研究成果公開促進費

西洋宮廷と日本輸出磁器 -東西貿易の文化創造-

研究期間:2013年度

研究代表者 櫻庭 美咲 (本館・研究部)

研究目的

本書は、西洋における日本磁器の流行と東西貿易の相互関係を、美術史および貿易史の視点からとらえ、総合的に描き出そうとする学術書である。

本書の執筆にあたり、筆者は、あえて美術史および貿易史研究の立場に徹するよう努めたが、文化史研究や考古学など隣接する研究領域の要請にも応える内容を含んでいる。また、従来の西欧人研究者による研究に欠けていた視点を補う新しい方向性を提示することにより、海外における研究に波紋を投じることを目的とするものである。筆者は、日本人の研究者による西洋宮廷の文化と輸出磁器の関係を探る初めての本格的専門書として本書を刊行することにより、日本における輸出磁器研究の進展に大きく貢献することができると考えている。

17世紀後半から18世紀半ばまでの時代に、日本から西洋へ輸出された磁器は、西洋で独創的な文化を形成しながら受容された。膨大な磁器が有田で製作された理由は、まさにその文化を再生産するためであった。このような目的のために輸出される日本磁器が、蘭・英・中という多様な国の商人によって輸出された史実について、美術史および文献史学の視点から考察を加えるものである。これまで知られていなかった西洋における肥前磁器の受容層の拡張範囲を正確に把握し、流通ルートについては日蘭貿易以外も視野に入れ総合的に再認識することで、対象地域を限定した地域研究的手法が主流となった昨今の日欧における研究で見落とされてきた当該領域の研究に、新たな視座を提示する。