基盤研究(B) 海外学術調査

亜熱帯地域における多民族の生業経済と定期市-海南島と雲南省を事例として-

研究期間:2008年度~2012年度

研究代表者 西谷 大 (本館・研究部)
研究分担者 篠原 徹 (本館・名誉教授)
安室 知 (神奈川大学・経済学部)

研究目的

伝統的な技術でおこなわれてきた農耕は、ある特定の生業に特化するのではなく、農耕、漁撈、狩猟、採集といった生業を複合的におこなうことに特徴があり、これが生態的な環境の多様で持続的な利用につながってきた。

本研究では、中国・海南省の五指山地域と、雲南省紅河州金平県者米地域、そして怒江上流の丙中洛の3つの地域をとりあげ、伝統農耕の実践と政府主導による開発、そして自然環境という3者を、動的なシステム(いきすぎた開発と環境の復元力)としてとらえ、その関係性の解明を目的とする。

具体的には各地域の生業戦略の歴史的変遷を、生態学的な調査から明らかにしつつ、植生調査を実施しリモートセンシング衛星データの分析によって空間的に把握する。対象とする3つの地域の現象は「エスノ・サイエンスによる伝統農耕と環境保全技術」「共同体意識と環境保全」「地域社会の交易とグローバルな市場経済の影響」など、アジア地域の環境問題を考える上で重要な視点を含んでいる。

中国の急速な経済発展は、さまざまな社会的矛盾を生み出すだけなく、激しい環境破壊をもたらした。2006年から開始した第11次5カ年計画は、中国政府が推進している「小康社会(生活に多少ゆとりのある社会)」の達成に重要な役割を担うものと位置づけられている。特に経済を持続可能な成長モデルに転換するため循環型に切り替え、生態系の保護、省エネルギー、資源節約、環境にやさしい社会の建設を加速するといった環境政策の大変革をおこなおうとしている。国家権力が強固な中央集権的な構造をもつ中国において、国家の政策が周辺における伝統農耕にもたらす変容とシステムを明らかにすることで、環境保全と地域社会の生業経済を両立させるモデルを提供できると考えている。