植物のきらめき

  • 執筆者:吹春公子(本館研究支援推進員)
  • 公開日:2005年4月29日

風薫る若葉の季節、くらしの植物苑や近隣の雑木林では落葉樹も常緑樹も、それぞれ異なる色の新芽を伸ばしはじめています。さわやかな初夏の風に、それはとてもきれいな眺めです。おおげさに言えば、‘金銀きらめいて’いるようにも見えます。

金と銀は鉱物の名前、またはその金属の色を表していますが、植物にも「金」や「銀」があるのをご存じでしょうか。もちろん、キラキラと光っているわけではないのですが、例えばランの仲間であるキンランやギンラン。最近では出会う機会が少なくなってしまいましたが、ちょうど今頃、雑木林の明るいところにキンラン、それより湿っているところにギンランが、それぞれ黄色と白色の花を咲かせ、その花色を金色と銀色に見立ててこの名前がついています。秋、香りがよい花で知られるモクセイ科のキンモクセイやギンモクセイも一度は名前を聞いたことがあるはずです。キンミズヒキ(バラ科)やギンミズヒキ(タデ科)は、同じ仲間ではないのですが、やはり前者が黄色、後者が白色の花をつけます。スイカズラ科のスイカズラは別名をキンギンカ、ヒョウタンボクは別名をキンギンボクといい、いずれも開いて1日目の花が白色、2日目の花は薄黄色に変色することからきた名前で、1本の枝に2色の花が見られることからきています。植物ではありませんが、きのこの仲間にも俗称でキンタケ、ギンタケとよぶものがあります。地方により指している種類が違いますが、おおかた前者はきのこの傘色が黄色いシモコシやキシメジ、後者は白茶鼠色のハマシメジなどを指しています。黄を金、白を銀と名前に使うのは、黄金、白銀からきているのでしょう。どちらも古い時代から人々を魅了してきた色です。

苑内には、名前にこそキンやギンはつかないものの、それに近い姿が見られる植物があります。入口正面のスダジイや右奥のシラカシは風が吹くと一目瞭然。スダジイの葉裏は茶色の毛が生えているために光があたると金色っぽく見え、シラカシは無毛ですが葉裏が緑灰色で、これが光をうけると白銀色に見えます。苑中央付近にあるシロダモの新芽は金茶色の毛に被われたうえに葉裏が白く、まさしく金と銀。コナラは白銀色の毛に被われて芽吹き、クヌギの尾状花序は黄金色です。畑のオオムギとコムギは5月半ばには黄金色の麦秋をむかえ、収穫となります。

身近にある植物のなかに金と銀を探してみませんか。ちょっとじっくり観察するだけでいくつか見つかるはずです。ゴールデンウィーク(黄金週間)を利用し、街で森で旅先で、自分だけのきらめきを見つけ出してみてください。