研究成果公開促進費(学術図書)

現代日本漁業誌

研究期間:2012年度

研究代表者 葉山茂 (本館・研究部)

研究目的

本刊行物の目的は、戦後70年にわたる日本の漁業の変遷を人びとの生活世界に注目して論じ、現代の産業としての漁業を主な生業とする人びとが現代にどのような生業活動を営んできたのかを人を主語とした資源利用誌の視点からとらえなすことである。

上記の目的を論じるために、本書では漁業のなかで人びとは(1)どのように生業活動を営み、(2)どのように生計を立てるうえで必要な自然資源を選びとり、(3)自然とどのように関わってきたのかという3つの問いを立てて検討した。この3つの問いはそれぞれ(1)地域社会、(2)漁業者集団、(3)個人がどのように自分のまわりの自然と関わってきたのかを検討するものであり、これらを検討することを通じて人びとの自然に対する重層的な関わりを論じた。検討にはそれぞれ(1)青森県の小泊村(現・中泊町小泊)と佐井村、(2)長崎県小値賀町、(3)愛媛県宇和島市における参与観察と聞き取りの調査から得たデータを用いた。

戦後の70年は産業としての漁業が効率化と増産のために新しい技術や機械などを貪欲に取り入れてきた時代であるが、その営みはしばしば自然と人の関わりが希薄化する過程として論じられてきた。しかし以上の検討から産業としての漁業を人びとの生活世界からとらえ直すと、戦後の70年の漁業の展開は人びとが経験をもって生業世界を更新し、生業の世界を広げていく過程であったことが明らかになる。そしてこの結論から、日本の漁業の未来を検討する上で、生活世界に再度注目することの重要性を論じた。