研究活動一覧

科学研究費補助金による研究

平成16~20年度 文部科学省・科学研究費補助金 学術創成研究費:
弥生農耕の起源と東アジア-炭素年代測定による高精度編年体系の構築-

平成17年度研究報告会

日時 平成17年2月12日(日) 10:00~16:30
会場 国立歴史民俗博物館
参加者 148名
内容

司会(駒澤大学 設楽博己)
挨拶  西本豊弘
報告1 AMS-14C年代測定の現状とその概要(今村峯雄)
報告2 国立歴史民俗博物館における炭素14年代測定実績(2005年)(坂本 稔)
報告3 日本産樹木年輪の高精度年代測定(尾嵜大真)
<コメント> 鳥海神代杉の炭素14年代とIntCal 04(山形大学理学部 櫻井敬久) 
報告4 九州の縄文晩期から弥生前期の実年代(藤尾慎一郎)
報告5 中四国・近畿の弥生前・中期の実年代(春成秀爾)
報告6 東日本の縄文晩期の実年代(小林謙一)
質疑・応答
(これらの報告については、表題をクリックすると詳細な報告を見ることができます。)

研究会の概要

本平成17年度の学術創成研究の研究報告会が、国立歴史民俗博物館において2月12日に開催された。今回の報告会の参加者は148名であり、最新の成果の報告を中心した報告がなされた。司会は駒澤大学の設楽博己氏が担当した。
開会の後、本研究代表者である西本豊弘氏による挨拶の後、6つの報告が行われた。
まずはじめの報告は、今村峯雄氏による「AMS-14C年代測定の現状とその概要」についてである。今村氏は、本研究の目標、取り組み内容の概要について説明し、収集・前処理・資料作成・データ解析といった具体的な研究方法についての説明と、これまでの歴博による測定結果やJCALプロジェクト、土器付着炭化物研究といった本研究の経過と成果を述べた。そして、今村氏は特に炭素14年代測定結果の読み方と、2400年問題への取り組み状況を述べ、最後にAMS年代測定と日本および世界における状況を整理した。
2番目の報告は、坂本稔氏による「国立歴史民俗博物館における炭素14年代測定実績(2005年)」である。坂本氏は、2005年度の測定実績について、試料数と分析行程の流れについて詳細に説明した。そして、坂本氏はこれまでの試料の分析を踏まえつつ、土器に付着した炭化物の起源物質の推定法としての炭素・窒素の濃度比、そして安定同位体比の分析について説明し、今後の取り組み方法について展望を述べた。
3番目の報告は、尾嵜大真氏による「日本産樹木年輪の高精度年代測定」である。本研究の中心的課題である弥生文化の成立時期は、年代測定の難しい「2400年問題」の時期に相当し、世界標準のIntCal 04に加えて、過去の日本の気候・環境のなかで生育した日本産樹木の年輪年代と炭素14年代とのウイグル・マッチングを進める必要がある。尾嵜氏は、この課題のために創成されたJCALプロジェクトの進行状況を説明した。現在、歴博では年輪年代法によって年代の決定された試料として、長野県飯田市畑ノ沢地区発見の埋没樹幹と広島市黄幡1号遺跡出土加工木材を対象に分析を進めている。分析途上であるが、IntCal 04の較正曲線と整合性をもち、かつ分析数であきらかに本研究の方が上回っていることを報告した。なお、この報告に対しては、山形大学理学部の櫻井敬久氏から「鳥海神代杉の炭素14年代とIntCal 04 」と題してコメントがなされた。歴博によるJCALプロジェクトと同様に、櫻井氏によるコメントは年代測定研究が新たな段階に入ったことを印象付ける重要なものであった。
4番目の報告は、藤尾慎一郎氏による「九州の縄文晩期から弥生前期の実年代」である。藤尾氏は、型式編年だけでは年代の推定が難しい縄文晩期の粗製深鉢と籠目や布目といった組織痕文土器がどこまで存在するかという縄文煮炊き具の下限問題と、これまで考古学的に意見の分かれていた北部九州の突帯文土器である山ノ寺式と夜臼Ⅰ式の時間的関係について報告した。前者については、福岡平野では前9世紀中ごろの夜臼Ⅱa式段階にまで、島原半島では前8世紀中ごろの原山式段階まで残存することが明らかになり、後者については夜臼Ⅰ式は山ノ寺式に後出する可能性を指摘した。ただし、後者については、まだ測定試料数が少なく今後の検討課題とされた。
5番目の報告は、春成秀爾氏による「中四国・近畿の弥生前・中期の実年代」である。春成氏は、まず近畿の弥生開始年代は、前7世紀まで遡り、前6世紀ころまで縄文系の長原式と共存関係にあった可能性を指摘した。そして、弥生中期に関する測定結果の報告を行い、以上の結果を踏まえつつ、中期の年代問題として研究者による戦国時代の年代の捉え方、鉄器の問題、辛荘頭30号墓の細形銅戈の年代について報告した。
最後の6番目の報告は、小林謙一氏による「東日本の縄文晩期の実年代」である。小林氏の報告は、今年度測定した東日本における縄文晩期の土器の年代測定結果であり、分析対象とした試料について時期ごとに説明した。晩期前葉などの時期について較正年代上の交差年代の検討もなされ、弥生開始期に併行する東日本の年代も測定試料の増加により徐々に絞りこまれつつある。
以上の報告を受けて質疑・応答がなされたが、特に、今回の報告については、JCALプロジェクトについての期待の大きさであろうか、尾嵜氏による日本産樹木の年輪年代とその炭素14年代測定に関する質問が多くなされ、また土器付着炭化物の安定同位体比といった本研究で創成された新たな取り組みについてのコメントなどが多くなされ、本会は盛会のなか終了した。  

(文責 小林青樹)

春成秀爾氏による発表

研究報告会の様子