基盤研究 (B) 一般

国民儀礼化する通過儀礼・年中行事の資料論的研究

研究期間:2011年度~2015年度

研究代表者 山田慎也 (本館・研究部)
研究分担者 青木隆浩(本館・研究部)
小池淳一(本館・研究部)
常光徹(本館・研究部)
原山浩介(本館・研究部)
松尾恒一(本館・研究部)

研究目的

人々の生活の中に浸透し日常を規律していた通過儀礼や年中行事等の民俗儀礼は、現在、地域のコンテキストから切り離されて変容し、均質化してきた。これらの要因について、様々な分析がなされてきたが、大きく以下の四つに整理できよう。まず法令の施行や行政の働きかけ、風俗改良運動や生活改善運動などの影響などを含む(1)政治的要因、出産や終末期、医師による死亡確認など生物医療の進展による(2)医療的要因、またデパートや葬祭業など、儀礼の商品化による消費文化の進展による(3)経済的要因、核家族化と地域コミュニティーの変容、地域の過疎化、少子高齢化などによる(4)社会的要因による変容である。これらの要因は、日本という国民国家形成による動向であり、その作用によって儀礼が均質化している点で「国民儀礼」ということができる。しかしこれらについては実際には相互に影響を及ぼしあって作用しているものの、個別に理解されてきたのであった。そこで、本研究ではその諸要因を分析し、変容の過程を明らかにしたうえで、相互の関係を総合理論化することを目的とする。民俗学においては、地域性を持つ特有の儀礼を中心に研究が進められ、地域のコンテキストを離れた儀礼は対象化されにくい状況であった。だが、現在実践されている民俗を検討するためには、均質化する諸要因を分析検討し総合化することが必要であり、その動態のなかで、改めて地域の民俗をとらえ直すことによって、現代の儀礼の実態が明らかになる。

その際、従来あまり重視されなかった国民儀礼化した儀礼資料について、報告書や動画、画像資料にかたよらず、モノ資料をも含めた総合的な資料論を検討し、現在の儀礼の動態を示す資料収集の方法と方向性の構築をも目的としている。なかでも国民儀礼化した民俗については、地域博物館で体系的、総合的に研究をし、また資料を収集、展示することは限界がある。そこで本研究は、単にその研究成果を出すだけでなく、それを資料の体系的収集の指針を構築することとし、多様な成果に発展する点に特色がある。

現代の民俗に関する資料は、現代資料同様、過去の歴史史料のようにすでに時間を経て選択されておらず、すべてを対象化することとなるが、それは不可能であり、そのなかで何を選択するかその指針を得ることは資料収集のために、きわめて重要であり、同時代研究の資料論にも寄与するものである。