから、ウリもヒョウタンも、その名前から果実の形を思い浮かべる人が多いと思います。
ウリの温室 (手前の長いウリは「ヘビウリ」) |
「シャランデ」の幼果 (プリンスメロンの父親となった種) |
植物苑入口のヒョウタン棚 | 「小ヒョウタン」の幼果 |
季節の伝統植物・夏「ウリとヒョウタン」展オープン
7月23日(火)~9月29日(日)まで約2ヶ月間も続く特別企画展示がスタートしました。前日には関係者が集まり内覧会が行われ、辻展示プロジェクト 委員代表の説明会がありました。生育の状況や植物の特性から、会期の前半は様々なウリ、後半ではいろいろなヒョウタンを中心に見ることができます。
植物苑入口 | 温室 | 畑 | 正面広場 |
ザッソウメロン
日本でのメロンの歴史は弥生時代にさかのぼります。当時は、果実が直径2cmから最大でも10cm程度のザッソウメロンと名付けられたものが主流でし た。これらは現在、瀬戸内海や九州の島々に残存しています。写真はザッソウメロンの中でも最小の果実をつける種類で、雌しべと雄しべのそろった両性花で す。大阪府立大学前教授の藤下典之先生によると一株に果実が750個以上もつくそうです。現在、水耕栽培を行っておりますが、一体どのくらい果実がつくの か楽しみですね。
果実は葉に隠れていますので、あずまやの中よりご覧ください。 |
最近の様子(1)
ウリの栽培風景 | 植物苑で育った いろいろなメロン |
ヘビメロンと 世界で一番小さいメロン |
ヒョウタン棚 |
平安の都人が食べたといわれるモモルディカメロン (八丈島ではババゴロシと言われています) |
最近の様子(2)
大長ユウガオ (ウリ科ユウガオ属) カンピョウを作るユウガオです。 |
ヒョウタンの花 ユウガオ属の花は、ガを呼びよせるために夜、白い花を咲かせます。なかなか見ることのでき ない花です。 |
マクワウリ (ウリ科キュウリ属) キーマクワで親しまれているマクワウリです。 |
かもうり 漬物用に作られるシロウリです。学名の Cucumis melo var. conomon のconomon は、香の物からきています。 |
コヒメウリ
大きさや丸い形、色もピンポン玉にそっくりの小型のウリです。メロンの変種で学名をCucumis melo var.hime といいます。新潟県新津市や村上市では、今でも旧盆の供物に使われ、朝市でも売られているそうです。
このほかに行事などでコヒメウリをお使いになる地方をご存知の方や、何か情報をお持ちの方はぜひ教えてください。
コヒメウリ | コヒメウリ | 断面 |
ヒョウタンとユウガオ
一見違うようにみえるこの2種類ですが、実は同じLagenaria siceraria という学名がついています。一般にヒョウタンはくびれたものと思いがちですが、球形やナス形、首の長いフラスコ形やヘビのように長いものまで様々です。 ヒョウタン類は苦味が強いため、一般には果実を食用とはせずに、乾燥させて加工し容器などに利用しています。一方、ユウガオ類はヒョウタンの苦味の少ない ものを食用に選抜しているうちにできたと考えられ、果肉を薄く剥いて干し、干瓢(かんぴょう)として利用されています。干瓢にするユウガオは、ぼってりと した丸形のものが多いのですが、大長ユウガオという枕のようなユウガオもあり、こちらは加工せずに煮物や汁の実などにされます。
大長ユウガオ | カーリング | 中国ヒョウタン | ヒョウタン棚展示風景 |
最近の様子(3)
雨が続き、朝夕が少し冷えるようになって、ウリは終盤をむかえ、ヒョウタンもすっかり葉が枯れてしまいました。しかし、葉の陰に隠れていたヒョウタンが あらわに見えて、様々な形が一目瞭然です。あと10日ほどで展示期間が終了しますが、ユウガオカボチャはまだまだ威勢よく伸びて、手のひらほどの大きな黄 色い花もまだまだ見ることができます。
ヒョウタン棚 | ヒョウタンポット | ユウガオカボチャ |
ザッソウメロン(2)
あずまやで水耕栽培をしていた2本のザッソウメロンも終盤をむかえました。これは瀬戸内地方の種で、ザッソウメロンのなかでも最小果をつけるものです。 5月末に小さな5mmくらいの種子をまき、8月には分枝してネット一面になりました。1つの果実は約2cmで、数えたところ、2株で350個ほどの果実が ついていました。苦味が強く、そのまま食べることはできませんが、対病性に強く、メロン Cucumis meloの仲間は、果実の形が大きくても小さくてもすべて自由に交雑できるので、最近ではこの強い対病性が育種素材として活かされつつあります。植物苑で地這い栽 培しているこのほかのザッソウメロン4種も、長雨が続き泥をかぶっても病気になることなく黄色に熟しています。
ザッソウメロン |
刊行物のご案内
「夏:ウリとヒョウタン」 展示図録
カラー、48頁(季節の伝統植物共通)
- くらしの植物苑関係の図録・絵葉書等の刊行物についてのお問い合わせ
- 財団法人 歴史民俗博物館振興会
電話:043-486-8011(9時30分から17時00分まで) / E-mail:shop@rekishin.or.jp