研究活動一覧

科学研究費補助金による研究

平成16~20年度 文部科学省・科学研究費補助金 学術創成研究費:
弥生農耕の起源と東アジア-炭素年代測定による高精度編年体系の構築-

滋賀現地研究会

日時 平成18年7月8日(土曜) 10時~17時
会場 滋賀県立安土城考古博物館
参加者 約60人
内容

司会 藤尾慎一郎
趣旨説明…西本豊弘
年代測定ビデオ上映
報告1   AMS14C年代測定法について…今村峯雄
報告2   歴博における年代測定…坂本稔
報告3   滋賀県出土資料の年代測定…小林謙一,宮田佳樹
司会   小林謙一
報告4   滋賀県の遺跡

  • 竜ヶ崎A遺跡…小島孝修((財)滋賀県文化財保護協会)
  • 赤野井浜遺跡…中村健二((財)滋賀県文化財保護協会)
  • 入江内湖遺跡…瀬口眞司((財)滋賀県文化財保護協会)
  • 下之郷遺跡、二ノ畦・横枕遺跡…川畑和弘(守山市立埋蔵文化財センター)
  • 経田遺跡…森山宗保(守山市立埋蔵文化財センター)

質疑・応答
司会   藤尾慎一郎・小林謙一

研究会の概要

2006年7月8日、滋賀県考古安土博物館で、現地研究会を行いました。会場には、滋賀県各地の資料提供者、国立歴史民俗博物館学術創成研究グループ分担者、研究協力者、スタッフ、近江貝塚研究会、関西縄文研究会、近畿・奈良弥生の会関係者などを加え、総勢60人ほど集まりました。

午前の部

藤尾慎一郎氏司会のもと、歴史民俗博物館の年代測定に関する考え方、実際の測定結果と暦年較正について説明を行いました。まず、今村峯雄氏が、考古学におけるAMS14C年代測定法について概説し、続いて、坂本稔氏が学術創成グループでの年代測定のあり方などを説明しました。  次に、実際の年代測定結果に関しては、前半は小林謙一氏が滋賀県守山市埋蔵文化財センターの資料に関して報告しました。下之郷(しものごう)遺跡と二ノ畦(にのあぜ)・横枕(よこまくら)遺跡出土弥生時代中期の木材のウィグルマッチング法による年代測定結果は、これまで報告されてきた光谷拓実氏の年輪年代法の測定結果と誤差範囲内でよく一致していました。これは、14C年代測定法が確度の高い年代測定法であるという事実を裏付けるものです。また、経田(きょうでん)遺跡、播磨田城(はりまたじょう)遺跡も含めた守山市埋文センターの縄文晩期と弥生中期の土器付着炭化物の年代測定、暦年較正結果はこれまでの報告と整合的でした。  後半は、私が滋賀県文化財保護協会の資料に関して報告しました。入江内湖(いりえないこ)遺跡、赤野井浜(あかのいはま)遺跡、竜ヶ崎(りゅうがさき)A遺跡から出土した、縄文時代早期~弥生時代前期にわたる土器付着炭化物の年代測定、暦年較正結果を報告しました。結果は、これまで報告されてきた土器編年と概ね調和的な結果を示しました。また、これらの三遺跡は低湿地にあるため土器付着物の残りが非常に良く、これまで他の遺跡では難しかった、同一試料を用いての繰り返し年代測定実験を行うことができました。同一土器から複数個所の外面土器付着炭化物を採取した場合(縄文時代晩期滋賀里b式)、炭素年代で100年以上のやや大きなばらつきを示しました。このことは、スス付着時の炭化が不十分な部位では、土器埋没後に土壌との相互作用などにより周囲の有機物が同化してしまい、付着時の炭素年代から少しずれるためかもしれません。同一土器(弥生時代前期初頭長原式)の三ケ所からそれぞれ4回ずつ、異なる測定機関を用いて年代測定した結果は誤差範囲内でよく一致しました。また、縄文時代後期縁帯文成立期の土器付着炭化物を三ヶ所の測定機関で8回ずつ繰り返し年代測定を行いました。各測定機関内では、測定値は誤差範囲内でよく一致しているものの測定機関間では、100年程度のやや大きな差が見られました。この点に関しては、今後もう少し考えていきたいと思います。  さらに、竜ヶ崎A遺跡から西日本最古のキビが土器付着物として出土した事例を顕微鏡観察、安定同位体分析、年代測定結果を併せて説明しました。最後に、このキビの同定を行った松谷暁子氏(國學院大學)からキビの同定に関する補足説明と縄文晩期から弥生時代前期初頭の土器底部に土器付着炭化粒としてキビが存在することの意味に関して説明をしていただきました。このキビは脱穀しているものが多く、おそらくこの時期にキビが(日常食とは言えなくとも)食物として利用されていた直接的な証拠であり、当時、琵琶湖の沿岸で、大陸からの外来作物であるキビが栽培されていた可能性を示唆しています。この発見は、日本列島における栽培農耕及び、食文化のあり方を考える上で重要な手がかりを与えるものであり、弥生時代の農耕を考えていく我々学術創成研究グループにとって非常に意義のあるものでした。

午後の部

前半は、各遺跡資料提供者の方々(小島孝修氏、中村健二氏、瀬口眞司氏、川畑和弘氏、守山宗保氏)から、資料提供を受けた遺跡(竜ヶ崎A遺跡、赤野井浜遺跡、下之郷遺跡、二ノ畦・横枕遺跡、経田遺跡)の概要を説明していただきました。普段なかなか聞くことのできない調査担当者ならではの貴重な情報が聞け、我々年代測定者の側にはメリットがありましたが、資料提供者との連携が未だ不十分であり、今回測定した年代値を利用して遺跡を解釈していくという、方向へはまだ進んでいないように思えました。今後は、もっと密に遺跡の調査担当者(試料提供者)と連絡を取って、年代測定を行いつつ、時には現地に赴き、双方が忌憚のない意見を言い合えるようなよりよい関係を結んでいくことが必要であると思いました。  後半は、総合討論が行われました。繰り返し年代測定実験のばらつきがやや大きいことに関して、いくつか質問があり、上記のような説明が行いました。繰り返しになりますが、今後この点に関してはもう少し検討を加えたいと思います。また、滋賀の土器編年に関して盛んに議論が行われました。近畿や東海の編年などに比べるとまだ整備途中のようで、今回の年代測定結果をうまく活用し、よりよい土器編年体系の構築に役立てていければ幸いです。

(文責:宮田佳樹)

坂本稔氏による報告

滋賀現地報告会の様子